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利用者・市民無視? 市営地下鉄民営化?!

2007年03月04日

関西財界が「完全民営化」要求
「民営化考える」シンポで議論 市民にとっての公共交通とは

 1日230万人が利用する地下鉄はじめ大阪市営交通事業の民営化が大きな問題になっています。 関西経済同友会が昨年5月に完全民営化を大阪市に要求。 「06年度中に方向性を示す」 としていた関淳一市長は、 07年度に経営形態をさらに検討すると結論を先送りしていますが、 市民の貴重な財産である公共交通をどうするのかが問われています。

 2月24日午後、 シンポジウム 「市バス地下鉄の民営化を考える」 が開かれました。 第16回大阪地方自治研究集会実行委員会と都市交通研究所が主催したもので、 市民ら約70人が参加。 大阪市営交通の歴史とともに、 公共交通を守る他府県の活動も含めて活発に討論、 交流しました。
 開会にあたり総合司会の久保貴裕氏 (大阪自治労連) は、 大阪市営交通の民営化の動きに対して、 「これだけ大事な問題なのに、 利用者や市民を無視し、 市当局と財界だけで進められようとしている。 直営か民営かの議論だけでなく、 あらためて市民にとっての公共交通、 まちづくりのあり方を議論する出発点にしたい」 と語りました。
 大阪市立大学大学院の西村弘教授 (交通論) が 「大阪の交通 過去・現在・未来」 と題して講演。 大阪市では戦前、 「都市百年の大計を具現」 を掲げた関一市長 (在任・1923年〜1935年) が運河、 公園、 下水道、 墓地など生活基盤を含む都市政策を進め、 御堂筋や地下鉄の整備を進めたことを紹介しました。

経済・生活・文化踏まえた政策 

 西村氏は、 戦後は巨大プロジェクト誘致への依存が強まる中、 「都市生活が都市経済と生活の将来像を描けず、 供給 (建設・整備) 偏重で、 交通需要側への政策がなく、 都市交通政策が迷走してきた」 と批判。 「都市の経済、 市民生活、 文化を踏まえた都市政策が必要で、 その下で交通政策が考えられなければならない」 と問題提起しました。
 パネル討論では岡山電気軌道と和歌山電鉄両株式会社の磯野省吾代表取締役専務、 醍醐コミュニティバス市民の会の吉村睦子副会長、 大阪市役所労働組合の成瀬明彦委員長が発言しました。

経営面でも市民参加の運営必要

 和歌山電鉄は、 南海電鉄が経営から撤退した貴志川線を06年4月に継承。 磯野氏は、 全国各地で鉄軌道の経営が深刻になっている中、 貴志川線が存続できたのは 「住民と職員の熱意と行政の支援があったから」 と強調。 経営面でも市民参加の運営委員会をつくり、 川柳列車などイベントの工夫で、 南海時代に5億5千万円あった赤字を、 8200万円まで縮小していることを報告しました。
 醍醐コニュニティバスは、 京都市営地下鉄の開通で市営バス路線が大幅に切り捨てられる中、 04年2月から市民共同方式で運行しています。 吉村氏は、 地域住民や専門家でつくる市民の会が運営主体となり、 運行は民間バス業者の協力、 地元の商業施設や病院、 寺院 (パートナーズ) の財政支援で運営していることを紹介。 「『高齢者の足を守れ』 と始めたが、 自分たちで運行していることに誇りを持ち、 住民が公共交通を見直した」 と語りました。

創意と工夫で発展させる政策を

 成瀬氏は大阪市営交通の民営化について、 「もうかる事業を財界に売り渡すという印象がある」 と指摘。 地下鉄が公営企業として存続してきたのは大都市に不可欠な都市基盤だからで、 今建設すれば3兆8250億円もかかるとの試算 (再調達価格) も示し、 「市が声高に叫ぶ債務 (約8千億円) はその5分の1しかなく、 財務的には 『優良企業』 といえる。 今の大阪市には交通事業はあるが、 交通政策がない。 創意と工夫で公共交通として発展させる政策展開を」 と力説しました。

「市民の財産奪うな」「自治体の役割守れ」

 大阪市営地下鉄は関一市長時代の1933年に公営交通初の地下鉄である、 御堂筋線梅田―心斎橋間が開通したのが出発。 昨年12月に開通した今里筋線を含め8路線、 総営業キロ数は127・5`b、 ニュートラムを含めると134・1`bあり、 東京に次いで全国2番目の長さです。
 1日の乗客数は232万5千人 (04年度)、 05年度は196億円の利益を出しています。
 ところが関市長は、 05年秋の市長選で市営交通の 「公設民営化」 を公約。 これを受けて関西経済同友会の都市経営改革委員会は06年5月に提言を出し、 「公設民営」 ではなく、 「完全民営化」 を07年度当初から実施するよう迫っています。
 また市改革会議の上山信一委員長 (慶応大学教授) は、 「地下鉄は日銭が4億円も入る独占的事業。 合理化と人件費の正常化、 資産の有効活用だけが課題という眠れる超優良企業」 などと述べ、 完全民営化の急先鋒となっています。
 経営形態の検討を進めてきた大阪市交通局は、 06年12月に株式会社化のシミュレーションを発表。 ことし1月22日に出した 「最終取りまとめ」 では、 完全民営化を含む株式会社方式か、 現行の地方公営企業の改革方式を打ち出しています。
 2月21日の大阪市議会代表質問 (2月21日) で、 日本共産党大阪市会議員団の下田敏人団長は、 「経営形態の見直しには、 関西経済同友会の露骨な市政介入が背景にあり、 超優良企業の地下鉄事業を新たなもうけの対象と見なすもの。 市民の貴重な財産、 果実を奪い取ろうとするもので、 断じて認められない」 と批判しました。
 下田団長は、 株式会社化のシミュレーションによると、 新たに1430人もの職員削減が必要になり、 地下鉄の設備投資は10%カット、 バスの設備更新は車両以外はゼロになることなどを示し、 「株式会社化には道理がない。 断念し、 地方公営企業として市民の足の利便を図り、 安全輸送に徹して事業継続・発展を図れ」 と求めました。

投稿者 jcposaka : 2007年03月04日

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