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「職員厚遇問題」に端を発した大阪市の「市政改革」―その問題点と市民の立場での真の改革との対決点はどこにあるのか

2005年07月10日
日本共産党大阪市会議員団政調会長 瀬戸 一正
大阪民主新報 2005年7月10日、17日付

 日本共産党は 「職員厚遇」 問題に端を発した大阪市政の抜本改革に向けた市民運動を呼びかけるアピール文を発表しました (6月26日付本紙に全文掲載)。
  「呼びかけ」 は 「職員厚遇」 の原因とその背景、 責任、 労働組合運動のあり方についても言及。 「職員厚遇」 にとどめず 「すべての税金の無駄遣い」 を点検し、 メスを入れることが求められるが、 大阪市が進めようとしている 「改革」 は、 「職員厚遇」 を逆手にとって、 市民サービスを大幅に削減する一方、 最大の無駄遣いである第三セクター事業など大型開発のための事業は温存したものであり、 市民の期待に背くものと指摘、 日本共産党として5つの改革の方向を示し、 市民サービス切り捨て撤回、 真の改革を求める市民運動を呼びかけています。
 私はこのことを前提に、 市議会での論議と、 この間の敬老パス有料化阻止の運動を踏まえ、 大阪市・オール与党とわが党の対決点を整理しておきたいと思います。

「職員厚遇」是正をめぐる日本共産党の立場と市長・オール与党の立場

 第1は、 「職員厚遇」 是正をめぐるわが党と市長・オール与党の立場の違いです。
 市職員には3年に1度背広がつくられる、 勤続年数毎に豪華な旅行券が配られる、 職員互助組合には職員掛金の2倍、 3倍の公費が支出される、 最高500万円のヤミ年金が支払われる、 説明のつかない諸手当がふんだんにある…。

 これらのほとんどは市民の怒りと世論の前に是正されつつあります。 しかし、 こうした 「職員厚遇」 制度をつくりだした 「責任の所在」 はどこにあるのかについては、 関市長はいまだに真実を明らかにはしていません。

 過剰な福利厚生制度や諸手当は1980年代の市当局と市労連 (連合系の当局派労組) の労使交渉で、 一時金のプラスアルファ分をヤミ超過勤務手当や福利厚生費に 「転換」 するなどして作られました。 議会が廃止した特別退職金制度をヤミ年金制度にして復活させたのも労使交渉です。

 地方公務員法に違反して議会にもはからずにこれらを支給してきたのは市当局自身です。 これらは 「呼びかけ」 も指摘しているように、 自民・公明・民主のオール与党と一緒になって市長選挙の中心を担ってきた市労連にたいする論功行賞です。 今日声高に 「職員厚遇」 を追及している自民党・公明党も長年、 市長選挙では市労連と一緒になって市長候補をかついで来てました。 こうした構造が 「厚遇」 を長年にわたり温存してきたのです。

 市当局は日本共産党市議団の追及にたいして、 「今からそれを検証するすべがない」 という答弁で、 こうした真実が明らかになることを必死に拒んでいます。

 3月議会で日本共産党市議団は、 「職員厚遇問題の 『責任の所在』 の明確化を求める決議」 を提案しましたが、 オール与党はこれを否決しました。

 さらに、 日本共産党市議団は5月議会で、 「ヤミ退職金・年金制度、 1998年の高裁和解条項の不履行問題ならびに非休職専従の組合役員・人権文化センター職員等の勤怠状況等に関する調査特別委員会」 (地方自治法にもとづく百条委員会) を設置し、 議会が強い権限をもった調査をしてこそ、 市民の負託に応えられると提案しましたが、 オール与党はこれも否決しました。

 4月1日、 大平助役を委員長とする市の福利厚生制度等改革委員会はヤミ年金等の調査委員会を設置することを求め、 「見張り番」 の弁護士を調査委員会委員長にしました。 しかし、 「市には協力姿勢が見られない」 とされています。 ここにも、 市当局の真相解明の姿勢が現れています。
 以上、 問題が発覚して以降の経過の中でも、 市民の立場で 「職員厚遇」 の 「闇」 の徹底解明を進めようとしている日本共産党と、 これを妨害し続けている自民・民主・公明のオール与党と市当局の姿勢が浮き彫りになっています。 (つづく)

大阪市の改革本部方針の背景とねらいは何か― 「厚遇問題」 を逆手に取っての、 市民サービス切捨てと、 大企業優遇予算の確保

 大阪市は昨年6月、 発足したばかりの市長の諮問機関・大阪市都市経営諮問会議 (座長・本間正明大阪大学院教授) に、 「市の財政は5年後には年間1200億円もの収支不足におちいる」 「このままでは財政再建団体に転落する」 と報告して市政改革の 「処方せんづくり」 を求めました。 これを受けて諮問会議では 「膨れ上がった人件費や生活保護費などの扶助費が大問題だ」 という議論が始まりました。

 諮問会議の議論は、 財政収支不足の一番大きな要因である 「バブル経済が崩壊した後の90年代の大型開発とその失敗」 にはまったく目をつぶるものです。 ATCやWTC、 USJ、 フェスティバルゲートなどの 「都市集客施設」 づくりに狂奔し、 土地が売れる見込もないのに咲洲や夢洲などの湾岸開発を行うなどまるで開発会社のようになって、 90年代には80年代の倍の年間4兆円もの公共事業・大型開発を推進。 3800億円もあった積立金の大半を使い果たし、 借金は年間予算を1兆円以上越える5兆6千億円にまで膨らませ、 毎年の借金返済額 (公債費) は2千億円になりました。

 これらの最大の税金無駄遣いは不問にしたまま、 市民の批判が高まった 「職員厚遇」 を逆手に取り、 正当な人件費にまで手をつけ、 さらに敬老優待パスや市民福祉などを総改悪して、 財政危機を市民犠牲で乗り切り、 大企業優遇と開発行政は継続したい…ここに 「市政改革」 の真の狙いがあります。

 大阪市は4月に、 関市長、 大平助役、 民間有識者、 関係局長らでつくる 「市政改革本部」 を発足させ、 その 「活動方針」 を発表しました。 活動方針は当面6ヵ月間を助走期間として 「情報公開改善」 「職場改善」 「改革課題の洗い出し」 を行い、 9月末までに向こう2年間の 「抜本的な市政改革のための基本戦略」 を策定するとしています。 「市政改革本部活動方針」 が、 昨年12月に都市経営諮問会議がまとめた 「提言」 の理念を継承するものであることは 「呼びかけ」 も述べているとおりです。 福祉を 「市民の自律を低下させる」 と敵視し、 「公平平等」 の発想から 「重点的な産業政策」 への転換を図るというのがその理念の中心点です。

 市政改革本部は、 こうした理念のもとに今 「基本戦略」 の策定に向け、 民間有識者を参加させて 「人事給与制度」 「行政評価」 「事業分析 (環境事業局、 市バス、 区役所の各事業)」 など9つのプロジェクトチームを発足させて精力的に作業を進めていています。 まだ基本戦略の全体像は明かになっていませんが、 例示的にあげているのが、 「@個々の事業について今後、 直営、 民営化 (業務委託)、 エージェンシー化をするのかしないのか、 A補助金の廃止や受益者負担をどこの分野でどのレベルまで導入するのか」 という2つの分野です。

 @の分野は、 報道されたものだけでも、 ゴミ収集事業と市バス事業、 水道事業を民間委託や株式会社化する、 市民病院や図書館、 動物園、 環境科学研究所などを独立法人化 (独立採算制度) にするなどの市の業務全般にわたるものになっており、 大平助役が 「現業部門の2分の1を民活にし、 残った職員を民間並みに給与をさげるとかが必要なこと」 と言ったとの報道まであります。

 5月に入って、 関市長は 「来年度の現業職員採用を凍結する」 などの改革4項目を発表しましたが、 オール与党がこれを 「現業部門を大改革する 『官から民』 への構造的改革の第一歩にするべきだ」 と言っています。 こうした議論が 「ゴミ収集事業職員は一日数時間しか働いていない」、 「市の業務はすべからく非効率で人件費が高い」 とのキャンペーンの下に行われているというのが今の特徴です。

 Aの分野では、 大阪市財政局が敬老優待パス有料化などの 「市民サービスの再構築」 「市民サービス切捨て」 計画づくりを着々と進めています。 これらの大半は市民の怒りの前に、 「一年間、 実施を見送って検討する」 ところに追い込まれましたが、 改訂版を 「夏ごろには作成する」 として、 06年度から予算化をねらっています。 敬老パス有料化も決してあきらめたわけではありません。

 もう1つの市政改革の方向は、 05年度予算に盛り込まれた 「市内に新規立地する大企業に出す30億円の助成金 (大阪府の助成金と合わせると60億円)」 と 「大阪駅北ヤード開発予算、 北港テクノポート線建設推進予算」 などです。 一社に60億円もの助成金を出すというのは 「公平・平等の行政の常識的発想を転換した重点的な産業政策」 と言うべきものです。

 市政改革の理念とされる 「諮問会議提言」 をまとめた本間教授は、 小泉首相の経済財政諮問会議の有力なブレーンです。 今回の 「市政改革活動方針」 をまとめたと言われる上山信一慶応義塾大学教授は、「官から民へ」 の地方政治の先頭を走っている横浜市 (中田市長) のブレーンと言われた人物であり、 その著書では小泉構造改革を持ち上げています。 9月にも作成される 「基本戦略」 は、 今大阪市が国から策定が求められている 「新行政改革計画」 の中核になると言われています。 「市政改革活動方針」 が、 国民に痛みを押付ける小泉構造改革と同じ方向にあることは明りょうです。

  「呼びかけ」 が指摘しているように、 大阪市の 「改革」 は国の 「痛み」 の政治の防波堤になるどころか、 それに追い打ちをかけるものです。

市民サービス切捨てを許さない市民運動こそ、 無駄づかいをなくし、 真の市政改革をすすめる力

 大阪市政のあるべき方向については、 日本共産党の 「呼びかけ」 では5つの改革方向 (別項) を提起しています。

 これは、 あくまで改革の 「方向」 であり、 政策提言ではありません。 広範な市民の皆さんとの対話と討論を経て政策的に発展・具体化していかねばなりません。

 そのことを前提に、 ここではいくつかの論点にしぼって論究してみます。

 1つは、 福祉切り捨てとこれに反対する市民運動の問題です。 大阪市は今、 市民の批判を浴びた 「職員厚遇」 は一定程度是正する一方で、 財政難だから市民にも痛みを我慢してもらいたいと言わんばかりに、 今まで以上の市民の福祉・サービスの削減に手をつけようとしています。 「財政難だから市民の福祉を削る」 なんてことは改革でも何でもありません。 財政難だからこそ、 自治体本来の役割を発揮して市民の福祉や暮らし・中小企業支援の予算をいかに確保するか、 そのためにあらゆる市政の税金無駄遣いを徹底して改めなければなりません。 「職員厚遇」 を是正することや 「効率的な行政」 をめざすことは当然ですが、 大企業優遇・大型開発・同和優遇の税金の使い道を改めてこそ、 市民の福祉・暮しのための大きな財源が生まれて来ます。

 昨年10月から取組まれた 「敬老パス有料化反対市民連絡会」 の署名運動は10万人を超える署名を集め、 老人会や市民の大きな共感を集め、 「一年延期」 へと市政を動かしました。 町には 「職員厚遇を削った予算を福祉や暮らしに回せ」 という声があります。 切実な住民要求をかかげて住民運動を展開してこそ、 真の市政改革の道が市民の目に明らかになります。

 もう1つは、 市民サービス向上のための効率的な行政を実現する問題です。 テレビで報道されたゴミ収集事業など一部に職員数と人件費の無駄があるのは事実です。 だからこれを民間委託してしまえと言うのが今はやりの 「官から民へ」 という流れです。 ここには考えて見なければならない問題が多くあります。 住民サービスの切り捨てにつながらないか、 そこで働く者の労働条件はどうなるのかなどの問題です。

 無駄をなくして効率的な行政をめざして改革することは当然です。 この点では、 職員や労働組合が 「全体の奉仕者の立場に立って」 「自らも改革を提案する」 ことや、 また、 職員の労働条件を市民や議会にたいして 「ガラス張り」 にし、 市民の理解と合意が得られるようにすること、 さらには市民の側からも行政サービス改善の要求・提案をしていくことも重要ではないでしょうか。

 その点で、 「呼びかけ」 が強調している 「同和」 の加配や旧解放会館の過剰な人員配置などにも抜本的なメスを入れることも重要です。

 今日、 国政でも市政でも、 市民にあらゆる犠牲を押付けているのは自民・公明・民主 「オール与党」 の悪政です。 市民サービスや福祉切捨てを許さない市民の大運動こそ、 悪政推進を打ち破り、 税金の無駄遣いをストップさせる何よりの力です。(おわり)

5つの改革方向

@公共事業・同和行政など一つひとつを点検し税金の無駄遣いを徹底してただす。 その上で、 予算を市民福祉の向上、 中小零細企業支援第一に切り替える
A市民が主人公の立場で情報公開と市民参加制度を確立・強化する。 そのために、 専門家はじめ、 各界各層、 地域から知恵を集める
B職員が市民への奉仕者という自覚と誇りを持って仕事に取り組み、 市民サービス向上へ地方自治法で規定している 「最少の経費で最大の効果をあげる」 効率的な行政を確立する。 その方向で行政改革、 区役所の権限強化と区民により身近なものにするなど組織改革を進める
C職員の労働条件や福利厚生は、 市民の税金でまかなわれるものであり、 市民の納得、 法と条例を基準に、 すべての労組と当局が対等平等に協議し、 議会に諮るという原則を貫く
D議会は無料パスなど議員の特権的な処遇を率先して廃止するとともに海外視察のあり方を抜本的に見直し、 市民の代表として行政へのチェック機能をフルに発揮する。 そのためにも市民の議会傍聴への機会と場所、 広報を拡充する。

投稿者 jcposaka : 2005年07月10日

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