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シリーズ明日をみつめて 貧困打開への道4 所得一般の4割以下・母子家庭に逆風

2008年04月11日

切らないで命綱

 午後10時、 飲食店のアルバイトを終えたAさん (40) が、 小学4年から高校2年までの1男2女が待つ自宅へと急ぎます。 時給900円。 立ち仕事で毎日足が棒になるというAさん。 「お姉ちゃんが下の子の面倒も見てくれるから安心して働くことができます。 子どもたちの存在と成長が心の支えです」
 21歳で結婚し翌年長男を出産。 「月1回の外食と年に一度は旅行へ」 ―当時交わしたささやかな約束は果たされないまま元夫の浪費癖がエスカレート。 給料は一切家計に入れられず、 不要な高額商品を次々と購入、 1年で自家用車が3回買い換えられたことも。 3人目の出産後、 「子どもたちに食べさせるため」 に初めて消費者金融へ。 そんなAさんを精神的に追い詰めたのが元夫の執拗な言葉の暴力でした。
 6年前に離婚が成立し、 一家の大黒柱に。 保険販売や広告営業など当時のパート収入は多いときでも8万円。 思うように働けないシングルマザーにとって頼りの綱・児童扶養手当を合わせた13万円が生活費のすべてでした。
  「つらかったのは、 子どもたちに我慢してもらったこと」

手当が減る

 給料日前はお金がなくなり、 もやしや大根だけの食事が続いたこともありました。 いつの間にか消費者金融の借金は4社に増え、 返済のために別の金融業者から借金を重ねる悪循環。 そんな生活が3年続き、 心身ともに限界が訪れました。
 福祉事務所で窮状を訴えました。 「簡単に受給できないと思っていました」。 半ばあきらめていた生活保護申請が認められた時、 「助かった。 心からそう思いました」。
 生活保護は、 憲法第25条で保障された 「生存権」 を守る制度として1950年に発足。 困窮する人の最後の受け皿として 「セーフティネット」 とされます。 ところが扶助基準の切り下げや、 老齢加算、 母子加算の廃止・減額など生活を圧迫する流れに、 社会保障制度の後退を懸念する声が広がっています。
 3人の子どもを持つAさん世帯の生活保護基準額は約24万円。 アルバイト収入17万などを差し引いた約5万5千円が保護費として毎月支給されます。 ところがこれまで上乗せされていた母子加算は、 16歳を超えた長男の分がすでにゼロになり、 長女と二女の分もすでに減額が始まり09年度にゼロになります。
 今ではすべての借金を返済し、 働くことにも喜びを感じるというAさん。
  「いつも全力で走り続けるよう頑張ってきました。 シングルマザーの命綱、 母子加算と児童扶養手当は絶対に切らないでほしい」

政治の責任

 大阪府北部に住むシングルマザーのBさん (42) も6歳の長女、 13歳と18歳の息子の4人家族です。 持病のぜん息発作が出ると、 身動きできないほどの苦痛が長時間続くため、 フルタイムで働くことができず、 月額4万円のパート収入と生活保護で暮らしています。
 国が定めた最低生活基準は約24万円。 ところが高校を卒業した長男を世帯分離、 さらに母子加算減額などの影響で、 4月の生活費は約16万円に減ってしまいました。
 4月に専門学校に進学した長男の入学金など130万円の学費は全額借金。 新たに加入した国民健康保険料も家計にのしかかります。 気がかりは生活保護の母子加算廃止や、 母子家庭への支援策、 児童扶養手当削減の国の方針。
  「子どもが大きくなるにつれ、 逆に暮らしは厳しくなっています。 たった一人でも子どもを育てて頑張ろうとする母親を応援するのが、 政治の責任ではないでしょうか」

母子家庭の多くが貧困世帯

 母子家庭の貧困状況は深刻です。 全国の母子家庭は約75万世帯で10年前に比べ41%増加。 厚生労働省が昨年10月に発表した母子家庭の平均年収 (05年) は213万円で、 全世帯の平均所得の4割に満たないことが明らかに。 就業している母親は84%、 ところが就労に基づく収入額は171万円しかありませんでした。
 政府は母子家庭に支給されてきた児童扶養手当の削減 (02年度国会で自民、 民主、 公明の賛成で成立) や生活保護の母子加算の廃止を進め、 生活保護では16〜18歳までの子どもを養育している家庭に支給されてきた母子加算が07年4月に廃止され、 15歳以下も07年度から減額が始まり09年度に全廃される予定です。

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投稿者 jcposaka : 2008年04月11日

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