シリーズ明日をみつめて 貧困打開への道 卒業アルバムが買えない
思い出も取り上げられる
府南部の私立高校に通うA君 (16) =大阪市=は介護ヘルパーとして働く母親 (45) と、 妹 (15) の3人家族。 母親の収入は月額14万円に満たず、 A君のアルバイトで授業料の半分を工面しています。
運動系と文化系2つのクラブを掛け持ちするA君。 昨年秋から、 午後7時から2時間だったアルバイトを10時半まで延長し、 日曜日も働くことも多くなりました。 「やっぱり自宅に戻るとヘトヘトで、 なかなか勉強も手につきません。 でも、 妹が4月に高校に進むので、 少しでも家計の足しになればと思って…」。
4人に1人だけ参加の修学旅行
府内のある定時制高校。 今月卒業生を送り出したB先生(53)のクラスでは、 昨年度の修学旅行に参加したのは、 クラス20人うちわずか5人。 仕事を休めないという生徒がいる一方、 旅行参加をキャンセルし、 積み立てていた旅行代金を生活費に回してしまう生徒も。
ほぼ毎日のように、 給食用牛乳の残りをペットボトルに詰めて帰る生徒がいました。 「生活保護受給世帯で家族のために持ち帰っていたのでしょう。 生徒の多くが携帯電話を所有し身なりも清潔。 表面的には見えにくいですが、 じわりと広がる貧困の実態がある」 と指摘します。
「希望するすべての生徒に、 卒業アルバムが渡るようにすべきだ」。 昨年12月20日に開かれた豊中市議会の本会議。 日本共産党の出口文子市議は一般質問で、 「経済的理由で卒業アルバムを買えない生徒に支援を」 と市の姿勢を質しました。
生徒数減少に伴う単価増やカラー化などによって、 中学校の卒業アルバム代は高いところで1万円ほどに。
「心が痛む思い」というのなら
豊中市の場合、 06年3月の中学校卒業生約3150人のうち、 40人が卒業アルバムを申し込みませんでした。 市教委の調査では、 アルバムを買わなかった理由として、 不登校や年度途中の転校などに加え、 「経済的理由」 が数人ありました。
市当局は議会の答弁で、 「心が痛む思い」 としながらも、 アルバム代補助は困難と回答。 出口市議の再質問に対しても、 「教育の機会均等の確保と、 子どもたちの健やかな成長を願う観点から、 就学援助や生活支援、 援護制度などの周知を図りたい」 と述べるにとどまりました。
かつて就学援助費で支給されてきた公立小中学校の卒業アルバムは、 04年度の制度改悪で、 実費負担になりました。
豊中市内で大学生の長女と二女、 中学3年の長男を育てる母親 (44) は、 椎間板ヘルニアの持病があり、 注射で痛みを抑えながらの勤務。 食べ盛りの子どもを抱え、 赤字すれすれの家計から削れるものは何もないと話す女性。
「卓球部の部長として頑張り続けた長男にとって、 3年間の思い出が詰まったアルバムです。 何があっても手渡してあげたいものなのです」
教職員が手作りの卒業アルバム
府北部。 3月3日に開かれた府立高校定時制の卒業式で、 卒業生全員に教員手作りの卒業アルバムが贈られました。
「式当日まで知らされていませんでした。 当然ないものだと思っていたのでびっくり」。 生徒会長も務めた19歳のM君は、 本当にうれしかったと振り返ります。
同校では近年、 参加者減少などを理由に修学旅行やアルバム制作を見送ってきました。
府立定時制高校の再編計画をめぐり、 「母校を守れ」 と運動にも取り組んできた生徒たちは、 思い出づくりにと修学旅行を企画。 学校側の 「卒業生の半数以上が参加すること」 とした条件をクリアし、 昨年、 1泊2日の旅行を成功させました。 手作りのアルバムは、 そんな生徒たちへの餞別として企画されたもの。
「4年間の思い出がよみがえります」 と、 アルバムを見たM君の母親が語ります。
「わが子の姿はもちろん、 同じように悩みや苦しみを乗り越えながら一緒に歩んだ同窓生との思い出は、 一生の宝になると思います」
子どもの学習権守る定時制学校
大阪府教委の高校再編によって、 府内29の定時制高校のうち14校が今春、 廃校になります。
B先生が語ります。
「経済的問題や不登校など、 多様化する生徒と家庭環境の中で、 子どもたちの学習権を守るためにも、 定時制の灯を守らなければなりません」
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投稿者 jcposaka : 2008年03月13日