府「財政再建」案 ワッハ上方も「移転・縮小」
府民が育てた施設なのに
大阪文化の伝達へ存続を
府の改革プロジェクトチームの財政再建策で、 「移転・縮小」 が打ち出されたワッハ上方 (府立上方演芸資料館)。 漫才師の喜味こいしさんが 「ワッハ上方がなくなれば、 大阪の笑いがなくなる」 と声を上げるなど、 存続を求める声が広がっているのは、 かけがえのない公共施設として、 ワッハ上方を府民や演芸関係者が育ててきた経過があるからです。
5万7千点の府民の宝
ワッハ上方が開館したのは96年11月ですが、 設立のきっかけは、 今から約20年前にさかのぼります。
89年に、 漫才師の砂川捨丸さんの遺族が、 60年間舞台で使われた鼓を、 夢路いとし・喜味こいしさんが漫才作家の秋田實さんの直筆台本を府に寄贈。 これを契機に、 上方演芸関連の貴重な資料が府に集まるようになりました。
府は90年に 「上方演芸保存振興検討委員会」 を設置し、 同委員会が92年に中川和雄知事 (当時) に、 「上方演芸資料館」 の設置を提言。 府は94年に策定した基本計画で、 資料館の意義を、 こう高らかに宣言しました。
「上方演芸は、 大阪特有の笑いの文化であり、 庶民文化の代表といえるもの」 「上方演芸が時代の変遷につれて風化することのないよう、 上方演芸に関する資料等を収集保存して、 後世に引き継ぐとともに、 時代にふさわしい新しい上方演芸の創造を促し、 大阪文化のより一層の進行発展に寄与しようというもの」
開館までに寄贈・寄託された資料は約2万6千点。 現在約5万7千点を収蔵しており、 寄贈者総数は929人で、 府民が8割を占めます。
全国にも例がない無料視聴
収蔵資料には、 「爆笑王」 と呼ばれた初代桂春団治、 曾我廼家五郎の直筆台本など貴重な資料が数多く含まれており、 展示室でも展示されています。
「演芸ライブラリー」 は、 在阪放送局の演芸番組を無料視聴できる、 全国にも例のないコーナーです。 毎年、 放送局から無料で映像・音声の提供を受け、 これまでに2665番組を府の貴重な記録資料として保存活用。 「放送文化とともに発展してきた上方演芸。 放送局やプロダクションからの無償提供は、 公共施設だからこそ可能」 と学芸員の古川綾子さん (近畿大学非常勤講師) は強調します。
こうした収集・展示機能と一体に、 ワッハホールや上方亭での公演が行われ、 上方演芸の発展・振興に貢献した演芸人を知事が顕彰する 「上方芸能の殿堂入り」 も続けられるなど、 「大阪文化の再発見と情報発信の拠点施設」 (伊東雄三館長) となっています。
日本共産党は府議会でワッハ上方の設立に賛成するとともに、 施設の発展や集客の向上などへ具体的な提案を行ってきました。
00年9月府議会では西原みゆき議員 (当時) が、 「上方文化の埋もれた資料を掘り起こし、 展示し、 府民にその時代に立ち戻って上方文化の歴史を親しんでもらえる施設として発展してほしい」 と強調。 専門の学芸員を配置すべきと求めました。 その後2人の学芸員が配置されています。
不正確だった赤字報道
就任と同時に 「財政非常事態宣言」 を発表した橋下知事が、 最初に視察したのがワッハ上方。 視察当日の2月17日、 マスコミが殺到しましたが、 報道では 「ワッハ上方 年間4・3億円の赤字」 などの見出しが躍りました。
「赤字報道は不正確です」 と指摘するのは伊東館長。 ワッハ上方は06年度から 「ニューウェーブ日東大阪 (NPO法人と民間企業の共同企業体) が指定管理者となって運営しています。 4億3千万円の大部分は、 吉本興業グループ会社と契約した賃貸料約2億8300万円と、 府からの運営委託料約1億3千万円。 「ワッハは 『ハコモノ』 ではありませんし、 入館料・貸館の収入と府からの委託料収入の中で赤字を出さずに運営しています」 と伊東館長は説明します。
10年度末まで
に他の施設へ
3月にはワッハ上方の運営懇話会会長の難波利三さん (作家)、 漫才師の喜味こいしさんが、 「上方演芸の拠点が失われようとしている。 大阪文化が次の世代へ伝達されるためにも存続を願う」 との要望書を府に提出。 ワッハ上方としても橋下知事に上申書を出し、 存続を求める署名運動も広がっています。
ところが改革プロジェクトチームの 「財政再建プログラム試案」 では、 ワッハ上方について 「寄贈資料の保存・展示は必要」 としつつも、 演芸ホール機能は他の施設で代替可能と明記。 展示機能と演芸ライブラリー機能だけを残し、 10年度末までに他の府有施設に移転・規模縮小することを打ち出しています。
-----ワッハ上方------
展示室開館時間午前11時〜午後6時 (入館5時半)、 休館は毎週水曜日 (休日の場合は翌日) と12月27日〜1月1日。 展示室入場料金は大人400円、 高校生・大学生250円、 小・中学生120円。 地下鉄なんば駅、 南海・近鉄難波駅ほか下車。
投稿者 jcposaka : 2008年04月17日