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民滅ぶ痛み 橋下「行革」を問う

2008年07月04日

@【障害者医療費助成】
知事への手紙、返事なく…
医療なしでは生きられない

 橋下徹知事は、 「大阪維新プログラム案 (維新案)」 で現行の福祉医療費助成制度 (高齢者、 障害者、 乳幼児、 ひとり親) について、 「持続可能な制度への見直し」 を掲げ、 1割負担の導入などを進めようとしています。 「基本的には障害者施策を堅持。 これは行政の最大の責務」 などと語る橋下知事。 しかし、 医療がなくては生きることができない重度障害者にとって、 助成制度改悪は死活問題です。

医療以外に多くの負担

 吹田市の万博記念公園の西にある 「あいほうぷ吹田 (吹田市立障害者支援交流センター)」。 重度重複障害者が対象で、 生活介護施設 (定員70人) と短期入所事業 (同5人) を実施。 吹田市から委託されて社会福祉法人・さつき福祉会が運営しています。
 生活介護事業に通所している一人、 佐々木誉 (ほまれ) さん (21) は自力での呼吸が困難で、 気管に穴を開けて呼吸しています。 夜間は人口呼吸器を設置。 口からの食事はできず、 胃に穴を開けてチューブで栄養剤を注入しています。
 数カ月に1度は体調を崩し、 入退院を繰り返しながらの通所。 ことし3月の医療費は肺炎による入院もあり、 77万3880円に。 助成制度のおかげで、 自己負担は1千円でした。 しかし医療費以外に、 吸引・吸入に必要な精製水、 気管の切開部に当てる無菌ガーゼは自己負担で毎月5千円以上。 退院後も2週間に1回は通院が必要なため、 介護タクシーの利用料もかかります。

実施時期を遅らせたが

 知事直轄の改革プロジェクトチームが4月にまとめた 「財政再建プログラム試案 (PT試案)」 は、 障害者はじめ4つの福祉医療費助成制度について、 ことし11月の改悪実施を打ち出しました。
 現行制度では府が市町村に財源の2分の1を補助。 患者自己負担は1医療機関当たり1回500円 (月2回まで)。 これを1割負担とし、 現行の負担上限額2500円は存続するものの、 差額は償還払いのため、 いったんは病院窓口で全額を支払わなければなりません。 所得制限も強化します。
 佐々木さんの場合、 1割負担が導入されれば、 医療費だけで月7万7388円となります。 佐々木さんの障害基礎年金は9万8千円。 市役所に手続きをして、 現金が戻るのは2カ月先です。
 橋下知事はPT試案を一部手直し、 「新制度」 の実施時期を 「09年度をめど」 と先送りしました。 しかし、 1割負担の導入や所得制限の強化をあくまで基本に、 実施主体の市町村と協議を進めるとしています。

家族会にも広がる不安

  「生きるために医療の必要な障害者の現状を知ってほしい」    「PT試案」 の発表を受けて、 「あいほうぷ吹田」 の施設長・竹内惠子さんは、 知事、 府議、 報道各社に医療費助成制度の存続を訴える手紙を出しました。
 同封したDVDは、 ことし2月に開いたチャリティーコンサートで上映した映像で、 佐々木さんはじめ入所者3人の、 施設での暮らしを紹介しています。
  「ことしは制度存続となりましたが、 1割負担化などの方向は変わらず、 家族会にも不安が広がっている」 と竹内さん。 「障害が重いほど、 家族も介助のために安定した収入の仕事に就けません。 負担増は重度障害者の命を縮めるもの」 と語ります。
  「私たちこそ、 助成制度の問題で発信しなければ」 という思いを込めて届けられた手紙とDVD。 「切迫した命にかかわる施策は行政がどんなことがあってもやらなければならない責務」 と言い切った橋下知事からの返事は、 いまだにありません。

    ◇ ◇

  「財政再建」 を理由に府民の福祉・医療・教育・文化の切り捨てを進める橋下知事。 それは一時的な 「我慢」 ではなく、 身近な住民サービスは市町村に任せ、 府は自らの役割を投げ捨てていこうというもの。 各分野の実態を追います。

投稿者 jcposaka : 2008年07月04日

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