大阪市赤バス路線全廃に市民困惑 赤字続き理由に2010年度末で全廃「赤バスないと通院むり」港区などで存続運動 日本共産党「一方的な廃止は反対」 「市民の声聞き改善を」
住宅街や商店街、 役所などの公共施設、 老人施設などを回る大阪市営のコミュニティバス 「赤バス」 が廃止の危機にあります。 2002年から本格的に運行が開始されて以来、 100円で利用でき、 ノンステップで乗り降りしやすいことから、 高齢者など 「交通弱者の足」 として利用されてきました。 なくなれば、 公共交通機関を利用しにくい地域で暮らす高齢者などにとって、 移動の手段を失うことにもなりかねず、 採算面だけでの全路線廃止に疑問の声が上がっています。
「よいしょ」。 わずかな段差を掛け声とともに上がってきたのは、 つえをついた高齢の女性。 そのすぐ後ろには、 酸素の手押し車を押した男性が続きます。 赤バスの地下鉄花園町停車場。 午前10時台の西成西ループは、 12人で満席。 各停車場で多少の乗降があっても常に6〜7人がバスに揺られています。 ほぼ全員が70歳代前後。 敬老パスを見せて降りていきます。 病院や施設を回るルートでは、 顔見知りの乗客で会話が弾む場面も。 別のループでも利用者の8〜9割は高齢者でした。数字だけで最悪な評価
赤バスは、 一般の市バスがカバーしきれない地域を回るきめ細かさが売りですが、 赤字続きを理由に08年3月末に中央ループ (中央区内) が廃止され、 同年6月に西ループ (西区内)、 ことし8月末には東成環状も廃止に。 現在27系統が運行しています。
大阪市交通局はこの6月にまとめた 「アクションプラン」 (案) の中で、 当初見込みの運営基準 (平均乗車密度6人) を下回っていることや、 一般バス路線とのルート重複などを理由に、 「経済性が著しく低く、 公共性も著しく低い」 と結論付け、 2010年度末で全路線を廃止するとしています。 その後、 市バスも含めた路線再編で 「幹線系」 「フィーダー系」 「地域系」 「コミュニティ系」 に分別。 赤バスに代わる新たな輸送サービスを導入する場合は、 地域主体の運営とし、 行政はサポート役とするだけで、 具体策は検討中です。
「通勤・通学とは異なる日常的な移動ニーズに対応する」 をコンセプトに、 地域密着型のバスサービスとして、 これまでも赤字続きでも運営してきましたが、 18億円の支出 (07年度決算) に対して収入が5億円。 それも敬老パスなどに関する特別乗車料繰入金3・6億円を含んだ数字で、 残りの13億円は一般会計から補てんされているため、 これ以上は継続できないとしています。 また、 来年度末が車両買い替えの時期と重なっていることも廃止の理由に挙げています。
高齢者の足として定着
一方では、 存続を求める動きも始まっています。 港区では、 港生活と健康を守る会や新日本婦人の会港支部などが、 「赤バス 『港ループ』 の存続をもとめる請願」 署名を開始。 停留所や駅から遠い八幡屋、 波除、 弁天、 市岡、 南市岡などの地域では、 赤バスは大きな存在です。 高齢者も多く、 地域に定着しつつある赤バスは、 廃止ではなく、 より利用しやすく改善して存続することを求めています。
旭区では、 日本共産党太子橋後援会が、 市のパブリックコメント (住民意見) の募集をビラにして、 3丁目を中心に1千枚配布したところ、 「痛む足を引きずってでも、 赤バスがあるから買い物、 医者通いができる。 地域の足をやめないで」 「1級身体障害者。 月8回の整形医、 月2回の眼科への通院、 年金の生活費引き出しなどに赤バスを利用している。 廃止になれば通院できず、 銀行にめいに頼まないといけない」 「子連れで子育て支援センターや区役所に行くときなど、 赤バスはとても便利。 なくなると不便で困る」 など、 100通の切実な意見が返ってきています。
西成区南津守から、 地下鉄花園駅近くの大型スーパーに買い物に来たという女性 (70) は、 「電車もバスも遠いし、 自転車も乗れないから、 買い物とか用事で遠くまで出掛けるときは赤バスを利用する」 と言います。 「巡回バスだから、 目的地まで時間がかか。 時間があるときしか乗れないのが難点だけど、 なくなったら不便よねえ。 どうやって出てこようかしら」
市民合意で交通策進め
利用が少ないとはいっても、 高齢者の 「足」 であることは事実。 「交通福祉」 の観点からも市の対応が問われます。
日本共産党大阪市会議員団は、 これから高齢化がいっそう進む中で、 自転車に乗れない人が増えるなど 「交通弱者」 への対策を考える必要があるとし、 「一方的な廃止には反対」 しています。 議会でも、 黒字の市営地下鉄からバス事業に適切な支援をすれば、 バス路線を維持できると主張。 利用者や市民の声をよく聞いた上で、 市民の身近な 「足」 を確保するためにどんな交通体系にしていけばよいのか、 全市的に検討し、 住民合意で今後の交通政策を進めていくことが重要と指摘しています。
投稿者 jcposaka : 2009年09月25日