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住まいや営業をおびやかす借地借家法改悪の危険な動き

2007年03月25日

改悪の準備は完了?弁護士  森 信雄      

 2003年12月に公表された 「総合規制改革会議 第三次答申」 は、 借家に関し、 1,定期借家制度 (予め契約で決めた期間が経過すれば、 必ず明け渡しをしなければならない制度) の見直し、 2,正当事由制度 (家主が借家人に明け渡しを求めるためには正当な理由が必要とする制度) の見直しを提言し、 05年4月には 「定期借家権推進協議会」 が、 06年6月には日本経団連が、 同様の見直しを提言してきた。
 見直し論議の背景には、 借家人の権利を保護する借地借家法が、 都市再開発事業や不動産市場の活性化の障害になっているとの財界の考えがあった。
 幸にして、 これまでは法案提出に至らなかったが、 最近になって、 また法案提出に向けた動きが強まってきた。
 すなわち、 06年12月、 「規制改革・民間開放推進会議」 は 「規制改革・民間開放の推進に関する第三次答申」 を発表したが、 「06年度以降逐次実施」 の項目として、 1,定期借家制度の見直し、 2,正当事由制度の見直しが列挙されている。
 そして、 自民党内では、 この問題につき一定の検討を終え、 議員立法で法案を国会に提出すると言われている。 仮に、 法案が提出されれば、 その後の審議スピードは速い。
 そこで、 これまでに公表されてきた各種提言をもとに、 どのような改悪がなされようとしているのかを予測してみた。

家賃数カ月相当の立退料で明け渡し?             

 普通の借家では、 家主が借家人に明け渡しを求めるには、 家主が自らその建物を使用しなければならない事情その他正当な理由が必要とされており、 これは、 借家人の権利を守る重要な制度である。 そして、 現在は、 家主からの立退料の提供は、 正当事由があるかどうかを判断する一つの事情にすぎず、 立退料の提供だけで明け渡しを求められることはない。
 しかし、 各種提言は、 居住用の借家につき、 家賃の数ヵ月分ないし1年分の立退料を提供すれば明け渡しを認めようとしている。 これでは、 比較的家賃が低額な昔ながらの借家では、 引っ越しにかかる費用も賄えなくなるおそれがある。
 また、 営業用借家についても立退料に上限を設けようとしており、 これでは安心して営業を続けることはできない。

普通借家の住居が消えていく? 

 現在は、 居住用の普通借家を定期借家に切り替える合意をしても、 その合意は無効であるが、 各種提言は、 当事者が合意すれば切り替えを認めるべきとする。
 しかし、 人は常に合理的な判断に基づいて行動するわけではない。 また、 合意した時点では、 何年後かに必ず出ていこうと考えていても、 事情が変わり、 住み続けたいと考えるようになることもある。 ところが、 もし、 切り替えが認められるようになれば、 後の祭りで、 泣く泣く出て行かなければならなくなる。 そして、 いずれは、 普通借家の住居は消えていくかもしれないのである。

居住用の定期借家契約を中途解約すると、 残りの期間の家賃も支払わなければならなくなる?   

 現在は、 居住用の定期借家契約につき、 借家人による中途解約が認められているが、 各種提言は、 借家人からの中途解約を認めない旨の特約を有効にすべきであるとする。
 そうすると、 どうなるか。 たとえば、 10年の定期借家契約をした借家人が、 どうしても都合により3年後に中途解約すれば、 残り7年分の家賃を支払わなければならない、 そんなとんでもない事態が起こりうるのである。

法案を提出させない取り組みを 

 このように、 仮に各種提言どおりに借地借家法改悪が行われれば、 住まいや営業は脅かされてしまう。 そのようなことを許さないために、 大阪においても、 借地借家法改悪反対大阪連絡会を中心に、 署名や宣伝活動を行っている。
 いずれにしても、 改悪 法案を提出させない取り組みが求められているのである。 (もり のぶお)

投稿者 jcposaka : 2007年03月25日

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