残して!府立国際児童文学館 橋下知事 「図書館との統合」 言うが… それで子どもが笑うのか
本・文化・子ども ―未来へ―
世界に誇る貴重な財産
緑豊かな万博記念公園 (吹田市) にある大阪府立国際児童文学館の 「見直し」 を橋下徹府知事が打ち出していることに対し、 存続を求める声が広がっています。 同館は子どもの本に関する資料・研究・情報センターとして、 世界でも珍しい拠点施設。 3月に現地視察した橋下知事は、 「同じような機能の所に統合した方がいい」 と府立図書館などに集約化する考えを示しています。 しかし、 図書館の枠に収まらない専門的な機能や使命を担っている府民の共有財産を手放して、 果たして本当に 「子どもが笑う」 のでしょうか。
日本共産党大阪府議会議員団が3日、 国際児童文学館を訪ね、 向川幹雄館長らの案内で館内を詳しく見学しました。
所蔵されているのは、 明治時代から現代まで、 日本で出版された子どもの本・雑誌や、 子どもの本にかかわる資料など約70万冊。 毎年、 児童文学関連で出版される約1万5千点もすべて集めます。
1階の 「こども室」 は、 子どもの本やマンガ、 児童文学の研究書など約2万冊が並び、 自由に読んだり、 借りることができます。 館内の書庫に収められた貴重な所蔵資料を読むのは、 2階の 「閲覧室」。 ざっと見た目には、 橋下知事のように 「図書館と似たようなもの」 と映るかも知れません。
収集保存と研究、 整理・公開が使命
「当館は、 図書館ではありません」 向川館長は強調します。 新たに収集するものも含め収集資料の約6割が出版社や個人からの寄贈です。
国際児童文学館では本や資料は永久保存し、 整理・公開することを大きな使命としてきました。 「公の施設」 としてその存在意義が理解されてきたからこそ、 「大阪府で後世に伝えてもらいたいと、 出版社からも無償で書物や資料を提供いただいてきました。 これは図書館では不可能なこと」 と力説します。
また国際的な研究センターとして、 専門員 (研究職) が国内外の児童文学や児童文化を研究し、 その成果を検索システムの開発など機能充実、 サービス向上にも役立てています。 所蔵資料が年代順に保存されているのは、 子どもたちを取り巻く文化を時代ごとに研究するため。 図書館の分類法 (日本十進法) では、 こうした独自の工夫は成り立ちません。
文化として後世に残していきたい
国際児童文学館では、 明治・大正・昭和初期などに出版され一般には入手困難な本も多数所蔵しています。 例えば 『日本一ノ画噺 (にほんいちのえばなし)』。 1910年代に、 丸善の前身である中西屋書店 (東京) が発行したシリーズ絵本で、 児童文学作家の巌谷小波 (いわやさざなみ) らも執筆に参加した作品です。
その現物が、 専用のケースとともに保存されています。 「本は文化。 図書館なら捨ててしまう箱やカバーなども含め、 出版されたままの状態で残します」 と、 主任専門員の小松聡子さんは語ります。
「子どもの本と文化を未来につなぐため、 100年、 200年先の日本に向けた事業を私たちは展開しています」 と誇りを込めて向川館長。 「もし仮に図書館と統合されるようなことがあれば、 児童文学館を育てていただいたネットワークや、 当館特有の機能は発揮できません」 と、 現地での存続を訴えます。 (2面に関連記事)
大阪府立国際児童文学館
児童文学研究者の鳥越信氏から、 児童文学関連のコレクション12万点を寄贈されたのを機に、 84年5月、 日本初の国際的な子どもの本の資料・情報・研究センターとして開設。 府が全額出資して80年に設立した財団法人大阪国際児童文学館が管理運営し、 06年から同財団が指定管理者に指定されています。 開館時間は午前9時半〜午後5時。 大阪モノレール 「公園東口」 駅下車、 徒歩10分。
投稿者 jcposaka : 2008年04月11日