寝屋川 健康調査急げ 廃プラ工場周辺の被害深刻
2007年12月05日
寝屋川市太秦高塚町で操業している廃プラスチックリサイクル工場。甘酸っぱい独特の、においが周囲に漂います。操業開始時から近隣住民の間には目、のどの痛みや湿疹(しっしん)などの健康被害が多発、深刻化しています。(松田大地) 豊かな緑に囲まれた寝屋川公園から徒歩数分の距離にあるのが、廃棄物処理会社「リサイクル・アンド・イコール」の処理工場です。廃プラスチックで、倉庫などで使う荷台(パレット)を製造。周辺には学校や病院などの公共施設も多く、浄水場をへだてて住宅街が広がっています。
二〇〇四年三月、住民に説明もないまま突如、工事が始まり、〇五年四月に稼働すると同時に異臭が広がりました。市には二百件近い(今年八月まで)苦情が寄せられましたが、市は「因果関係が分からない」などと繰り返すばかりです。 太秦桜が丘の女性は二年前から頭痛が顕著になったといいます。「ぬらしたマスクを夜にしないと、のどの乾燥で朝ごはんが食べられなくなる」と語ります。 「住民の不安や疑問は一つも解消されていない」と憤るのは、「廃プラ処理による公害から健康と環境を守る会」の長野晃事務局長。被害が多い周辺七自治会を中心につくった「守る会」は〇五年八月に処理工場の操業停止・建設中止を求め大阪地裁に提訴し、係争中です。長野さん自身も目の痛みなどに苦しんでいます。守る会では、この間二度、八万人署名を市長と市議会に提出。抗議集会や独自の調査を続け、住民への健康調査のすみやかな実施を求めてきました。しかし馬場好弘市長は、「健康調査については現時点では…必要性はない」と、住民の声に耳を傾けようとしません。 裁判では、工場の稼働と健康被害との因果関係を強く示す調査の結果が続々と証言されました。 東大大学院の柳沢幸雄教授(環境学)は、イ社工場周辺地点での環境測定で、国の大気環境基準値を上回る高濃度のベンゼンを検出。「プラスチックごみのリサイクル処理過程ではさまざまな有機化合物が発生する可能性がある」と指摘しました。岡山大大学院の津田敏秀教授(環境疫学)と頼藤貴志医師の疫学調査では、工場周辺の住民が二・八`離れた地域の住民と比べ、湿疹発症率が十二・四倍、目の痛みが五・八倍などの高率なことが明らかになりました。 工場周辺では、すでにクリーンセンター(清掃工場)が稼働しています。加えて、イ社工場の真向かいでは寝屋川市など北河内四市の共同リサイクル工場が建設中で、来年二月からの稼働予定。健康被害のさらなる拡大とともに、建設中の第二京阪道路の開通で排ガス増による複合汚染が危険視されています。 「引っ越ししようか真剣に悩んでいる」と話すのは富澤明美さん=太秦中町=。「目がチクチクする」痛みや両腕に広がる発疹(ほっしん)のほか、娘も頭のしびれなどで通学中の電車内で倒れることもありました。 長野さんは、「健康上の問題があるのかどうか調べるのが行政の責任。それもなく市が安全だというのは納得できない」と、一刻も早い住民への健康調査の実施を求めます。今月二十五日午後一時半からは、住民らを診察した医師の証言が大阪地裁で行われる予定です。投稿者 jcposaka : 2007年12月05日