学校公演問題で日本共産党大阪府委員会がシンポジウム 《6面》
子どもたちが生の文化・芸術に接する貴重な場となっている学校公演。ところが学校五日制など教育制度の変化、少ない文化予算の中で公演数が減るなど深刻な事態が続いています。そんな学校公演の現状を交流し、充実のための方向を探ろうと、日本共産党大阪府委員会がシンポジウム「学校公演(文化鑑賞)の現在と未来を考える」を16日夜、大阪市天王寺区のたかつガーデン開きました。
シンポジウムは劇団関係者や音楽家、市民ら75人が参加。最初にコーディーネーターで人形劇演出家の松本則子さんが、学校公演の歩みを紹介。子ども文化センターの調査で「学校以外で演劇を見る」という子どもが3%しかないことを示して、「学校公演がなくなれば、97%の子どもたちは子ども時代に生の舞台芸術を見ない状況置かれてしまう」と述べました。
映画やテレビにない魅力
討論で、元大阪市立小学校教師の松本喜久夫さんは、映画やテレビにはない生の舞台の意義として@想像力・集中力を育て、人間の生き方を深く考えさせるA舞台と観客が交流し働き掛け合うB子どもたちが感動を共有する、の3つを挙げ、「学校での観劇を教育課程に位置付けるべき。いじめや不登校など不安な状況にある子どもたちの気持ちにぴったりくる芝居を、ぜひつくってほしい」と語りました。
劇団コーロの澳利子さん(制作担当)は、統計資料で学校公演の実施状況を紹介し、「公的助成のある自治体は実施率は高いが、劇をやる学校は減っている」と発言。今後の学校公演について、改悪教育基本法による「愛国心」の強制、長年鑑賞行事を支えてきた教職員の定年退職、校長権限の強化などが心配だとし、「鑑賞行事への公的助成をなんとか増やし、先生たちとの連携が必要だと思う」と述べました。
少ない予算と多忙化の中で
元大阪府立高校教師の佐伯洋さんは、子どもたちの内面形成の上で音楽や演劇など多様な文化を豊かに届けることは国民的課題だと強調。
教職員組合のアンケートで、少ない予算や多忙化の中で「なんとかして子どもたちに本当の文化に触れさせたい」と苦しんでいる現場の声があることを示し、「子どもを育てる共同、予算と運動が一つになって、新しい文化創造の入り口が開ける」と問題提起しました。
元大阪府立図書館職員で同志社大学講師の脇谷邦子さんは、「オール与党」府政の下で文化がイベント主義に傾き、府の「子ども総合プラン」で子どもたちの芸術鑑賞についてほとんど触れていないことを指摘。「大人も仕事が終わればヘトヘトで、演劇を見る余裕もない。これでは子どもたちも芸術を楽しめる環境にはならない。やはり社会を変えないといけないと思う」と語りました。
気持ちに合う芝居にしたい
続いて参加者を交えて活発に討論。「子どもたちの気持ちにぴったりくる芝居をとのお話もあったが、学校側が子どもたちに何を見せたいのか、一過性の娯楽なのか、危機感も持っている」(劇団コーロ)という疑問に、パネリストの松本さんは「小学生には困難を乗り越えて何かを見つける『宝探し』、中学生には『自分探し』の世界を舞台の上で見ることが、共感につながるのではないか」と語りました。
「学校に出かけても、先生たちと話をする時間が限られている」(人形劇団クラルテ)、「文化行事が少なくなり、学校では時間が取れないと言われる」(大阪映画センター)などの悩みに対して、パネリストの佐伯さんは「特定の教職員の個性ではなく、学校現場の多忙化という構造的な問題がある」と述べました。
「小学校、幼稚園、保育所の鑑賞会が多く、独自のマネジメントを強化している。指定管理者制度などで公的なホールがなくなっていく。使用料の減免がなくなれば、鑑賞料に響く恐れがある」(大阪市音楽団)などの訴えもありました。
意義語り合う場を広げよう
討論を受けて日本共産党府副委員長の山下よしきさん(元参院議員)は、「皆さんが苦労しながら学校で劇を上演し、音楽を演奏されていることが、その世代の子どもたちにとって貴重な機会になっています」と力説し、シンポジウムで出た意見や提言を踏まえ、政策を練り上げ、運動を進めたいと発言。
山下さんは、子育てと教育の中で学校公演や芸術の意義を語り合う場を広げ、料金負担の軽減などで国や自治体に責任を果たさせる運動が大切だ述べました。
投稿者 jcposaka : 2007年01月29日