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働く青年の学ぶ要求と夜間学部の役割――大阪市立大学2部の存続・発展のために

2009年06月03日

                                    小林裕和

 大阪市立大学は昨年10月、第2部(夜間授業の課程)の学生募集について、2010年度入試から停止することを発表しました。大学のホームページによる突然の発表に、2部学生や卒業生をはじめとする大学関係者、地域住民らが驚きの声をあげ、「2部存続を」の運動がひろがりつつあります。
大阪市会では昨年12月に、大阪市大2部の存続を求める陳情が審議され、日本共産党大阪市会議員団は1月13日、大阪市立大学の学長らと懇談し、市大2部の存続を申し入れました。
 大阪市立大学は、8学部と大学院10研究科を有する国内最大規模の公立大学であり、大阪市内に位置する唯一の総合大学です。2部は1950年に開設され現在、商学部、経済学部、法学部、文学部と4つの学部におかれ、1千人近い学生が学んでいます。
 私たちは、大阪市における学術研究の中心を担い、教育、文化、産業の基盤をささえる大事な役割をはたしている、大阪市立大学のいっそうの発展を期待する立場から、いくつかの問題提起をおこないます。


夜間学部の意義、役割をどうみるか

〇働きながら学ぶ夜間学部の意義
市大2部学生がつくった「大阪市立大学2部廃止問題を考える会」が実施したアンケートによると、約8割の学生が働いていると答えており、多くの学生が働きながら学ぶという実態が明らかになっています。
多くの学生が働きながら学んでいるところに2部の意義があり、正規雇用が減り非正規雇用が増えるなど働き方が変わっても、2部の存在意義を打ち消すことはできません。
また、いま日本の大学の学費は、国公立で80万円以上、私立で130万円以上(初年度納付金の平均)であり「世界一高い学費」です。その負担は、学生とその家庭に重くのしかかっています。経済的理由で学業を断念する青年をこれ以上出さないために学費の軽減が必要です。
このなかで、学費が比較的低くおさえられている2部の意義は大きいものがあります。市大2部の学費(初年度納付金)は、37万8900円(大阪市外住民43万8900円)と1部の半額であり、学生が働き生活を維持しつつ、勉学を続けることもできる水準です。2部の存在は働く青年にとってかけがえのないものです。
「自分は収入が厳しくても『市大2部に通う』という選択肢がありました。しかし2部が廃止されてしまったら、将来的に受験を考えている人は、その少ない選択肢さえもなくなってしまう。とても悲しいことです」(市大文学部2部1回生Kさん)。こうした2部学生の声に応えることが大切です。

〇働く青年の大学教育の機会を保障する――憲法の立場からみて
 夜間学部(2部)は戦後、憲法と教育基本法(1947年法)のもと大学教育の重要な構成部分として位置づけられました。憲法は26条で「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」と国民の教育権をうたい、教育基本法(現行4条)は「すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない」と教育の機会均等――働く青年の大学教育の機会を保障することをうたいました。教育基本法と同日に公布・施行された学校教育法(54条)には「大学には、夜間において授業を行う学部・・・を置くことができる」と明記されています。
 夜間学部は、こうした憲法と法律の立場を生かすということからみても、21世紀の今日、いっそう充実・発展させることが求められます。

〇大学の歴史と伝統をふまえた新たな発展が期待される
大阪市立大学は、1880年の大阪商業講習所の開所を起源とし、1928年に設立された大阪商科大学を経て、戦後、新制大学制度のもと1949年4月に大阪市立大学として発足しました。市大2部は「勤労青年にも高等教育の機会を与えようという大阪市当局ならびに市会の積極的意思がイニシァティヴを」とるなかで、「勤労青年の学問習得は、都市文化の向上、活力の発揚のために、きわめて重要な役割を果たす」(大阪市立大学百年史)として大学で開設が議論され1950年4月に発足しました。
以来、市大2部は、大阪市内だけではなく全国の働く青年に大学教育の機会を提供し、1部と同一原則のもとでの教育を実施し、59年の歴史をもつ夜間学部として多くの卒業生を送り出し、社会に貢献してきました。
こうした歴史と伝統をもつ市大2部には、開設の精神を今日に生かした新たな発展が期待されます。


大学予算の削減をやめ教育研究条件の充実を

今回の市大2部問題の背景には、大学法人化による大阪市からの運営費交付金など大学予算の削減問題があります。
国立大学につづいて大阪市立大学は2006年度から法人化されました。このなかで大阪市は、「改革」による「財務リストラ」として、大学予算(市立大学運営にかかる公費負担)を5年間で2005年度予算比20%(約33億円)削減する計画をたて、2006年度から2008年度の3年間で、すでに14.4%(23億8200万円)も削減しています。
その結果、市大の教職員数は大幅に削減され、2005年度に比べて2008年度は、教員数は98人(11.5%)減、職員数(医療職除く)は204人(34.1%)減です。このなかで「教員が大幅に減らされて、1部も2部も教える教員の負担がどんどん重くなっている」など大学の実態は深刻になっています。大学関係者が当初から指摘していたように、大学予算が「毎年4%ずつ削減されることは・・・大阪市立大学の教育・研究に大きな影響がある」ことは明らかです。
もともと大学での教育研究に「経済効率」などはなじまないものです。すでに破たんが明らかになっている新自由主義的「構造改革」路線からの脱却が、大学分野で求められます。
 大阪市立大学の学術研究の発展のためには、教育研究条件の拡充が不可欠です。2部の存続・発展のためにも、大学全体として教育研究経費や教職員を減らさず増やすことが必要です。大阪市立大学の設立団体である大阪市は、大学への財政負担の責任を果たし、運営費交付金など大学予算の削減をやめ充実すべきです。


学内での議論と合意、市民的討論の重要性について

憲法(23条)で保障された学問の自由を守るためには大学の自治が不可欠です。したが
って、「2部のあり方について」など大学の重要問題は、大学の自治の精神を発揮して、全学的な議論をつくし合意形成をはかることが大切です。そのさい、学生、院生、職員に大学におけるそれぞれの立場からの意見表明などの権利を認めるべきです。
同時に、大阪市立大学は市民の大切な共通財産であり、市民的な討論が重要です。
 日本共産党は、大阪市立大学の学術研究のいっそうの発展を期待し、市大2部の存続をはじめ、大学での教育研究条件の充実のために大学関係者・市民のみなさんと力をあわせてがんばります。(こばやし・ひろかず 日本共産党大阪府委員会常任委員)

                       (「大阪民主新報」2009年3月8日付)

投稿者 jcposaka : 2009年06月03日

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