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「融資が受けられない」中小企業支援策 改善急げ

2008年11月15日

 原油・資材の高騰に加え米国発の金融危機が日本経済に深刻な影響を与える中、 中小零細企業の廃業や倒産は過去最悪の状況です。 政府は物価高騰を価格に転嫁できない中小業者を支援する 「セーフティネット保証」 (5号) の対象を545業者と約3倍に拡げたものの、 新たに対象に指定された業者から、 「基準に合わず融資を受けられない」 「先の見えない不況で返済できるか不安」 などの声も。 セーフティネット保証が真に中小業者の資金繰りの命綱となるよう運用改善と合わせ、 日本経済の主役である中小企業と家計を暖める経済政策への転換こそ求められています。
  「建設分野は大手業者が次々倒産する緊急事態。 無事に年を越せるかも分からない状態ですが担当者の説明は厳しい内容でした」。 府内の信用保証協会にセーフティネット保証の相談に来た建築設計事務所の男性は、 融資は受けられそうにないと肩を落とします。
 主に住宅関連の仕事を手掛け、 建設不況のあおりでここ数年で仕事は3割以上も減少。 500万円の融資を希望したものの、 直近3カ月の平均利益率が 「前年同時期比で3%減」 に当たらないと融資担当者に指摘されました。 「この2年間で比較するとすでに10%売上は減っています。 とっくに廃業してもおかしくない状況なのに…」 とやりきれない様子です。
  「小売業の不振でモノの流れが止まったまま。 いったいいつまで続くのか」。 大阪市内で婦人服卸業を営む男性も、 信用保証協会に融資相談に訪れました。 「政府の指定業種拡大で、 やっと救われると思いましたが実際に融資が受けられるかは難しそう」 と顔を曇らせます。
 大阪市内で建設業を営む男性は1500万円の融資が希望額。 「3割も売り上げが減り、 経営は限界。 融資の申請は書類作りが大変で窓口に来たのも2回目。 申請も殺到しているようで融資も不透明です」 と疲れた表情で話しました。

指定業種拡大
緊急事態は続く

 セーフティネット保証の拡大は政府の緊急経済対策の一環で予算規模は6兆円。 売上減少または価格転嫁が困難だと市区町村が認定した中小業者が対象で、 民間金融機関から融資を受ける際、 信用保証協会が百%保証します。 既存の保証枠とは別に8千万円 (無担保) までの保証が可能です。
 新たに食品製造業や化学工業、 プラスチック製品製造業などや飲食店、 卸売業、 小売業を含む545業種へと拡大され、 全中小・零細企業の約3分の2を網羅。 全国商工団体連合会や日本共産党が繰り返し政府に対策を求めてきたものです。 先月31日から申し込みが始まっています。
  「中小業者の経営実態は極めて深刻。 経営状態を見てから融資可能か判断するような旧来の対応では遅すぎます。 素早い融資実行へ政府は金融機関への指導を強化すべきです」。 大阪市東住吉区のプラスチックフィルム加工業・藤川隆広さんが強調します。 今回の制度拡充で対象業種となり、 セーフティネット融資がすでに実行されました。
 業務で扱う石油由来のポリエチレン系素材は仕入れ価格が高騰する一方、 製品価格に上乗せはできず、 利益率は大幅に減少。 「構造不況に加え、 食品偽装が消費者心理をいっそう冷え込ませる中、 原油高と金融ショックが中小零細経営にとどめを指したのがいまの状況です。 まさに緊急事態ですから思い切って融資が進むように運用改善し、 赤字決算や税金を分納している業者も活用できるようにすべきです」

全業種を対象に
共産党が申し入れ

  「麻生内閣が発表した2兆円の支給金は単なるばらまきで、 個人消費か貯蓄に留まり効果はありません」 「高齢者の社会保障負担を減らすなど将来不安を取り除くことこそ消費を増やす道です」 「3年後の消費税増税計画は、 現場で苦しむ経営実態が見えていない証明だ」
 府内の金融機関や信用保証協会に融資相談に訪れた中小業者からは、 大本からの政治転換を求める声が聞かれました。
 日本共産党は先月、 穀田恵二、 井英勝両衆院議員らが経済産業大臣や中小企業庁長官らにセーフティネット保証の拡充を申し入れ。 全業種を対象にした特別保証・融資制度の創設や、 中小企業支援、 庶民減税・社会保障充実など消費購買力の回復に取り組むことが不況打開の鍵だと主張しています。


支援策 実効性あるものに
国民生活金融公庫(現・政策金融公庫)OB・前岐阜経済大学非常勤講師(資金調達論)
藤井康信さん

 政府が中小企業の資金繰り支援の対象を拡大したのは評価できますが、 本当に困っている企業に資金が行き渡るのかという問題が残ります。
 金融機関の中小業者への 「貸し渋り」 が指摘される中、 全国銀行協会の会長は日本共産党の佐々木憲昭議員たちの質問に対し、 「貸し渋りをしている意識はない」 「貸せないところには貸していない」 と開き直った発言をしました。 返済が見込めない企業に貸さないのは正しいとしても、 返済力の判断をどのようにしているのか。

数年来の赤字経営

 国税庁の調査ではここ数年、 法人の大半が赤字申告です。 融資審査の現場では、 利益から返済する 「利益償還方式」 が常識とされています。 赤字申告では 「返済能力なし」 と判断されます。
 しかし実際の中小業者は、 利益から返済しているのではなく、 「資金繰り」 をして返済しているのです。 返済できそうにないときは、 経営者や親族から借りるなどして、 金融機関の信用を必死に保っているのです。 大企業とは違うのです。
 中小業者の場合は、 赤字でも翌年は黒字になったり、 個人資産などでの返済力がある企業はたくさんあります。 逆に黒字でも返済できなくなる企業もある。 中小業者の経営に精通した専門家が、 温かい目で審査をしなければなりません。 中小企業を守り発展させる地域金融機関の活動を支援することが必要です。

国民の立場に立て

 政府は行財政改革と称して国民公庫を廃止し、 新公庫は貸し付け縮小と民営化の方向をとらされています。 私は昨年度まで大阪府中小企業支援センターの派遣・登録アドバイザーとして、 中小企業の資金繰りや開業の相談に乗ってきました。 橋下徹知事は今年度、 中小企業関連予算を削減し、 派遣アドバイザー制度を廃止。 商工会や商工会議所への助成金も削減されました。 これでは中小企業のための相談体制が弱体化します。 資金繰りに行き詰まれば、 高利貸しに手を出すか、 倒産するしかありません。
 日本の労働者の過半数は中小企業で働いています。 経営の維持は 「資金繰り」 次第です。 アメリカ発の金融危機から国民生活を守るためにも、 中小企業関連予算を増額し、 金融機関も国民生活に役立つ立場に立つことが求められます。

投稿者 jcposaka : 2008年11月15日

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