「放課後子どもプラン」と学童保育
大阪学童保育連絡協議会副会長 前田 美子
はじめに
2006年5月9日突然、 当時の猪口少子化担当大臣、 川崎厚生労働大臣、 小坂文部科学大臣3大臣が 「放課後子どもプラン」 (仮称) の創設を発表しました。
3大臣の記者会見資料には 『各市町村において、 教育委員会が主導して、 福祉部局との連携の下に 「地域子ども教室推進事業」 (文部科学省) と 「放課後児童健全育成事業」 (厚生労働省) 【以下学童保育】を一体的あるいは連携して実施する 「放課後子どもプラン」 (仮称) を創設する』 として、 ○教育委員会が主導することにより、 学校が従来より積極的にかかわる。 ○各市町村では、 校長又は教頭がメンバーとして参画する事業運営組織を設ける。 ○同プランはできる限り、 小学校内で実施すること。 ○同プランは、 福祉部局職員、 教職を目指す大学生、 退職教員、 地域のボランティア等を活用することとする。』 と明記されていました。
学童保育関係者はじめ地域で子ども教室を担当されている方たちからも一斉に驚きと不安が広がりました。 それは、 大阪府も以前は教育委員会が担当所管でした。 しかし、 児童福祉法に位置付いたことから福祉部局に移管し、 今日に至っています。 それをまた、 「教育委員会が主導して」 とはどういうことなのか、 また、 「地域子ども教室」 と 「学童保育」 を一体的あるいは連携してとあるが、 市町村によっては一体的運営を可能にし、 神奈川県川崎市や東京都品川区にように学童保育を廃止して全児童対策事業に統合していくことに一層拍車をかけることにならないか等々の危惧が走りました。
何故「放課後子どもプラン」なのか?
一つは地域が大きく変貌していることです。 本来子どもたちが学校を終え、 自由に友だちと遊ぶ空間であったはずの地域は毎日のように変質者が出たとの情報が飛び交っています。 また、 熊取町では小学生女子が行方不明になったり、 奈良の平群町の女子誘拐殺傷事件など子どもを標的にした犯罪が起こり深刻な状態になっています。 そうした中で、 放課後の 「安全・安心の居場所」 が最大テーマになっていたことです。
二つ目は2004年度から文部科学省が3ヶ年に限って実施していた 「子どもの居場所づくり新プラン」 としての 「地域子ども教室」 は地域の方々から継続の要望が出されていたことです。
三つめは学童保育の願いが急増していることへの対策です。 学童保育は保育所のように最低基準がありません。 そのために1か所で子どもが100名を越える大規模学童保育が深刻になっていることです。 大阪府内でも1か所70名を越えている学童保育は174か所、 100人を越える学童保育が37か所 (それぞれ2006年5月調査) になっています。 大規模問題のみならず、 若い共働き世代は子どもが小学生になったので働きたいとの思いから学童保育の要求は一層広がり、 切実になっています。
国の抜本的な制度確立が急務
本来、 地域に児童館や公園などの整備をはじめ、 学童保育指導員や青少年指導員などの十分の配置と身分の確立が求められますが、 今回の 「放課後子どもプラン」 は、 放課後も含めて学校の中に囲い込んでしまうような安上がりな方向で解決を図ろうとしているのです。
今日の子どもの成長・発達は学校教育だけで担うことにはなりません。 働きながら子どもを育てていくために保育所に続き、 学童保育は必要不可欠な施設になっています。
しかし、 国の学童保育に関する運営費は一か所161万2000円 (年間開設250日の場合) で、 その3分の1の補助額ですから僅か約53万7000円です。 また、 「放課後子ども教室」 についてもボランティアが基本になっています。
公明党は、 少子化対策の 「トータルプラン」 で、 「放課後児童クラブ (学童保育) と地域子ども教室を一体化して小学6年生まで預かるよう 『放課後子どもルーム』 として再出発する」 という政策を掲げています。
「放課後子どもプラン」 を総合的な放課後対策にしていくには 「学童保育事業」 と 「放課後子ども教室」 を一体的運営をするのではなく、 それぞれ固有の事業として確立し、 国・自治体の予算 増額とともに抜本的制度の確立が求められます。 (まえだ・よしこ)
投稿者 jcposaka : 2007年06月15日