半数が過労死ライン
36時間連続勤務(宿当直)3割も
勤務医の労働環境
深刻な実態明らかに
公立病院の廃止や医師不足が大きな社会問題になっている中、 大阪府保険医協会の勤務医部会が実施した第2回 「勤務医の労働環境実態と意識に関する調査」 の結果が、 このほどまとりました。 回答者の約半数が週60時間以上、 「過労死ライン」 を超えて長時間労働を続けていることや、 慢性的な疲労の蓄積に苦しみ、 勤務医の将来に希望が持てなくなっている異常な実態があることが浮き彫りになっています。
大阪府保険医協会が調査
調査は同部会が06年11月から12月にかけてアンケート形式で実施。 04年9月に実施された 「勤務医の労働環境に関する調査」 に続くものです。
大阪府内の病院、 診療所に勤務する医師に6256枚の用紙を送付し、 560人が回答 (回収率9・0%)。 男性医師は439人 (78・4%)、 女性医師は118人 (21・1%) で、 働き盛りの40歳代の医師の回答が242人と最多でした。
それよによると46・4%の医師が週60時間以上勤務し、 「過労死認定基準」 を超えています。 労働基準法に定められた週40時間だったのは13・0%にすぎません。
宿当直を行う医師の7・5%は全く仮眠がとれず、 87・9%の医師が宿直時に24時間以上の連続勤務となっています (24時間以上54・2%、 36時間以上が32・7%)。 過去1年間に医療事故や 「ひやり・はっと」 事例を体験したことがあるという医師は41・4%あり、 週当たりの勤務時間が長くなるほど、 割合が大きくなっています。
将来の希望では61・1%が 「勤務医を続けたい」 と回答していますが、 一方で勤務医の未来について58・1%が 「やや有望でない」 または 「有望でない」 との回答を寄せています。 勤務医の未来については58・1%が 「希望が持てない」 と回答しています。
常識では考えられない働き方
勤務医部会では8月25日に報告会を開催。 同部会の原田佳明さん (小松病院副院長・関西医科大学小児科臨床教授) が調査結果を詳しく紹介し、 「常識では考えられない働き方が、 勤務医では一般化している。 劣悪な労働環境が改善されなければ、 安心で安全な医療は担保されないことが示されている」 と語りました。
耳原総合病院院長の松本久さんは、 医療関係者らの運動で勤務医不足への認識が大きく広がり、 世論となりつつあると指摘しながら、 勤務医が労働基準法に違反せず、 交代制勤務を実現して働くには、 19%から36%の医師増員が不可欠との試算結果を示しました。
今回の実態調査を監修した滋賀医科大学准教授の垰田 (たおだ) 和史さんは、 勤務医不足の大本には、 勤務医の過重な労働と、 国の医療費抑制政策があると強調。 今回の調査でも、 勤務医を続けたいという医師に比べて、 離職を希望する医師は、 勤務時間が長く、 宿当直参加率が高いなど労働の負担や心身の疲労自覚が強くなっていることを示して、 「医師が病院で働き続けられる条件整備が緊急の課題」 と力説しました。
報告会では 「医師の過重労働は医療の安全を脅かす」 とのアピールを採択。 「安全」 「安心」 の医療を保障するための医療費総枠の拡大や医師数の増員など、 医療政策の転換を求めて運動を強化するとしています。
投稿者 jcposaka : 2007年09月06日