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シリーズ 明日をみつめて 貧困打開への道 メールが結んだ命の絆

2008年02月21日

病気で失業、たちまち貧困

  「まるで出口の見えないトンネルを歩いているようでした。 今こうして生きていることさえ夢のような気がします」。 池田市の樋口潤一さん (32)。 生活が困窮し 「死」 を覚悟した昨年夏から冬ごろの様子を振り返ります。

 病気で仕事を失ったのをきっかけに、 家賃も保育料も滞納。 ガスが止まると100円の値札が付いたパスタをホットプレートでゆで、 電気が止まるとロウソクの明かりで夜を過ごしました。 衣類や子どものおもちゃを売り、 結婚指輪は質に入れました。 最後に米を買ったのは9月、 しょうゆをかけたご飯だけの食事。 「子どもにはお腹いっぱい食べさせたい」 と潤一さんと妻のあかねさん (30)は、 水だけで空腹をしのぐ日が続きました。   「もうあかん…」。 電気・水道・ガスすべてが止まった11月のある日、 潤一さんがあかねさんに告げた時、 異変に気づいた6歳の娘が、 泣きながら駆け寄り叫びました。   「死にたくない!」

メッセージ入り名刺が党への扉

 日本共産党池田市議の藤原みち子さんが、 樋口さんのアパートに駆けつけたのは12月11日の夕方でした。 「助けてください」 と窮状を訴える潤一さんの携帯メールが、 日本共産党大阪府委員会に届き、 連絡を受けて樋口さん宅へ。 不在でしたが、 藤原さんが玄関に残したメッセージ入りの名刺が、 一家を日本共産党に結びつけました。
 樋口さんは、 高校卒業後、 ダイハツ工業勤務などを経て、 21歳から公務員としてごみ収集に従事。 ところが2年前に勤務中の交通事故で頭部を強打。 約1カ月後、 自宅で水を飲もうとしたときに突然倒れ、 その後めまいや息切れ、 夜に眠れないなどの症状が出るように。 「不安神経症」 「過呼吸症候群」 などの診断を受け、 治療で休みがちとなり05年11月末に分限免職になりました。
 一度は再就職を果たしたものの、 病気が進行して失業。 無保険で窓口1万円を軽く超える治療代など、 生活が窮迫するのにそう時間はかかりませんでした。

原因・動機は経済問題が2割 

 貧困と社会的格差の新たな広がりの中、 経済的に追い詰められた働き盛りの若い世代が自殺するケースも急増。 切迫しても誰にも相談できず、 親が子を巻き込み心中するケースも少なくありません。
 警察庁の統計資料によると、 全国の自殺者は9年連続で年間3万人を超え、 大阪府内では06年1年間で1952人が自ら命を絶ち、 原因・動機では 「経済問題」 が394人で全体の20%を占めました。
 07年7月には、 東淀川区で生活苦を理由に、 一家5人が無理心中する事件が起きました。 残された携帯電話には、 「死ぬことを決めた。 ご飯も食べていけない」 などと打たれた未送信のメールが残されていました。

今こそ貧困の連鎖断ち切って 

  「まさに東淀川のケースと同じ結末になってもおかしくない状況でした。 こうした窮迫した生活相談の事例が、 急速に増えています」。 藤原さんは続けて指摘します。 「今こそ貧困の連鎖を断ち切って、 すべての人が憲法25条に保障された生存権の確保へ、 社会保障制度の改善を図る必要があります。 未来に希望と展望が持てる地域社会づくりへ、 政治が責任を果たすとともに、 関係者すべてが手を結び取り組むことが求められています」
 藤原さんの支援を受けて、 生活保護の受給が認められるようになった樋口さん一家。 一人娘は4月には地域の小学校に通うことになっています。 「再スタートに向けて、 しっかり治療を受けて健康を取り戻したい」 と喜ぶ潤一さん。 最後にこう言いました。
  「どんなに貧しくても構いません。 家族そろって暮らしていきたい、 それだけが願いです」

記者メモ
 帰りの電車で、 一家の暮らしを追い込んだ原因は何かを考え続けました。 大黒柱の夫が病気で仕事を失うと、 蓄えが底をつくのに時間はかかりません。 もちろん何も手を打たなかった訳ではなく、 一度は再就職を果たしアルバイトも見つけました。 いよいよ生活が困窮すると、 他党の4人の市議や市役所にも相談。 しかし救いの手は差し伸べられませんでした。
 痛感するのはケガや病気、 失業などをきっかけに、 いとも簡単に貧困に落ち込んでしまう格差社会の広がりと、 空洞化した社会保障システムの現実です。 まじめにコツコツ働いても豊かになれず、 SOSさえ届かずに死を選ぶしか方法のないところまで追い詰められる 「貧困と孤立」 の問題に、 社会がどう向き合うか、 正面から問われているのではないでしょうか。
 深夜、 誰もいない真っ暗な道を、 飲み水をくむため、 近くの神社まで娘の手を引き何度も往復した一家。 貯金が底をつき頼れる人もいない。 家族を追い詰めた絶望感と、 泣きながら 「死なないで」 と叫んだ子どもの胸中に思いをめぐらせたとき、 「この深刻な現実が自然現象であるはずがない」。 そんな思いがこみ上げてきました。
 本連載では、 府内で広がる 「貧困と格差」 の実態と貧困を生み出す根源に目を向けるとともに、 憲法25条 (生存権) と憲法13条 (幸福追求権) に基づき、 「貧困の連鎖」 を断ち切ろうと動き出した、 人々の取り組みを追います。 (高)

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投稿者 jcposaka : 2008年02月21日

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