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5月22日大演説会での志位委員長の演説

2007年05月24日

5月22日 大阪府立なんば体育館での志位委員長の演説

 【参院選―日本共産党の議席のばして貧困・格差打開、改憲派に痛打を】
 大阪のみなさん、こんばんは。ご紹介いただきました日本共産党の志位和夫です(拍手)。今日はこの広い会場に、2階席までいっぱいのたくさんのみなさんがお運びいただいて、本当にありがとうございます。(拍手)
 ―比例区で5人全員、大阪選挙区で宮本たけしさんを必ず国会に
 私は、この演説会が、参院選に向けた遊説のスタートです。ちょうど、今日から2カ月後が投票日です。大阪では、ぜひ、2つの勝利を勝ちとらせていただきたい。比例代表では「日本共産党」と書いていただく方を全国では650万、大阪では80万以上に伸ばしていただき、山下よしきさんはじめ、5人の全員勝利を勝ちとらせていただきたい。選挙区では、定数3の大激戦ですが、宮本たけしさんが、再びみなさんの代表として参議院の場で大活躍ができるよう押し上げていただきたい。このことをお願いにあがりました。(拍手)
 
 先ほど、宮本たけしさんは「弱きを助け、巨悪に立ち向かう」とのべていました。私は、国会で6年間、宮本さんと一緒に仕事をして、まさにその通りの政治家だと思っています。
 現職時代に、サラ金大手の武富士が違法な情報収集事件を起こし、会長がその罪に問われました。この問題を徹底的に追及して、とうとう逮捕にまで追い込んだのが、宮本さんでした。この逮捕はサラ金業界に衝撃を与え、社会的批判が広がりました。この流れのなかで、年利で最大29%ものとほうもない高金利にメスを入れ、「グレーゾーン金利」を撤廃させることができました。(拍手)
 「解同(部落解放同盟)」系のハンナンの元会長らが、補助金を不正に受け取った牛肉偽装事件をあばいたのも、宮本さんでした。この事件がひとつのきっかけになり、私たちはいっせい地方選でも訴えましたが、国政でも地方政治でも「解同」の利権あさり、同和行政は完全終結へと向かいつつあるではありませんか。(拍手)
 宮本さんが国会で頑張った成果が次つぎと実をむすんでいる。そういう大事な仕事をやってきた政治家です。大阪のためにも、日本のためにも、絶対に必要な政治家です。山下さんと宮本さん、私たち国会では、“ツインタワー”といっていました。どうか大阪で“ツインタワー”を復活させていただきたい、よろしくお願いします(拍手)。

[参議院選挙の2つの焦点]
〈一、貧困と格差の広がり〉
 
 さて参議院選挙で、何が問われるでしょうか。
 一つは、貧困と格差の問題だと思います。私はいま、社会的に弱い立場にある国民を、行政が切り捨て、見捨てる「棄民政治」が行われていることを告発したいと思います。
 ―医療からの切り捨て
 一つは、医療からの切り捨てです。週刊誌「アエラ」(07年5月14日号)が「棄てられるガン患者」という特集を書きました。
 「都心に住むAさん宅を、退院翌日に訪れた訪問看護師は目をみはった。『あと数日の命の患者さんが、病院から投げ出されている!』Aさんは肺ガンの末期で、呼吸困難があった。指先や唇は青紫色に染まり、息も絶え絶え。末梢に酸素が行き渡らない『チアノーゼ』の症状だった。訪れた時、在宅用の器具を使い、痰の吸引や酸素吸入を行っていたのは、Aさん本人だった。……電動の介護ベッドを置くスペースもなく、Aさんは床置きの座布団に寝転んでいた。……退院5日後に息を引き取った。」
 「これは新たな『棄民』ではないか」と週刊誌は告発しています。医療費の削減ということで、政府は、療養ベッドを35万床から18万床まで減らす、むごい計画をすすめようとしています。これは文明国家ではあってはならないことだと私は言いたいと思います。
 ―介護からの切り捨て
 それから介護からの切り捨てです。これは週刊誌の「エコノミスト」(06年11月14日号)ですが、「給付抑制、自己負担増で溢れ出す『介護難民』」という見出しです。「改正介護保険法の施行で、介護サービスが制限され、高齢者は悲鳴を上げている」。昨年四月からの法改悪実施で介護ベッドや車いすも取り上げられ、特養ホームの居住費や食費の自己負担が一気に増え、「難民」があふれ出している。
 ある八十代の女性が、こう訴えています。「認知症で特別養護老人ホームに入居する夫の自己負担額が一気に増えた。払いきれなくなっても自宅には戻せない。夫婦心中するしかないのか」。ここにも、「難民」という言葉が出てきます。
 ―生活保護からの切り捨て
 生活保護からの切り捨ても大問題です。生活保護は最後の命綱でしょう。ところが、それがいわば窓口で門前払いにされる。「毎日」の記事です。「生活保護:7割が申請至らず 事前相談で門前払い?」。わらをもすがる思いで申請に行ったが、窓口で「あなたはまだ若いじゃないですか」「親戚に面倒見てもらえ」と追い返す「水際作戦」が全国で行われています。北九州ではそのための餓死事件もおこりました。7割以上が門前払いにされている。
 生活保護は、申請があった場合には、役所は必ず受理しなければなりません。そして受理した上で審査する。生活保護法で決まっています。受理そのものを拒否するのは違法行為です。窓口が無法地帯になっているというのは、きわめて重大です。
 みなさん、医療でも介護でも生活保護でも、弱者が生きていけない社会でいいのか。「難民」といわれるような、人間としての尊厳も権利も奪われた人びとを生み出す社会でいいのか。これが今度の選挙で問われています。私は、弱者を見捨て、切り捨てて、胸になんの痛みも感じない安倍政権には、政治を預かる資格はないということを言いたいと思うのであります(拍手)。
 私たち日本共産党は、今度の選挙で、貧困の問題を大問題にしていきます。「格差社会」といいますが、社会全体が豊かになる中で、格差が広がっているのではないのです。働く人の所得が落ち込む中で格差が広がっている。だから「格差社会」というのは、貧困の問題です。
 私たち日本共産党は、立党の精神が国民の苦難の軽減にあります。貧困の実態を告発し、その責任を追及し、憲法25条に明記された国民の生存権を守るために、私たちの存在意義をかけて頑張りぬくことを、みなさんにお約束したいと思うのであります。(拍手)

 〔貧困と格差打開のための3つの転換〕
 
 貧困と格差を打開していくために、政治は、どういう責任を果たすべきでしょうか。私たちは税金、社会保障、雇用の3つの分野での転換を、今度の選挙で訴えてたたかいます。
 
@ 庶民大増税、大企業・大金持ち大減税の「逆立ち税制」をただす
 まず第一は、庶民の皆さんには大増税、大企業と大金持ちには大減税という、逆立ちした税制をただそうではないか。このことを、訴えたいと思います。
 
 ―住民税大増税
 昨年6月、住民税の大増税が襲いかかりました。お年寄りの世帯で住民税が数倍から10倍になってしまったと、抗議が殺到しました。定率減税を半分にし、お年寄りへの課税を強めた結果です。ところがことし6月、もう一度、増税の波が襲おうとしています。今度は定率減税の全廃で、1兆7千億円もの増税が、住民税増税という形で一気に表面化します。サラリーマンの皆さんは、住民税が約2倍になる。お年寄りの場合は、昨年あれだけ上がったのに、さらに2倍から4倍になります。
 私は国会で、定率減税廃止の問題を、くりかえし取り上げてきました。いくらなんでもこんな急激な、税が何倍にもなるような、10倍にもなるような負担増は許されない。このことを国会で言いますと、安倍首相の答えはいつも決まっていて、「お年寄りと現役世代の不公平をただすために仕方がない」と言うのです。しかし、税の不公平はそこにあるのではありませんね。不公平と言うのだったら、国民と大企業の間の不公平こそ、一番の問題ではないでしょうか(拍手)。
 今年度予算で庶民への増税は1兆7千億円。ところが、大金持ちへの減税――濡れ手に粟の株でもうけた人への減税は1兆円を継続する。株でもうけた人は、どんなにもうけても、もうけの10%、1割しか税金を取られません。額に汗して働いた人より、濡れ手に粟の錬金術師のほうが税金が少ない。これは不公平税制の最たるものだと思います(拍手)。それに加えて、大企業向けの減価償却制度の見直しで7千億円が減税された。大金持ちと大企業は1・7兆円の減税。この穴埋めを、庶民の皆さんの増税でうめようというんですから、これは逆立ちしてますね。私たちは、今からでも、この住民税の大増税はやめなさい、もしやるのだったら選挙での厳しい審判を覚悟せよ。このことを言いたいと思うのであります(拍手)。

 ―消費税値上げ
 もう一つの大問題は、消費税の値上げです。安倍首相はことし1月の施政方針演説で言いました。「本年秋以降、本格的な議論を行い、07年度をめどに、消費税を含む税体系の抜本的改革を実現させるべく取り組む」。
 秋以降にやるというんです。これはひどい話じゃないですか。秋と言ったら、参院選の後、議論を始める。消費税に手をつけると言うんだったら、国民に消費税を上げるのかどうか、上げるんだったら何%上げるかを、参院選できちんと示して審判を仰ぐというのが、民主政治の当たり前の姿だと、私は言いたいと思うのであります。(拍手)
 消費税は、89年に生まれたときも、97年に5%に上げられたときも、ただの一度も国民の審判を受けていない税金です。1回も公約にすることなく、選挙をやり過ごして、勝手に上げられたのが、消費税です。徹頭徹尾、公約違反の税金です。私は、選挙が終われば消費税の大増税、こういう白紙委任状は、絶対に自民・公明政権に与えてはならない。このことを訴えたいと思うのであります。(拍手)
 そして、なんのための消費税増税かといいますと、日本経団連という財界の、一番の責任者の御手洗会長が、ついつい本当のことを言ってしまいました。“法人税率はいま40%だけど、さらに10%引き下げて、4兆4千億円の大企業減税をやってくれ”と言うんですね。
 この御手洗さんは「おねだり会長」と言われているんですよ。財界の言い分を、なんでも「おねだり」する。4・4兆円も税金まけてくれ。新聞記者に「財源は、どうするんですか?」と聞かれました。そうしたら御手洗さん、「消費税を2%上げると『御手洗ビジョン』に書いてあるでしょう」と、こともなげに言いました。
 つまり、いまたくらまれている消費税の増税は、福祉のためでも、なんでもない。大企業のいっそうの減税をすすめる穴埋めなのだということを、財界が、はしなくも言ってるわけで、今度の選挙でこのたくらみは絶対に許さない、「ノー」の審判を下そうということを、重ねて訴えたいのであります。(拍手)

 A社会保障への国の責任を果たさせる
 第二の問題は、社会保障への国の責任を果たさせるということです。
 いっせい地方選挙では、高すぎる国保料や介護保険料が大問題になりました。国保や介護の直接の窓口は自治体です。同時に、自治体だけが問題ではありません。問題の根源には、国の社会保障への責任放棄があります。
 なぜ、あんなに国保料が高すぎるのか。それは、国保財政への国の負担割合をこの20年間で、50%あったのを35%へ、金額にすれば1兆6千億円も引き上げてしまった、このツケが回っているんです。
 高すぎる介護保険料は、どこに原因があるのか。介護保険をつくったときに、それまでは介護にかかるお金の50%を国が負担していたのを、半分の25%に減らされた。ここに大本の原因があります。
 
 ―一人一万円の国保料の値下げ、介護の負担軽減
 私たち日本共産党は今度の選挙で、みなさんに訴え、ともに実現したいことがあります。
 国保では、減らした1兆6千億円、一気に全部戻せとは言いません。1兆6千億円のせめて4分の1、4千億円を戻しなさい。そうすれば国民一人あたり、1万円の国保料の値下げができる。このことを私たちは強く求めていきたいと思います(拍手)。
 介護では25%まで減らしたうち、5%戻せ。全国市長会、町村長会も要求しています。5%戻せば、値上げしないですみます。国としても保険料の減免制度がつくれます。せめて、そこまで戻せ。これを私たちは掲げて頑張りたい。
 ―子ども医療費の無料化制度を国の制度に
 もう一つは子どもの医療費の無料化制度です。これはお父さん、お母さんと、みなさんの運動により、全国47都道府県のすべてで無料化ができていますね。だったら国の制度にすべきではありませんか。国の制度として就学前まで無料にしなさい。かかるお金は1900億円。国の制度として、この制度ができたら、自治体は上乗せができます。お金の余裕ができますから。これをやらせようではないですか。これを含めて緊急の要求を掲げて今度の選挙をたたかいたい。

 安倍首相はこういうことをいうと、「志位さん、財源はどうするの」と言うと思います。国保と介護と子ども医療費、生活保護も老齢加算や母子加算など削ったものを復活させる、いろいろあわせて1兆円です。米軍に言われたら、グアムに新しい基地を造るというので3兆円ぽんと出そうという。財界に言われたら4・4兆円の減税をすすめようという。それに比べたら1兆円なんて安いものではありませんか。要は政治の姿勢いかんではありませんか(拍手)。
 私は、ここでも憲法に依拠したたたかいが大事だと思います。憲法25条は、すべての国民に「健康で文化的な最低限度の生活」を保障しています。そして「国は社会保障の増進に務めなければならない」と書いてある。つまり、「社会保障は国の責任」と書いてあるのです。「この25条の責任を果たせ」、この声をおおいにあげていく選挙にしようではありませんか。(拍手)
 
 B人間らしく働けるルールをつくる
 第三は、人間らしく働けるルールをつくれという要求です。「ネットカフェ難民」という言葉をご存じですか。アパート代も払えず、ネットカフェで夜を過ごす若者が、いま増えています。いすに身体を伸ばすことができず、丸まって眠り、日雇い派遣という、その日の一日ごとの切り刻むような派遣労働のコールが携帯にかかってくるのを待つ生活をしている。
 一昨日(5月20日)、東京の明治公園で全国の若者が集まって「全国青年大集会」がありました。そこで、2年間もの間ネットカフェで生活している若者が訴えました。「この生活、いったん落ちてしまったら、なかなか這い上がれない。どんなに働いても、アパートを借りる敷金・礼金も払えない。ここはみんなで力を合わせて打開したい」と切々と訴えていた。その若者が「明日の心配をせずに生活したい」と言っていたことに胸がつまりました。青年というのは明日の心配だけでなく、ずっと未来のことを考えて生きていくべきなのに、一日一日が生死の境なのです。
 この雇用破壊はどこから始まったか。九五年に日経連が「新時代の日本的経営」という論文を発表し、これからは雇用を3つに分けると宣言しました。一つは長期雇用の正社員。二つ目は有期雇用の契約社員、三つ目はパート・アルバイト・派遣労働。こうして正社員を減らし、非正規雇用への大規模な置き換えが始まりました。これを後押ししたのが政府でした。とくに派遣労働を自由化したことは若者、国民、働く者を、モノのように使い捨てにする労働をはびこらせる温床になりました。この10年間で、大企業はもうけを14兆から29兆へと倍以上に増やしました。しかし、このもうけは、若者たち、国民の、涙と犠牲の上のもうけだったということを、私は告発したいと思うのであります(拍手)。
 ただ、みなさん、私は大きな希望を持ちました。明治公園には若者が3300人集まったんです。私は毎回参加していますが、最初は宮下公園というもっと小さい公園で1千人ぐらいから始まった。だんだん広がって、ことしは3300人。マスメディアも注目し、マスメディアのカメラが殺到しました。
 いま、若者たちが勇気を持って、職場の無法を告発し、仲間とともに労働組合をつくり、たたかいに立ち上がっている。これは大きな希望だと思います。そして私、ずっと集会に参加して、若者が何に怒っているのかを聞きますと、ただ単に「給料が少ない」「有給休暇が取れない」という問題だけではないんです。若者が一番怒っているのは、人間をモノのように使い捨てにするな。人間の尊厳を守れるような働き方をさせろという願いであります。
 松下プラズマの「偽装請負」と闘っている青年は、「人間を奴隷のように、モノのように扱うことは許せない。だから人間としての尊厳をかけて闘っています。だから、この闘いには負けられません」と訴えました。私はそれを聞いて胸が熱くなると同時に、日本には洋々たる未来が開けていると感じたと、みなさんにご報告したいと思います。(拍手)
 私たちは、若者や働くすべてのみなさんとともに、「サービス残業」や「偽装請負」という無法を一掃し、最低賃金は少なくとも時給1千円以上に抜本的に引き上げなさい。これらの要求を高々と掲げ、今度の選挙をたたかいぬきたいと考えています。(拍手)

 貧困と格差の問題、三つの提言を申しました。税金、社会保障、雇用、どの問題も解決しようとすれば、異常な大企業中心主義の政治のゆがみにぶつかります。
 この根源にメスを入れるのは、財界ひも付きの党ではできません。財界に通信簿――ABCDEの5段階評価をつけてもらって、献金をもらい、財界の言いなりになって先陣争いをしているような自民党や民主党にはできません。結党以来85年、財界からビタ一文献金を受け取らない清潔な党、日本共産党を伸ばしてこそ、今の貧困や格差の問題を打開できるということを、私は心から訴えたいと思います。どうかよろしくお願いします(拍手)。

〈二、憲法改定の問題〉
 もう一つの焦点は、憲法改定の問題です。
 安倍首相は、任期中の憲法改悪を宣言し、「参院選で憲法問題を争点にする」と言いました。争点にするなら、日本共産党は正面から受けて立ち、堂々の論戦で追い込み、日本共産党の前進で改憲勢力に痛打を与える選挙にしていく決意であることを、まず最初に申し上げます。(拍手)
 〔何のための憲法改定か、その正体は〕
 安倍首相の動きは、大変危険でありますが、同時に国民との矛盾、世界との矛盾を広げています。
 第一に、何のための憲法改定か、正体がはっきり見えてきました。
 小泉さんは、なかなかしたたかで、ごまかし続けてきました。私は小泉さんと何度も論戦しました。「憲法を改定する目的は海外で戦争をするためでしょう」と何度追及しても、小泉さんは「憲法を変える目的は、自衛隊は現にあるのだから、あるものを書くだけです」と、こんな調子でした。
 しかし安倍さんは、もっと正直です。安倍首相が繰り返し語ってきた、お気に入りのフレーズはこうです。「米国と肩を並べて武力行使をする。これは憲法改定なしにはできません」。語るに落ちるとはこのことです。これは憲法改定の目的が、「米国と肩をならべて戦争をする」国づくりをすると宣言しているのと同じではありませんか。
 小泉首相は、イラクに自衛隊を派兵しましたが、「戦闘地域に行きません」「武力の行使はしません」「後ろで水を撒いてるだけです」(笑い)などと、ごまかしました。しかし、安倍首相はこれらの制約を全部取り払い、イラクの戦争に米国と肩をならべて参戦する国をつくろうとしています。
 「肩を並べて」というから対等な国になるかというと、そうではないんですね。このシナリオは、アーミテージ元国務副長官など、アメリカがつくったものです。「憲法9条は日米同盟の邪魔者だ」とさんざん言われて、アメリカの外圧によってやられているシナリオです。邪魔者だというなら憲法9条じゃない、日米同盟こそ邪魔者です(「そうだ」の声、拍手)。アメリカに言われるままに、世界に誇る憲法9条をわたすのは、最悪の売国政治だと私は言いたいと思います(拍手)。

 〈憲法改悪推進勢力の中心に座る「靖国」派〉
 第二の問題は、憲法改悪を推進する勢力の中心に「靖国」派が座ったことです。
 
 「靖国」派とは、過去の日本の戦争を「自存自衛の戦争だった」「アジア解放の戦争だった」「正しい戦争だった」と信じ込んでいる異常な勢力のことです。靖国神社がそういう立場なので、私たちは「靖国」派と名前をつけました。
 戦後ずっと、この「靖国」派は続いてきましたが、90年代に入って93年に「河野談話」というのが出て、「従軍慰安婦」の責任を認めました。95年には「村山談話」が出て、不十分ですが侵略と植民地支配の反省をのべました。ここで「靖国」派は、「これはいかん」「このままいったら、大変なことになる」と、この2つの談話をひっくり返そうという動きを始めました。そして97年に作ったのが「日本会議」という組織です。創立のいきさつが「日本会議」のホームページに書いてあります。日本会議は「美しい日本を再建し誇りある国づくりを目指した新しい国民運動」としてつくられました。どこかで聞いた言葉が出てきたではありませんか。
 「日本会議」が掲げるのは「憲法の改正」「教育基本法の改正」「首相の靖国参拝定着」「夫婦別姓法案反対」「より良い教科書を子どもたちに」。「より良い」というのはうそで、「歴史をゆがめた、侵略を正当化する教科書を子どもたちに」ということです。こういうスローガンを掲げ、右翼勢力を総結集し、「靖国」派の総本山となったのが改憲・右翼団体の「日本会議」です。
 安倍首相は93年の初当選以来ずっと、この「靖国」派の中心的な右翼的政治家として名を売り、そのことで首相にまでのぼりつめた人物です。他に実績があるわけではありません。「靖国」派の実績なんです。
 安倍内閣に18名の閣僚がいますが、15名まで「日本会議」の関連団体に属する「靖国」派で固められている。「なんとか還元水」の大臣も「靖国」派の仲間です。だからかばう。あれだけ言われてやめないのは「同志」だからです。

 私は、そういう安倍さんが首相になったとき、これはたいへん重大だと思いました。去年の秋の国会で、安倍首相相手に歴史問題の論戦をかなりつっこんでやりました。そうしますと、やはり今までと同じ立場は言えないんですね。今までと同じ立場で言って、「あの戦争は正しかった」だの、「従軍慰安婦はなかった」だのと言いだしたら、たいへんですから、これを堂々と言えなくなった。私が追及したら、ついに「『村山談話』と『河野談話』は継承する」と言いました。しかし私は、継承するというのだったら、「過去の戦争は間違っていたと認めますか」と2度、3度と聞きましたが、安倍さんは、「政治家が歴史観を語ることには、謙虚でなければならない」といって答えない。しかし日本のやった戦争ですよ。きちんと侵略戦争と認めるのは当たり前のことであって、認めないことを謙虚とは普通言わないんです。無責任というのが、正しい日本語じゃないでしょうか(拍手)。

 私とのやりとりの中で、「やっぱり安倍さんの本音は変わらないんだな。本心は変わらないんだな。やっぱり靖国派だ」と思ったものでした。
 人間というのは、心が言葉に出ますね。必ず思っていることは、出てくるものです。ですから本音が出て、「従軍慰安婦」の問題で「強制連行はなかった」と言って、世界で大問題になりました。靖国神社を参拝はしていないけれど、「真榊(まさかき)」を奉納して大問題になりました。靖国神社の立場からいいますと、参拝も真榊奉納も同じ意味を持つそうです。やはりこれは、問題であることに変わりない。私は安倍さんに言いたい。ともかく首相として、2つの談話を認めるという公的な約束をした以上、それに反する行動はやるべきではない。「従軍慰安婦」の「強制連行はなかった」などという妄言は、今からでも撤回しなければ問題は解決しない。このことを強く言いたいと思います(拍手)。
 みなさん、「過去の戦争は正しかった」と内心では思い込んでいる勢力が、憲法を変えて武力で海外に打って出たら、こんなに危ないことはない。これが2つ目の問題です。
 
 〈「美しい国」づくりは、戦前・戦中の軍国主義復活〉
 そして第三は、そういう内閣の言う「美しい国」づくりとは、どういう国づくりかという問題です。私は、安倍さんが登場して「美しい国」というスローガンを掲げたときに、これは怪しい、気味が悪いなと思いました。
 そうしましたら、このルーツをたどったら、10年前に発足した「日本会議」が「美しい日本の再建」と言っていた。「再建」ということになると、かつてあった「美しい国」を「再建」することになる。何を再建するのか、はっきり見えてきます。
 安倍さんがもう一つスローガンとして言っている「戦後レジームからの脱却」。「戦後体制」とは憲法に定められた主権在民、基本的人権、恒久平和主義。ここから脱却してどこへいくのか。これは過去に戻っていこうということなんですね。戦前的な侵略主義・専制主義の体制に戻っていく。「美しい国」というスローガンは、戦前・戦中の軍国主義復活のスローガンそのものだということを、私は厳しく指弾したいと思います。(拍手)

 問題は、単にスローガンを言ってるだけではない。「靖国」派は、彼らの価値観を国民や子どもたちに押しつける動きを、すでに始めています。また「日本会議」に登場してもらいますが、これもホームページからとったもので、「日本会議がめざすもの」という文書があります。ここに、憲法を変えることなど、彼らの運動方針が書いてあって、四つ目に、「日本の感性をはぐくむ教育の創造」という項目があるんです。これを見ますと、彼らがどういう教育を望んでいるか、よくわかります。
 「行きすぎた権利偏重の教育、わが国の歴史をあしざまに断罪する自虐的な歴史教育、ジェンダーフリーの教育の横行は、次代をになう子供達のみずみずしい感性をマヒさせ、国への誇りや責任感を奪っています。……国を愛し、公共につくす精神の育成をめざし、広く青少年教育や社会教育運動に取りくみます」。こう書いてあります。
 ここで、「権利偏重」の教育と言っているでしょう。これは、基本的人権を国民がまっとうに主張することが、彼らには「権利偏重」に見える。「自虐的な歴史教育」と言っているのは、侵略戦争の事実に真摯に向き合って、反省をきちんとしようという当たり前の歴史教育なんです。「ジェンダーフリー」として、男女平等の当たり前の教育までこの言葉で敵視しています。
 「新しい歴史教科書をつくる会」の会長を務めた人物の出した本があります。これを読むと、男女平等への悪罵がずっと書いてあるんです。とくにひどいと思ったのは、“男女共学反対”です。こう言うんですね。
 「男の子が萎縮して、気力のない子が増えるのは男女共学が続きすぎるからであって(どよめき)、男女別学にすると、男の子は男の子らしくなるし、女の子は女の子の特徴をより強く持つようになるだろうと思います」。
 みなさん、教育基本法を変えたときに、第5条には、男女共学という条項があった。あれを削ってしまいました。私たちが「どうして削るんだ」と政府を追及すると、「もう男女共学は定着してるから削ってもさしつかえない」と言いました。しかし、あの条項というのは、ただ男女が一緒に学ぶということを書いてあるのではないのです。男女は互いに敬重し、つまり、敬い尊重する。そして協力しあい、その立場から、男女共学が必要だと書いてあるんです。両性の平等ということを、教育の隅々で貫くということが、かつての教育基本法第5条にあった。これを削ったのは、「靖国」派の考え方だったんですね。
 「靖国」派の「女は男に従え」という、それが「家」の理想だという考え方を、教育基本法の改悪のときに持ち込んだというのが、ことの真相だったということを、私は強く告発したいと思うのであります(拍手)。
 みなさん。人権の尊さも、侵略戦争の反省も、男女平等までも否定するのが、「靖国」派の「道徳」です。いま、首相が、さかんに「教育、教育」と言ってるでしょう。とくに「道徳教育」と言っているでしょう。もちろん民主的な市民の道徳は大事です。しかし「靖国」派の道徳を押しつけられたら、かなわないじゃないですか。子どもたちの心の中を、「靖国」派の色一色に染め上げるような、カーキ色(軍服の色)に染め上げるやり方には絶対に、断固として拒否の声を上げようということを、訴えたいと思います(拍手)。
 
 ―アメリカの保守派論客からも危惧の声
 この動きを、世界はどう見てるでしょうか。アメリカの保守派で、フランシス・フクヤマ氏という論客が最近、論文を出しました。“今の安倍内閣を見ていると、かつての戦争は正しかったという間違ったナショナリズムにとらわれている。そういう国が9条を変えたら、アジアで孤立する危険がある。これまでアメリカは、日本に憲法改定を勧めてきたけど、慎重に考え直したほうがいい”。こういう論文を書きました。「憲法を変えろ」と言ったアメリカの保守派の論客の中からも、「安倍さんでは危ないぞ」という声が出てきた。
 もう一つ、世界でおもしろい反応だと思ったのは、今南米で左翼政権がどんどんできています。ボリビアで新しく左翼政権の大統領になったモラレス大統領が、3月に来日しました。どんな会談がやられたのかと、外務省のホームページを見てみました。
 いまボリビアでは左翼政権になって憲法を作っている途中のようです。モラレス大統領は、日本の9条を見習い、「現在すすめている憲法改正において、戦争放棄を盛り込みたいと説明した」と書いてあるんです。安倍さんがそれになんと答えたかは書いてありませんが(笑い)。
 これはなかなかうれしい話です。ボリビアには4万6千の軍隊がいるそうですが、“軍隊無しで人命を救える、武装をなくしながら社会の力で平和を維持したい”と大統領は語ったそうです。9条に見習って、それを採り入れようというのが世界の流れになっているのに、これを投げ捨てようというのは、これほど世界の流れに逆らうものはないと私は思います(拍手)。
 
 相手はいろんな仕掛けをつくってきます。国民投票法でも、ひどい仕掛けをつくったけれど、国民の多数がノーと言えば、憲法改定はできません。この3年間ずっと見ると「読売」の調査で「9条改悪反対」は3年前の46%から56%へと、過半数を超えたではありませんか。「九条の会」は3年間に6千に広がり、ちょうど同じ時期に「9条守れ」の声は多数派となった。これを揺るぎない力にすれば、相手がどんな悪賢いたくらみをやろうと、憲法改定はできません。
 そして、今度の選挙では国会で日本共産党の票を伸ばすことが、最も手厳しい、「靖国」派による改憲策動への痛打になるということを、私は訴えたいし、どうか日本共産党を勝たせていただきたい。心からお願いします(拍手)。

[「いまこそ必要 たしかな野党」―日本共産党の議席の値打ち]
 こういうなかでいま、日本共産党の議席を伸ばすことが、どういう値打ちを持つのか。いくつかの角度からお話をすすめます。
 私たち「いまこそ必要たしかな野党」と言っています。「いまこそ」といってるところが強調点です。前の総選挙から「たしかな野党」のスローガンは使っていますが、いまこそ、政党の「たしかさ」がこんなに必要なときはないという思いを込めて、「いまこそ」と言っています。
 
〈安倍・自公政権の国民ないがしろの暴走にストップをかける議席〉
 まず第一に、日本共産党の議席は、安倍自公政権の暴走にストップをかける一番確かな議席です。そのことは私たちだけが言ってるだけではなく、実は相手も言っています。
 私は憲法記念日に、「安倍政権は『日本会議』政権、『靖国』派政権だ」と、ずいぶん批判しました。さっそく反応が返ってきました。どこから返ってきたかというと「日本会議」です。「日本会議首都圏地方議員懇談会」というのがあるのですが、ホームページを見ると、「日本共産党の志位委員長が日本会議を名指しで批判」。そして「全国に護憲の市民組織を設立し、国民投票において改憲を阻止しようとする日本共産党。それに対して、私どもは、自民党や民主党などの『新憲法制定派』議員と連携して、全国300支部を結成して我が国の真の独立と国益を守ることができる新憲法を制定しようとしているわけです」「この対立構図が今後、ますます鮮明になってくると思われます。日本共産党に対抗して、新憲法制定の草の根ネットワークを広げていきたいと思います」(笑い)。
 「靖国」派が、“憲法改定の正面の敵は日本共産党だ”と言ってるのですから、これほど間違いのないことはありません(拍手)。
 
 〔公明党とはどういう党か〕
 この「靖国」派政権でコンビを組んでいる公明党とはどういう政党か。この前の選挙ではさんざん、私たちの悪口を言いました。およそ宗教を語る人の言葉かと思うくらい、口汚い攻撃ですが、私たちは品格を持って反論しました。公明党・創価学会の、2つの危険な役割を国民のみなさんにきちんとお伝えしていきたいと思っています。
 ―自民党の暴走にアクセル踏む「悪政戦犯」
 一つは、「悪政戦犯」の党ということです。公明党は、自民党になんでも賛成するだけではありません。一言で言って、自民党の暴走にブレーキを踏むようなふりをしてアクセルを踏む、これが公明党じゃないでしょうか(爆笑、拍手)。
 「年金をよくします」と言って、「定率減税の廃止」をいち早く主張して、「増税戦犯」と言われているのはこの党です。教育基本法改悪でも改憲手続き法の問題でも、「早くやれ、やれ」とけしかけたのは公明党です。なぜかというと、選挙にかかると審判の対象にされるから早く片づけてくれ。さんざん安倍首相にせっついたのが公明党です。
 ですからいっせい地方選で、その「悪政戦犯」の役割に厳しい審判を浴びました。「全員勝利」などと言っていますが、全国でも大阪でも得票を減らしています。大阪では府会で42万から39万に6%得票を減らしました。共産党は2万伸ばしました。公明党は減らしました。(いずれも比較可能な選挙区の合計)これはみなさん厳しい審判があらわれたのではないでしょうか。(拍手)
 ―羽目がはずれた「政教一体」
 いま一つの問題は、公明党と創価学会の「政教一体」で「羽目がはずれた」ということです。
 「聖教新聞」の2月22日から3日間連続で、池田大作氏の長い長い「詩」というのが出ました。最後は、「勝ちまくれ、また勝ちまくれ」。これは詩といえるのか、文学的評価には立ち入りませんが、ともかく「勝ちまくれ、また勝ちまくれ」これが彼らの指導文書になりました。
 そして選挙が終わった後、次の日の「聖教新聞」に「全国が完勝、同志に感謝」「『戦い切った』喜びの勝鬨(かちどき)」「広宣流布へ!『法華経の兵法』で快進」。「全国に創価完勝の旗が翻った」、つまり公明党が当選したことを「創価学会の完勝」として臆面もなく誇っている。1面凸版ぶち抜きです。4年前にはここまでやらなかった。下の方に少し控えめに出していましたが、もう羽目がはずれています。
 
 かつて創価学会は、言論出版弾圧事件を起こしました。1969年です。世間から厳しい批判を浴び、池田大作会長(当時)は70年に、「猛省発言」をします。“もう2度とこういうことはしません。頑なな反共主義はとりません。選挙は公明党と一体でなく、たてわけておこないます”と約束しました。
 ところが01年の参院選で、池田氏はペンネームの文章で、この言論弾圧事件について、「仏敵(ぶってき)の極悪の非難から、正義の信仰を守り抜いた正義の闘争だった」。つまり、言論出版弾圧事件は間違ってなかった、正しい戦いだったと言ってのけました。そこで日本共産党の不破哲三議長(当時)が、それなら、あの反省、猛省は、世の中を欺く虚言だったのか。つまり、嘘だったのか。こう問いただしましたが、今にいたっても反論はないのです。都合の悪いことは、聞かないふりをしている。
 そして、「政教分離」の公約も投げ捨てて、一体になった選挙をやっている。そして、自分は「仏」で、逆らうものは「仏敵」です。そして「仏敵は撲滅せよ」。この「仏敵撲滅論」が、露骨に復活してきました。それがああいう日本共産党へのひどい悪口になってあらわれているわけですが、私は率直に言って、こういう集団の意のままになる政党が政権参加をしているのは、日本の民主主義の前途を危うくする。このことを言わなければならないと思います(「そうだ」の声、拍手)。
 ですからいまの政権は、なかなかたいへんな相手なんです。「靖国」派と「政教一体」集団のコンビですから、これ以上は考えつかないぐらいの、最悪のコンビと言わなければならないじゃありませんか(拍手)。これだけ相手が悪いと、正面から暴走を止めるには「たしかさ」が必要なんです。つまり、「たしかな」立場と信念と勇気がなければ、暴走にストップはかけられません。それを持っているのは、日本共産党だけではないでしょうか(拍手)。
 日本共産党にタブーはありません。「靖国」派も恐れません。「解同」も恐れない。公明党・創価学会の横暴も恐れません。民主主義を守る一票は、日本共産党にお寄せください(拍手)。

〈自公・民主の共同での間違った政治に反対をつらぬく議席〉
 もう一つ、私が言いたいのは、自公と民主が共同ですすめている間違った政治に反対を貫く一番たしかな議席が、日本共産党の議席だということです。
 民主党は、どうも国会で影が薄い。野党といっても、「たしかさ」が全くないんですね。野党なのか与党なのかわからない。なぜ民主の腰が定まらないのか。自民党と一緒に共同して間違った政治をすすめてきたからであります。
 いま、民主党は「格差是正」ということを、さかんに言います。しかし、貧困と格差を拡大したのは、自民党と公明党だけの責任でしょうか。民主党の鳩山代表は、小泉さんとの最初の党首討論で“構造改革を頑張ってください。途中で倒れたら、私が骨を拾ってあげますから”と言ったでしょう。「構造改革」を競い合い、派遣労働の自由化をやったのは、誰ですか。介護保険法の改悪に賛成したのは、誰ですか。母子家庭への児童扶養手当の削減に賛成したのは誰ですか。「格差是正」を言うのはいいですよ。結構ですよ。しかし、それを言うなら、反省が必要です。反省なしに、自分は知らないかのような顔をして、「格差是正」を言うのは、私は無責任だと思う。国民への不誠実だと言わなければなりません(拍手)。
 そして、憲法の問題では、安倍さんが憲法を争点にするという。そうすると、小沢さんは「憲法より生活」と言うんですね。もちろん生活は大切です。しかし憲法の問題で逃げているんですね。なぜ、逃げるのか。海外で戦争する国をつくる。そういう方向に憲法を変えるという点では、自民党と一緒だからです。
 とくに私が深刻だと思うのは、この党は、「靖国」派を党内に抱えてるんですね。5月3日、「靖国」派の議員連盟が「新憲法大綱案」を発表しました。これは天皇を元首にして、天皇を中心の「国柄」を復活する。昔の「国体」ですね。「集団的自衛権」を行使する。基本的人権を制約する。「国防」の責務を明記する。これは自民と民主の議員が合同でつくっているんですね。
 民主党には、安倍・「靖国」派政権と共同で暴走することはあっても、暴走を止める力はありません。私は、日本共産党の議席は、自公と民主が一緒に進める間違った政治から、国民の利益を守る、一番たしかな拠り所になる議席だということを、訴えたいと思うのであります(拍手)。

〈草の根の力と連帯し、国民の要求で国政を動かす議席〉
 それからもう一つ。日本共産党は草の根の力と連帯し、国民の要求で国政を動かす力を持った政党です。
 私たち、衆参でいま18議席ですが、「サービス残業」の問題は、大阪の沓脱タケ子さんが国会で取り上げて以来、280回以上国会で質問し、是正の通達を出させ、852億円を取り戻しました。「偽装請負」でも連続追及し、是正の通達をとうとう3月に出させました。先ほど言ったサラ金の高金利の問題にもメスを入れました。いろいろな国政を動かす力を発揮しています。
 なぜできるか。草の根で、頑張っているからです。私たち日本共産党は、全国に2万4千の支部を持っております。2万4千というのは、小学校の数、保育園の数、郵便局の数と同じです。小学校、保育園、郵便局、共産党支部(笑い)と、覚えていただきたい。そして地方議員の数が、今度のいっせい地方選で頑張りまして、3138人と、地方議員第一党の地位を維持できました(拍手)。
 大阪でも、これはすごいなと思ったのは、大正区で定数1の府会議員選挙で小谷みすずさんが勝ちましたね。大正区で、素晴らしいなと思うのは、小谷さんと市会の矢達さんが、党の生活相談所、党支部の皆さんと一体になり、生活相談活動にずっと取り組んで、4年間で7千件やっているそうです。これはたいへんな働きだと思います。
 大正区では、「ともかくあそこに行けば」ということを、どこでも言われるそうです。区役所に行っても「共産党に行ってください」、警察にいっても「あっちへ行ったほうがいいですよ」と言われるぐらい(笑い)、区民の“駆け込み寺”として頑張っていますが、たとえばサラ金の問題もたいへん多く寄せられる生活相談だそうです。そうやって、草の根で頑張っている声を、私たちはくみ上げて国会で取り上げる。だからサラ金の問題でも解決の先頭にたてる。18議席でも草の根のみなさんと共同して国政を動かす、たくさんの実績を上げてきたわけで、これを伸ばしていだければ、それこそ、もっともっとお役に立つことができるということを、心から訴えたいと思います(拍手)。

 〈「たしかな野党」の議席を増やしてこそ、本物の民主的政権への道が開ける〉
 最後に私が訴えたいのは、「たしかな野党」の議席を増やしてこそ、本物の民主的政権の道が開かれる。これを言いたい。
 「自民か、民主か、どちらかを選べ」「これで政権交代をやろう」。これが、相手のうたい文句ですが、二つ落とし穴があると、私は言いたいんです。
 一つは、同じ路線の中で政権交代をやったら何が起こるか。国民のみなさんは、1回体験しているじゃないですか。93年にできた細川内閣、羽田内閣、「非自民」という政権ができました。しかし、すぐ宣言したのは、内政・外交で自民党路線を継承しますということでした。やったことは何かといえば、小選挙区制や政党助成金制度をつくり、お米の輸入自由化をやり、消費税を危うく7%に上げかかった。最後は金権疑惑で退陣です。自民党以上のひどい政治をやりました。同じ路線のなかで、担い手だけ変えても、政治はよくならない。悪くなるという体験をしてるじゃないかということを思い起こしていただきたいです。
 そして、もう一つ、いまのことについて言いますと、民主党は「政権を担えるになえる党になる」と自分で言う。「政権を担うんだ、担うんだ」というあまり、憲法でも消費税でも、自民党と同じ立場にすり寄っていく。結局そのことが自民党を助けることになる。「政権交代」を叫んで自民にすり寄るほど、自民党が安泰になるというのが、いま起こっている出来事ではないでしょうか。
 ですから政権ということを考えても――今度の選挙で私たちが政権というのは少し早い(笑い)、もうちょっとかかると思いますが――「たしかな野党」というスローガンは、いつまでも野党でいることが、確かな党だという意味ではありません。この議席が増えれば、確かな、「国民が主人公」の政権への、一番の近道になるということがこのスローガンに含まれていることを、どうかご理解をいただきたいと思います。(拍手)
 日本共産党の議席が一つでも増えたら、国会は変わります。いま参議院で9ですが、10になると本会議で自由に質問ができます。それから党首討論で私はいつも排除されています。出席はして、発言させろと言うのですが、なんだかんだと発言させない。しかし、党首討論を自民党と民主党だけがやっていて、何もおもしろくない。一つ増えると党首討論ができる。必ずおもしろい場面を提供することをお約束します。どうかよろしくお願いします(大きな拍手)。
 そして二つ増えますと、もっと楽しいことが待っています。議案提案権を復活できるんです。つまり国民のみなさんの要求を法案の形で国会に提出できる。一つ増えても、二つ増えても、国会の様相は変わります。本当にこの選挙で共産党が伸びるかどうか、これで日本の未来の方向が左右されるわけですから、どんなことがあっても、私たちは勝ち抜きたいと思います(大きな拍手)
 みなさん、大阪では頑張れば勝てます。私は、いっせい地方選も最初のスタートは、大阪城ホールで訴えさせていただきました。大阪では、府会でも、政令市でも、一般市でも、得票と議席を増やしました。大阪は底力を持っている。1人区、2人区、3人区で10も勝ったじゃないですか。頑張り抜けば、比例でも選挙区でも、“ツインタワー”がもう1回建つようになることが可能だと思います。どうぞみなさん、「大阪が変われば日本が変わる」、こういう結果を出して頂くことを、最後にお願いして、私の訴えとさせていただきます。ありがとうございました(大きな拍手)。

投稿者 jcposaka : 2007年05月24日

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