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編集長のわくわくインタビュー 舞台役者 森田かずよ さん

2008年04月25日

舞台に立ち続ける思いは―
私らしい表現見つけたくて

 重度障害を持つ、 片足義足のダンサー、 森田かずよさん。 二分脊椎 (せきつい) 症による脊髄 (せきずい) 損傷状態で生まれ、 医者は両親に短命を宣告。 18歳の時に芝居に目覚め、 数多くの公演に出演し、 30歳になった今も、 「自分にしかできない表現」 を求めて舞台に立ち続けている森田さんを訪ねました。 (聞き手 佐藤圭子編集長)

   森田さんのダンスとお芝居 (20日、 大阪市港区内で行われた森田さん所属の劇団 「夢ゆめ歩行虚構団ほこうきょこうだん」 の公演)、 初めて拝見しました。 どんなステージかしらと思って行ったんですが、 「くの字」 の体に片足が義足で、 見事にバランスをとりながら、 ゆっくりと長い手足で踊られる姿がとても印象的でした。 お芝居の 「銀河鉄道の夜」 も少年ジョバンニの孤独な内面がよく出ていて。  お芝居を始められたきっかけは何だったんですか? 森田 高校時代、 学校を休んだ日に家でテレビを見ていたら、 宝塚歌劇団の 「ブラックジャック」 をやってたんです。 きらびやかな宝塚の中でも異色の作品で、 命の大切さを伝える作品を、 あれだけストレートに説教くさくなく伝える舞台と役者の存在感に圧倒されてしまって。

私が生まれたことに意味がある

 当時、 仏教系の高校に通っていて、 毎日2回の礼拝時に、 「日々の糧」 という語録集を読んでたんですが、 その中に 「私は無駄にこの世に生まれてきたのではない。 私が生まれてきたのは、 私でなければならない仕事が何か一つこの世にあるということだ」 というのがあって、 あーその通りやなあと思ったんです。 私にも一人の人の気持ちや心を変えたりすることが人生の中で一回はあるかも知れない。 それなら、 この私の体を使って何かしたいなあと思い始めたんです。
 芸大に行こうと思って電話してみると、 障害を持っていることを伝えると試験を受けることさえ断られました。 悔しかったですね。 それで別の大学に行って演劇部に入ったんです。
   それからずっと舞台活動を続けてこられた。

芝居を通して出会いが増えた 

森田 大学時代に半月間、 大阪から京都に通って狂言も習いました。 毎日が新たな発見で、 あーイギリス人にとってのシェイクスピアと同じように、 これが日本人にとっての芝居の原点なんだと思いました。
 芝居をやってると、 本当にいろんな人と出会います。 同じ障害者の中でもやり方が全然違う。 私はダンスをつくるときはストーリーをつくりますが、 相手との関係や行為の中でダンスをつくるというのもあるし。
    「かずよ」 というお名前は、 誕生日にちなんでいるそうですね。
森田 8月14日生まれなんですが、 両親は医者から 「すぐ死ぬ」 って言われて、 母が 「それならこの日を忘れないように」 と、 一と四でかずよ、 加津世とつけたそうなんです。
   それが今、 30歳。 舞台出演だけでなく、 学校公演や車いすダンス大会での入賞、 各地での講演活動など、 実にいろんな活動をしてこられましたね。 今は英会話の講師のお仕事も。 これからの夢は?

欠けていることを認識する能力

森田 私は自分が障害者で、 もともとアンバランスだということを自覚しています。 肺活量も普通の人の半分の700tしかないのであまり大きな声を出せません。
 でも完璧な人間はいないし、 自分が欠けていることは悪いことでも何でもない。 むしろそれを認識するのは人間として必要な能力じゃないかって思うんです。
 確かに年々体にガタがきてます。 特に季節の変わり目など体温調節がうまくいかず、 変に暑かったり寒かったり。 いまも母に一日2回導尿をしてもらってるし、 私は本当にいろんな人に支えられて生きています。
 自分が自分であること、 謙虚でいること、 いろんなことに感謝して生きながら、 いろんな人と出会って自分を磨いていきたい。 そして、 「あなたにしかできない」 と言われるような舞台をつくっていきたいですね。
 
 森田かずよさんが出演する公演の日程 循環プロジェクト公演 「にあいこーるのじじょう」  28日(月)午後7時、 29日 (火)同4時、 Studio dB (JR・地下鉄新大阪駅など下車、 元東淀川勤労者センター内)。 ダンス、 美術、 音楽が相互にかかわりながら創りだす舞台芸術。 一般2千円、 学生1800円、 障害者1500円、 障害者+介助者2千円 (当日すべて2500円)。 問い合わせ先06・6990・7290Studio dB。

もりた・かずよ 1977年生まれ。 18歳より芝居を始める。 障害者のパフォーミングを応援するプロジェクト 「CONVEY」 主宰。 03年、 車いすダンス大阪グランプリに出場し、 3位入賞。 コンテンポラリー、 ジャズ、 フラダンス、 仕舞など、 多様な身体表現に取り組む傍ら、 各地で講演も。 大阪市天王寺区在住。

投稿者 jcposaka : 2008年04月25日

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