>>>ひとつ前のページへトップページへ

豊かな文化芸術が花咲く新しい転機に 大阪府文化振興条例の提案にあたって

2005年03月20日
日本共産党大阪府委員会文化部長 伊丹泰弘
大阪民主新報 2005年3月20日付

 大阪府は、 開会中の大阪府議会に 「大阪府文化振興条例」 案 (以下 「文化条例」) を上程し、 制定しようとしています。 この 「文化条例」 は、 昨年8月11日に石森秀三・国立民族学博物館文化資源研究センター長・教授を会長に9氏からなる大阪府文化条例検討会議を設置し、 4回の会議を経て、 条例の基本的な考え方と盛り込むべき内容を大阪府に報告、 府当局が条例として提案する運びになりました。

ねばりづよい運動の歴史が

  「文化条例」 をめぐっては1983年以来、 大阪の主要な文化団体を結集する大阪文化団体連合会 (大文連) などが 「文化基本条例制定推進委員会」 を設けてねばりづよく運動をすすめてきた歴史があります。
 その背景には、 79年からの日本共産党を除く 「オール与党」 体制のもとで、 草の根文化を大切にしてきた黒田革新府政によって確立された文化行政がどんどん後退し、 大阪での文化施設の整備や文化環境の遅れが顕著になってきたことにたいする危機感と、 豊かな文化行政への発展の願いがあります。
 さらに、 多くの文化芸術関係者によってすすめられた全国的な運動によって、 01年12月に制定された国の 「文化芸術振興基本法」 も影響を与えています。
 今回の 「文化条例」 では、 「文化の振興を推進し、 もって心豊かで潤いのある府民生活を実現し、 個性豊かで活力のある地域社会の発展に寄与する」 と定めて文化芸術の果たすべき役割を明らかにし、 基本理念に 「文化を創造し、 これを享受することが生まれながらの権利である」 と府民の権利を明記しています。
 このような位置づけは、 大文連や文化団体が要望してきたものの反映であり、 文化芸術関係者の運動や願いを実現させる一歩として積極的な意義があります。
 それが実態のともなう生きたものとして機能するためにも、 文化行政後退の25年ともいうべき経過と現状をしっかり総括し、 府民的な討論を喚起することが大事だと考えます。

予算はこの10年で大幅に減らされ

 大阪府の文化予算は、 この10年間で大幅に減額されました。 95年度文化課所管の当初予算が25億8255万4千円であったものが、 04年度には19億3780万2千円と25%も減らされています。 また、 芸術文化団体への助成金も現行制度となった96年度に総額3500万円であったものが05年度には2200万円と96年度の62・8%にも激減しているのです。
 大阪府全体の予算に占める文化予算の比率は95年が0・102%から04年には0・061%となっており、 大阪府が2000年に設置した文化懇話会では少なくとも文化予算が大阪府予算の1%に到達するよう提言していますが、 近づくどころか後退しているのが現状です。
 この事態は、 「オール与党」 府政によって大型開発優先、 大企業奉仕の府政がつづき、 「財政危機」 をテコにして、 府民生活に直結する福祉、 医療、 教育の施策と予算を後退させてきたこととともに、 芸術文化の特性を考慮せず、 文化予算を机上で一律に減額をつづけてきたことにあります。
 戦後の大阪は文化不毛の地などといわれるなか、 1971年に誕生した黒田革新府政は 「大阪に文化のルネサンス」 をスローガンに、 これまでの政策を大きく転換する転機となりました。 知事部局に文化振興室を設け、 府政の中での位置づけを抜本的に高めました。 文化予算も充実し、 文化団体への助成金制度も創設しました。 その特徴は草の根からの文化の発展と援助であり、 この方向は全国をリードしました。
 これらは、 大都市・大阪としては決して満足できるものではありませんが、 革新府政の8年は不況と地方財政危機の中での前進でした。 行政と専門家、 草の根文化の担い手が努力すれば文化の復興は可能だということを示しているのではないでしょうか。

行政の姿勢と関係者の共同

 ここから言えることは、 文化芸術の振興策にとって行政の姿勢と文化関係者の協同がいかに大切か、 専門家や愛好家、 そして文化芸術を享受する府民の意見を尊重し、 くみあげ、 その要望をどう文化行政に生かしていくかであり、 今回の条例の制定にあたっては、 十分文化芸術関係者の意見を反映したものになるかどうかが問われています。
 条例検討会議は4回開かれ、 公開の会議をおこなうなどの努力がなされましたが、 議会での討論も文化関係者や府民の意見をしっかり反映する立場で審議されることが重要です。

府民の意見よく聞き自由を尊重して

 その立場からいくつかの問題を指摘しておきたいと思います。
 1つは 「行政の不介入」 の問題です。 今回の 「文化条例」 では、 検討会議の委員などの意見の反映もあり、 府民の自主性、 創造性の尊重が盛り込まれていますが、 行政の不介入が明記されていません。
 これまでも自治体の後援を申請する際に、 企画書、 脚本などすべてを提供し、 ある場合には脚本自体の変更を求めて後援を許可するという事態もありました。 行政の判断によって、 創造団体への圧力や表現の自由が脅かされるようなことがあってはなりません。
 そのため、 創造団体や芸術家の自主性、 自律性を最大限尊重し、 文化芸術の内容に対して行政が介入しないという原則を明確にすることがなによりも必要です。
 2つめは具体化の問題です。 「文化条例」 は、 「文化振興施策の総合的かつ効果的な推進を図るため、 大阪府文化振興計画を策定する」 とし、 その立案と推進状況をチェックするために、 大阪府文化振興会議を設け、 府民の意見をとりいれるために 「文化サポーター (仮称)」 を公募することができると提起しています。 これらの文化振興会議や 「文化サポーター」 の役割は、 文化施策の立案の段階から議論が民主的になされ、 その結果文化振興計画に生かされたかどうか、 チェックができる体制になるのかどうかが重要です。

明確な財政的保障きちんと

 これまでの審議会のように、 事実上行政の主導で上から 「振興計画」 が策定されたり、 社会や文化状況に柔軟に対応することができないというのでは役に立ちません。
 今回の文化復興会議はメンバーに有識者や専門家だけでなく、 公募による府民の参加を保障すること、 府民に会議を公開すること、 文化振興計画の策定、 文化事業の評価のあり方、 文化活動の助成の決定などの内容が審議され、 その内容が行政に正確に反映することなどの機能が果たせるようにすることが大切です。
 3つめは文化予算です。 「文化条例」 は財政上の措置として、 「文化振興策を実施するために必要な財政上の措置に努めます」 と掲げています。 文化関係者の中には、 「 『措置に努める』 という努力目標ではなく、 明確に財政的保障をきちんと定めるべきだ」 との意見も広くあります。 現実の府政の中で文化予算が大幅に減額されてきた経過から見ても、 この指摘は重要です。
 財政上の努力目標ではなく、 真の意味で、 文化関係者との合意と協同による文化振興策を推進するために必要な文化予算の裏付けをはかることを明確にして、 大阪の文化芸術の前進方向を見いだすことが求められています。

投稿者 jcposaka : 2005年03月20日

トップページへ ひとつ前のページへ ページ最上部へ
ご意見・ご要望はこちらから