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生活豊かにするツール 人と街にやさしい乗り物 自転車文化タウンづくりの会

2008年05月16日

 手軽に乗れて、 経済的で環境にも優しい―そんな自転車の多彩な役割に着目し自転車文化の普及や安心・安全の交通環境を目指す民間団体 「自転車文化タウンづくりの会」 が23日、 大阪市内で設立されます。 車優先社会の中で、 都市機能の中心に自転車を位置付けた、 環境や人に優しい新しい 『まちづくり』 が同会の目標。 調査研究や商品開発、 御堂筋の自転車パレードや自転車専用道充実などソフト・ハード両面から自転車環境の向上を目指す大阪で初めての試みです。

 「きれいやなー」。 先月18日、 大阪府島本町の淀川河川敷堤防。 満開の菜の花の中を、 10台の自転車が風のように颯爽さっそうと走り抜けて行きました。
 一行は、 自転車文化タウンづくりの会・準備会が企画した 「自転車まち巡りツアー」 の参加者ら。 出発地のJR高槻駅から 「西国街道」 を東に向かい、 桜井駅跡や水無瀬離宮など旧街道沿いの史跡、 わら焼きで有名な淀川河川敷の鵜殿地区など約16`を4時間かけて楽しみました。
 マウンテンバイクなどスポーツ車からママチャリ、 折りたたみ式や貸し自転車など車種はさまざま。 ツアーを立案した同会発起人のひとり、 川内義行さんは、 「自転車で走れば新しい世界の発見があります。 自転車はまさに生活を豊かにするツール。 多くの人にその魅力を伝えていきたい」

普及率全国1

 統計資料などによると大阪府内の自転車保有台数は725万台(06年)。 赤ちゃんを含め1千人に850台の自転車がある計算で、 人口当たりの普及率は全国1位。一方で、自転車同士の衝突や人身事故の急増、駅や繁華街での迷惑駐輪や放置自転車問題も深刻な状況にあるのも大阪の特徴です。
  「都市交通体系における自転車の位置付けは極めて不十分。 法律上は軽車両で車道の左側通行が基本ですが、 自動車からも歩行者からも 『危険な存在』 として扱われ、 迷惑駐輪は目を覆うばかりの状況です」。
 そう指摘する川内さんは、 「自転車を交通政策の脇役から主役に押し上げるような官民両面での積極的な対策が求められている」 と話し、 同会事務局の小平智子さんは、 「自転車の置かれた現状を嘆くだけでなく、 個人や自転車グループが手をつなぎ情報発信や具体的な行動を通じて現状改善につなげていきたい」 と、 会設立に至る背景を説明します。

取り組み多彩

 同会は06年9月に準備会が発足。 ▽環境性▽経済性▽健康増進▽利便性▽人間発達―など自転車が持つ多面的な魅力を 『自転車力』 と位置づけて、 課題解決やまちづくりをテーマに議論を重ねてきました。
 自転車の走行環境を見直し、 地域の魅力を再発見する取り組みとして、 07年9月に 「自転車まち巡りツアー」 を開催。 月1回の定例化を目指しています。 同年12月にはミニシンポジウム 「自転車まちづくり交流イベント」を開催し、 自転車専用の地図づくりなど各地の活動を交流しました。
 この時、 一言カードで寄せられた声を基に、 @自転車市民の輪を広げる、 A自転車利用環境を見直す調査・研究、 B自転車を活かしたまちづくり、 C活動成果の社会還元―の4つの柱で行動計画を立案。 23日の設立総会で決定し、 今後具体化する計画です。

【自転車文化タウンづくりの会設立総会】
 23日 (金) 午後6時半〜8時、 大阪市西淀川区千舟1のあおぞらビル3階会議室 (JR東西線御幣島駅から徒歩3分)。 参加希望者は (財) あおぞら財団事務局06・6475・8885へ。

大阪大学大学院工学研究科
新田保次教授(交通計画・地域計画)の話

 自転車は子どもが最初に手にする乗り物であり、 成長段階ごとに増える人と自然、 街とのコミュニケーションは人間発達にも不可欠な要素です。 生活必需品としての価値に加え、 燃料を消費せず環境に優しい、 自転車は地球環境や人づくりに最も適した 「乗り物」 だと言えます。 ところが日本では 「おもちゃ」 の扱いが長く続き、 「交通手段」 としての位置づけは極めて不十分でした。
 世界随一の自転車大国オランダでは、 アムステルダムやフローニンゲンなどの都市で自転車中心の街づくりが取り組まれ、 特に1990年代に建設されたニュータウン 「ハウテン」 (400f・3万2千人) では、 街の外周に環状自動車道を設ける一方、 中心部は網の目の自転車専用道のみを配置。 従来の車優先の都市計画から脱却し、 自動車に依存しない人間と環境優先のコミュニティが形成されました。
 日本、 とりわけ大阪においても歩行者・自動車と共存した自転車優先の新しい 「まちづくり」 が、 交通政策や都市計画にとっても重要な課題となっています。 自転車が持つ多様な役割を生かした文化的な都市づくりを目指し、 市民、 事業者、 行政、 研究者らの連携と実践が期待されます。

投稿者 jcposaka : 2008年05月16日

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