2月府議会 財政再建言うなら同和の無駄一掃を 共産党が完全終結を主張
橋下府知事「ゼロベースで見直す」
同和問題で非科学的答弁繰り返す
国の同和対策特別措置法の失効 (02年3月末) 後も、 大阪府は、 「部落解放同盟 (解同)」 言いなりの同和対策事業を 「人権施策」 の名で続けています。 2月府議会で日本共産党は、 財政再建というなら、 毎年40〜50億円もの同和行政の無駄遣いを全面的に見直し、 同和行政を終結させるべきと厳しく追及しました。 これに対し、 橋下徹知事は同和対策事業について 「ゼロベースで見直す」 と答弁。 一方で、 「同和問題は全く解決していない」 「解放同盟の活動を全否定するのはおかしい」 など、 非科学的な認識もあらわにしました。 一連の答弁内容は、 橋下知事の 「ゼロベースでの見直し」 の成否にもかかわる問題。 民権連 (民主主義と人権を守る府民連合) は、 知事との懇談を申し入れ、 見解をただすことにしています。
日本共産党の黒田まさ子議員は代表質問 (7日) で、 同和対策特別措置法制定 (69年) 以来、 大阪では33年間に2兆8116億円を投入して実施された数多くの対策や、 長年の 「差別解消」 「平等」 を求める府民的な運動とあいまって、 同和地区の実態がなくなるなど 「部落差別は基本的に解消されることろまで到達している」 と主張しました。
黒田議員は、 「これ以上、 同和行政を続けることは、 かえって 『逆差別意識』 を生じるなど、 同和問題解決にとって有害」 と述べ、 不公正を直ちに改め、 同和行政を完全終結するよう求めました。
これに対し橋下知事は、 「同和問題はまったく解決されていない。 一般対策により課題解決に取り組む」 「差別意識は私の周りで現にある」 などと答弁しています。
また、 同党の堀田文一議員は一般質問 (10日) で、 特定の民間団体である 「解同」 が膨大な同和対策事業を食い物にし、 利権・特権を得てきたことが、 「解同」 幹部が相次いで逮捕されてきた一連の事件の本質だと強調。 「解同」 と一体ともいうべき府人権協会への補助金などの同和対策事業は 「特定の運動団体を応援し、 行政をゆがめ、 差別を助長するだけ。 直ちにやめ、 暫定予算からも外すべき」 と迫りました。
橋下知事は、 「府民にとってわかりにくいものは、 6月までに検証・精査する」 と答える一方、 「解放同盟を全否定するのはおかしい」 「利権と暴力というが、 全く証拠も根拠もない」 などと言葉を荒らげました。
民権連
同和完全終結へ懇談の場を
民主主義と人権を守る府民連合 (民権連、 東延委員長) は、 橋下知事就任後の2月15日に提出した要望書で、 部落問題が基本的に解決した今日、 『部落』 や 『同和』 を冠した行政・教育・審議会・運動などの完全終結ことこそが時代の要請であり、 府民や地域住民の願いに応えること」 と述べています。
さらに要望書で
は、 部落問題は封建的身分に起因する社会問題で、 封建的身分差別の残滓 (ざんし、 後遺症) が部落問題の本質だと指摘。 「生活上の格差の是正と、 『部落』 や 『同和』 が問題にされなくなる状態を作りだすことで基本的に解決されるもの」 と強調。 同和行政の完全終結に向けた知事との懇談の場を設けるよう求めています。
国民的合意に照らしてどうか
伊賀興一弁護士
同和行政をめぐる橋下知事の答弁の中で、 重大だと私が思うのは、 「行政が積極的に差別解消に向けて一定の施策を講じることは、 何ら問題がない」 と彼が断言している問題です。
「一定の施策」 という場合、 その目的や手段、 方法について、 行政としての自主性や公平性、 公開性が検証されるべきです。 ところが、 橋下知事の答弁には、 これまでの同和行政の総括や反省がありません。 また、 府民に対して大阪府は、 どのような同和問題の解決の展望を示すのか。 知事の答弁からは何も伝わってきません。
部落問題の解決における行政の役割は何か。 それは、 いわゆる差別意識が生じる土台としての劣悪な生活環境や格差の解消という実質的な平等実現のための条件整備に徹し、 差別と貧困の悪循環を断ち切ることにあります。
政府は、 01年度末で同和行政根拠法を失効させた理由として3点を挙げています (総務省発行 「同和行政史」)。 第1は、 国や地方公共団体などの長年の取り組みで、 住宅や道路などの物的な生活環境の改善が進み、 全体として同和地区を取り巻く状況が大きく変化し、 同和地区と周辺地区の格差は見られなくなったこと。
第2に、 こうした下で、 特別対策を継続することは、 同和問題の解決に必ずしも有効ではないということ。 第3に、 経済成長にともなう産業構造の変化や都市化などで人口移動が起こり、 いわゆる同和地区で大規模な混住が進んだことで、 同和地区・同和関係者に対象を限定した施策を継続することは困難かつ適切でないということです。
これらの3つの理由は、 69年の同和対策事業特別措置法以来、 33年にわたる同和特別対策の到達点を踏まえたもので、 極めて合理的で、 国民的なコンセンサス (合意) と言えます。
橋下知事は「差別意識」の存在を根拠に、「同和問題が全く解決していない」 と発言しています。この点では、 地域改善対策協議会 (地対協) の意見具申 (86年) が提起した 「新たな差別意識を生む要因」 が重要です。
地対協の意見具申は、 民間運動団体の威圧的な態度に押し切られて不適切な行政運営を行うような行政の主体性の欠如など4つの要因を示し、 それらが行政への批判や不信、 同和問題そのものへのマイナスイメージを生んでいると指摘しました。
要求されるがままの行き過ぎた同和行政が新たな差別意識を生み、 それを同和行政継続の根拠にすることは、 新たな差別を助長する。 つまり 「差別をなくす行政」 が差別要因を生み出してしまう。 今なお同和行政を継続する有害性は、 ここにあるのです。
橋下知事の答弁は、 同和問題での行政本来の役割から逸脱したものだと言わざるをえません。
【資料】
同和行政での知事答弁
同和行政問題での橋下徹知事の答弁 (大要) は次の通りです。
黒田まさ子議員の代表質問に対する答弁から (3月7日)
本府における特別措置としての同和対策事業は、 平成13年度末で終了した。 しかし、 差別意識はまだ残されており、 同和問題はまだ解決されていない。 ゆえに一般対策により、 その課題解決に取り組んでいる。
同和問題は解決されていないというのは、 私の実体験だ。 私はいわゆる同和地区というところで育ったが、 現在、 同和問題は全く解決されていないと私自身が認識しているので、 同和問題は全く解決されていない。
府同和問題解決推進審議会の提言 (2月) の趣旨を踏まえ、 ゼロベースで事業の見直し・点検を行い、 同和問題の解決に向け効果的に取り組む。
本当に差別意識があるのかどうかを、 肌身で感じている人たちの話を聞いてから、 本当に同和問題が解決されているのかどうかを判断していただきたい。
ただし、 同和問題が解決されていない、 差別意識があるからといって、 特別な優遇措置を与えていいのかは、 全く別問題。 一から総点検する。 一般施策に名を借りた、 特別措置法と同じような形で残っているのであれば、 非常に府民にとって分かりにくい。 府民にとって分かりやすい形で一般施策化をきちんとやる。 ただし、 同和問題が解決されたということは、 全くの事実誤認、 認識不足だ。
堀田文一議員の一般質問に対する答弁から (3月10日)
今回の予算は、 当面の義務的経費を中心とした7月末までの暫定予算として、 最低限必要な予算を計上しており、 特定の団体を応援するものではない。 今後、 6月の本格予算の編成において、 ゼロベースから事務事業を見直し、 必要性・効果を府民の目線で十分精査していきたい。
「解放同盟」 の活動を全否定するのは、 おかしい。 「解放同盟」 の活動は府民の視点からわかりにくい点があるかと思うが、 「解放同盟」 があったからこそ、 不合理な差別が解消されてきたのも厳然たる事実だ。
私は、 同和問題はまだ完全に解決されていないという認識の下、 同和事業等を含め、 府民の目線から見て分かりにくいものは、 徹底して見直す。
なぜ差別が生じてきたのか、 行政が不合理な差別にどう対応してきたのかを考えれば、 行政が積極的に差別解消に向けて一定の施策を講じることは、 何ら問題ない。 一般の国民もそれに何も疑問を持っていないと思う。
「解放同盟」 が利権や暴力だと言い切るのは、 私の法律家としての感覚からすれば、 全く証拠も根拠も何もない。 私も、 そういうつながりや事件があったことも知っている。 そういうことがなく、 本当に同和問題の解決に取り組んできたことも知っている。 一面的な側面をとらえることなく、 きちんと 「解放同盟」 の活動を真摯 (しんし) に見ていただきたい。
投稿者 jcposaka : 2008年03月20日