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子どもたちをマインドコントロールにさらすのか

2007年06月15日

JC・近現代史教育プログラム「誇り」のセミナーについて
 有川 功

「靖国史観」を教育現場に

5月17日衆議院教育再生特別委員会において、 日本共産党の石井郁子議員が日本青年会議所 (以下JC) が開発した教育プログラム及び歴史教育補助教材であるアニメ 「誇り」 のDVDについて質問し、 「靖国史観」 を教育現場に持ち込むものと厳しく批判したことが大きな話題になっています。
 その内容については歴史の真実を歪めるものであり、 歴史教育の立場からも全面的な批判にさらされて当然のものだと言わねばなりません。 その史的・学術的批判については他に譲り、 取り急いでこのプログラムの危険きわまりない手法について告発しておきます。

視聴のみ公開はしない

 その第一はJCがこのDVDアニメ 「誇り」 の公開について 「視聴のみの公開はいたしておりません」 としていることです。 つまり、 視聴し、 内容を精査し、 補助教材として適切か否かと検討する事を拒否しているのです。 あらかじめ批判的検討を拒否する態度は 「靖国史観」 に立つ人たち特有の偏狭さを示すものですが、 このような態度で製作されたDVDに果たして 「補助教材」 などと名乗る資格があるのでしょうか。
 JCは 「あくまでも近現代史教育プログラムの中の一つの素材であり、 このDVDを見ることだけでの効果を期待していません。 視聴後のプログラムや討議によって、 確かな歴史認識を持たせることを狙いとしています」 として、 視聴後にJCの指定する手順に基づく 「セミナー」 の実施を約束したものにしか 「公開」 しないというのです。

利他の精神呼び覚ます

 そこで第二の問題はJCの指定する 「セミナー実施の手順」 とはどんなものなのか、 ということです。
  「手順」 によれば 「セミナーの流れは大まかに4項目から成り立っています」 として 「DVD (アニメ) の鑑賞」、 「歴史解説・グループディスカッション」、 「グループ発表」、 「日本の誇りの説明」 をあげています。
 そして、 「鑑賞」 の項では 「部屋を暗くすると集中してみられます。 また、 最後のテロップが白抜き文字になっていますので、 その効果も高まります」 と書いており、 「歴史認識・グループディスカッション」 の項では 「できるだけ多くの子どもたちに意見を言ってもらう」、 「日本人が本来身につけている利他の精神を呼び覚ますこと」 を求めています。
 また 「グループ発表」 では 「コーディネーターが拍手を促すなどの工夫をします」 と述べ、 「誇りの説明」 では 「開催地域の歴史等を盛り込むとより効果的」 だとしています。

こんなことまで留意点に

 第三に、 ではこのセミナーにあたる 「コーディネーター」 には何を指示しているのでしょうか。 文書は 「実践における留意点」、 「臨む態度・留意点」 として8点をあげています。
@ 服装はカジュアルがお勧めです、 A指は指さない事、 B口調は柔らかく、 C表情は伝えたい事によって変える事、 D必ず生徒を名前で呼ぶ事、 Eできるだけ沢山の人に発表させる事、 Fキーパーソンを早めに見つける事、 G自分を先生と呼ばせる事などをあげています。
 それぞれに短いコメントがつけられているのですが、 ここではFの項で 「必ずどのクラスにもムードメーカーがいます。 彼らを巻き込む事で参加者のモチベーションをあげましょう」 とコメントされていることを紹介しておきます。

洗脳の手法と同じもの

 この三点をみれば、 今回のアニメDVD 「誇り」 を活用して子どもたちに施す 「セミナー」 の本質はもはや明らかではないでしょうか。 「暗い部屋でDVDを見せ」、 「(都合の良い意見に) 拍手をあおる」、 「キーパーソンを見つけて参加者を巻き込む」   これらはマインドコントロールの手法そのものなのです。 「特定の価値観」 を当事者に知らず知らずに植え付ける数々の 「産業セミナー」 や 「自己啓発セミナー」 の手法であり、 新興宗教の多くもこの手法を用いてきました。
 そこには、 子どもや生徒たちの発達・成長段階への配慮も、 教育を受ける主体者である子どもや生徒たちへの受容と共感の態度のかけらもありません。 事実を吟味し、 真実を見抜く力を養い、 批判精神・批判力を培うことや価値観・意見の相違も互いに尊重しあい、 ともに学びあうという教育の条理や節理にも全く無頓着なのです。
 子どもたちの世界に、 こんな理不尽なマインドコントロールを横行行させては大変です。
 今こそ、 アニメDVD 「誇り」 に対する徹底した批判の活動を強めるとともに、 教育の営みを単なるプログラムやセミナーに置き換え、 子どもや生徒をマインドコントロールしようとする、 危険きわまりない一切のたくらみを許さない運動を広げていくことが求められているのではないでしょうか。
  「セミナー実施の手順」 は、 JCのホームページに掲載されていた文書に依っていますが、 最近削除されました。 (ありかわ・いさお 心理カウンセラー)

投稿者 jcposaka : 2007年06月15日

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