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橋下府政  高支持率・将来像・関西財界 虚像と実像にメス「明るい会」シンポは超満員

2009年04月23日

 明るい民主大阪府政をつくる会 (明るい会) が19日午後、 府政シンポジウム 「橋下府政1年  その虚像と実像」 を開きました。 会場の大阪市中央区・OMMビル会議室には、 300の座席数を上回る380人が参加。 用意された資料集が足らなくなるなど、 超満員となりました。

 シンポジウムは、 就任から1年が過ぎた橋下徹知事への支持率が高い中、 2月府議会の結果を踏まえ、 深刻化する府民生活の実態と、 それに追い討ちをかける橋下 「行革」 と狙いや関西財界との関係を明らかにしようと開かれたもの。

 主催者あいさつした、 明るい会の川本幹子代表常任幹事 (新日本婦人の会府本部会長) は、 「橋下知事は高支持率をバックに府民犠牲を進めてきたが、 府民の世論と運動で2月府議会では府庁WTC移転を否決し、 福祉医療費助成の現行制度を維持できた。 府政を包囲する運動をさらに強めましょう」 と呼び掛けました。  パネル討論を受けて、 参加者からは 「廃止条例が可決されたが、 現地存続を求める会を結成する。 知恵と力を出してください」 (国際児童文学館を育てる会)、 「大阪版市場化テストで5月から自動車税の徴収・催告が民間委託に。 府立図書館の民営化も狙われている」 (大阪府職労)、 「緊急署名に取り組むなど、 府民の運動で子どもの医療費助成制度を守った。 国制度の実現も含め運動を強めたい」 (新日本婦人の会) などの発言がありました。

関西州構造で関西は活性化するのか? 
中山徹奈良女子大学准教授が問題提起

 シンポジウムではまず、 奈良女子大学の中山徹准教授が、 「橋下改革の1年を振り返る  関西州構想で関西は活性化するのか」 のテーマで問題提起しました。
 橋下知事は08年2月の就任と同時に 「財政非常事態宣言」 を出し、 4月の財政再建プログラム試案 (PT試案) に続いて、 6月に大阪維新プログラム案 (維新案) を発表しました。

ゼロからの見直しのはずが

 中山氏は、 PT試案の段階では 「聖域なき削減」 の名で、 かつてない厳しい歳出削減が打ち出されるとともに、 大型公共事業も 「ゼロから見直す」 とされ、 「何のための財政再建かが見えず、 知事の目指す方向性が分かりにくかった」 と述べました。
 それが6月の維新案では、 35人学級の存続など部分的な修正はあったものの、 福祉・医療・教育・文化などの大幅削減の一方で、 大型公共事業はほとんどそのまま継続。 中山氏は 「大阪府の発展的解消と関西州の実現が、 財政再建の理由であることが明瞭に語られるようになった」 と語りました。
 さらに中山氏は、 橋下知事が府民サービスは市町村か民間に移し、 府の仕事は大型公共事業や広域経済対策などに限定する方向を強めていることについて、 「道州制になったときに、 関西州の仕事として残るものは財政再建の中でも府の仕事として残し、 それ以外はこの際切り捨ててしまおうというもの」 と述べました。
 橋下知事の 「将来ビジョン・大阪」 に触れた中山氏は、 「財政再建に比べて非常に抽象的」 と述べ、 「大阪を国際金融拠点にする戦略」 という将来像も、 バブル期に失敗したりんくうタウンなどと同じだと指摘。

失敗した計画の焼き直し

 大阪府の経済活性化策は、 行政主導の大型公共事業 (90年代)、 規制緩和の徹底による民間投資の誘発 (00年代) だったと振り返った中山氏は、 「10年ごとに施策の看板を新しくしているが、 大企業の誘致のために行政は公共投資や優遇策を進め、 誘致場所としてベイエリアを一貫して重視するのは変わらない。 橋下知事の構想は、 破たん・失敗した計画の焼き直し」 と力説。 「橋下知事は、 行政批判などイメージ戦略で表面的な新しさを感じさせ、 マスコミを活用して一方的な情報提供はするが、 府民とともに歩むことは弱い」 と語りました。


貧困対策の貧困ぶり告発
大口大生連事務局長

 全大阪生活と健康を守る会連合会 (大生連) の大口耕吉郎事務局長は、 全国の中でも特に深刻な大阪での貧困の実態の一端を紹介しました。
 国保料の滞納は02年6月の38万3414世帯から08年3月には44万2952世帯と、 国保加入世帯の約24%に上り、 資格証明書の発行は同じ時期に1万1863世帯から2万8382世帯へと急増。 就学援助認定率も生徒比で24・9%、 生活保護世帯も00年9万6348世帯から08年16万2467世帯へと増え、 保護率は全国平均の2倍になっています。
  「貧困と格差の拡大の中で、 府民の暮らしを守る防波堤となるべき大阪府がやってきたことは何か」 と問い掛けた大口氏。 太田府政時代には、 府立高校授業料の全国一高い値上げや減免制度の改悪、 「自立支援」 を理由にした生活保護の夏季・歳末一時金の廃止などが強行され、 橋下府政では府営住宅入居者の47%が被害を受ける家賃値上げと減免改悪が行われたことを告発しました。
 食費や交際費さえ切り詰めている生活保護利用者の実態を示しながら、 「貧困によって、 社会参加、 教育権、 企業などから排除され、 孤立や人間性の喪失、 貧困の連鎖が生まれる」 と指摘。 「知事は、 弱者を見たらむかつくのだと言うが、 それは地方自治の放棄以外の何物でもない」 と力説しました。

ルール無視の教育への介入
ルポライターの星氏

 雑誌 『世界』 に 「橋下知事の教育介入が招く負のスパイラル」 を執筆したルポライターの星徹氏。 全国学力テストの結果に対して橋下知事が 「2年連続でこのざまは何だ」 などと発言し、 教育行政に介入していることを、 2つの角度から報告しました。
 まず形式的問題について星氏は、 そもそも知事には府教育委員の推せんや、 教育予算の提出権限はあっても、 具体的な教育政策への介入は認められていないのに、 橋下知事は 「教育非常事態」 を宣言して一種の 「戒厳令状態」 に置き、 ルールを無視して主導権を握り続けていると指摘。 同時に、 「こうしたことをなぜマスコミは問題にしないのか。 民主主義の形式への無自覚は、 独裁システムを完成させてしまう」 と警告しました。
 また内容的問題について星氏は、 橋下知事の 「教育改革」 で、 算数・数学と国語に限定された全国学力テストの成績・順位を上げることだけが自己目的化すれば、 義務教育全体がゆがんでしまう危険があると強調。 東京都足立区で、 テスト順位向上のために数々の不適切行為が発生したことを紹介しました。
 星氏は、 低学力問題を真に解決するためには、 「市町村が独自の教育施策をやりやすくする条件整備、 貧困の広がりの中で子どもたちの学ぶ環境を整備することこそが、 大阪府に必要だ」 と訴えました。

趣味趣向で文化行政を破壊
出野前府文化振興財団常務理事

 出野徹之氏は、 元関西テレビアナウンサーとして、 プロ野球などスポーツ実況で活躍。 02年から大阪センチュリー交響楽団を運営する大阪府文化振興財団に出向し、 ことし3月末まで常務理事・事務局長を務めました。
 昨年4月のPT試案の発表以来、 大阪センチュリー楽団を応援する会の署名活動はじめ、 楽団内外で存続を求める取り組みが広がる中、 何度も知事との話し合いを求めたが、 常務理事退任の日まで一度も実現しなかったと述べました。
 同楽団への補助金削減やワッハ上方 (府立上方演芸資料館) の移転・縮小、 府立図書館への大阪国際児童文学館の移転・統合など橋下府政による文化行政切り捨ての特徴について、 出野氏は 「始めに結論ありきだ」 と強調。 「3つの施設、 組織は府がわざわざ創設したもの。 客観的な判断基準ではなく、 知事個人の趣味、 趣向で文化行政が破壊されている」 と訴え、 メディアにはこうした問題を真剣に考える義務があると力説しました。
 さらに出野氏は、 楽団と財団の努力で、 子どもたちがオーケストラの楽器に触れる 「タッチ・ジ・オーケストラ」 や 「支援学校コンサート」 はじめ、 公の楽団としての事業に取り組んできたことを挙げ、 「府の担当部局にも文化行政での無策があった。 それをすべて現場の責任にするのは問題だ」 と語りました。

反府民的姿勢変わらぬまま
宮原共産党府議団長

 日本共産党大阪府議会議員団の宮原威団長は、 知事就任1年に当たっての 「毎日新聞」 の世論調査結果では、 橋下知事への支持率は69%と高いが、 「福祉・医療」 「産業振興」 など具体的施策では支持はうんと低いと指摘。 「知事のパフォーマンスを事実で検証しないマスコミの垂れ流しが、 虚像を生んでいる。 背景には全国的にも深刻な暮らしと政治の行き詰まりの打開を求める大阪の現状がある」 と語りました。
 宮原氏は、 2月府議会で府庁WTC移転案が大差で否決され、 福祉医療費助成制度が存続となった経過や教訓を詳しく振り返るとともに、 府民の良識と運動の力が発揮されたと強調しました。
 橋下府政の今後について宮原氏は、 知事がJR新大阪駅と関空の新たなアクセスとなる鉄道 (なにわ筋線) や、 阪神高速道路淀川左岸線延伸部、 箕面森町、 彩都など大型開発を推進しようとしていると指摘。
  「橋下知事は国にものを言っているように見えるが、 実は大型開発への国のテコ入れを求めてのことだ」 と述べ、 府立高校の非常勤事務員等の雇い止めや私学助成削減、 定時制高校の2次募集の急増などにみられるように、 雇用や暮らしの問題では、 知事は反府民的姿勢を変えていないとし、 「1年間の経験を生かして、 暮らしと文化を守る運動をさらに広げましょう」 と呼び掛けました。

投稿者 jcposaka : 2009年04月23日

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