伊丹空港廃港問題 事実に即し冷静な議論を「伊丹廃港、関空のみ強化」は誤り 日本共産党・宮原府議団長に聞く
関西3空港問題をめぐって橋下徹知事が「伊丹(大阪国際空港)廃港」「関空のハブ(拠点空港)化」を声高に叫ぶ下で、大阪国際空港について大阪府議会では3月24日に「中長期的な廃港を考える」とする決議を可決する一方、同23日には兵庫県議会で「存続」を決議しました。府内市町村では豊中市議会は「存続」決議の一方で、箕面市議会は「廃港」。こうした中で、大阪国際空港や関空についてどう見るのか、日本共産党大阪府議会議員団の宮原威団長に聞きました。
国内線乗降客は関空の3倍
まず何よりも、事実から出発することが重要だと思います。大阪国際(伊丹)空港について、国交省の最新資料である「空港別収支試算結果」(06年度)によると、大阪国際空港は、国が管理する26空港(国際線重点の成田・関空を除く)の中で、最も黒字が多い空港です(表1)。乗降客数は1538万人で、26空港のうち、羽田、新千歳、福岡に次いで4番目の多さ。関空の約3倍、神戸空港の約6倍で、これだけの乗降客が現実に存在しています。
大阪国際空港は1936年、豊中市と伊丹市にまたがる田園地帯を、工場ばい煙のない適地として選定し、「大阪第2飛行場」として39年に開設。戦時中は軍用飛行場に転用され、戦後は米軍伊丹基地として使われました。58年に米軍が返還し、当時の運輸省は「大阪空港」と改称し、翌年には第1種空港に指定、「大阪国際空港」と改称されました。伊丹空港は安全騒音対策を
70年の万博のころジェット機が増え、騒音公害が大問題になりました。周辺住民3970人が5次にわたって損害賠償や夜9時以降の飛行差し止めを求めて裁判を起こしました。最高裁が原告の損害賠償請求を認めたのが81年。関空開港前の90年に、大阪国際空港を存続させようということが地元11市と運輸省との間で決まり、関空開港後も国内線の基幹空港と位置付けられました。
ことし1月14日、豊中市議会と同市の空港対策連絡協議会長が懇談しましたが、“豊中市民は空港を現実の問題として引き受けてきた。ただし騒音問題はできるだけ少なくしてほしい”という立場です。役員の意見を聞いても、直ちに廃止すべきという意見は一つもないと述べておられます。
低騒音のジェット機が増えたとはいえ、いまだに環境基準を超えた状態で課題は残っていますが、90年以後、1日ジェット機200便以内、夜9時までという条件で、大阪国際空港は周辺地域と共存しています。その点では、民主党や橋下知事が環境対策費(09年度で約42億円)を削ろうとするのは間違いで、地元住民の声をよく聞き、低騒音ジェット機を増やして騒音を下げることなどが求められています。
「民活方式」で多額の借金が
関西空港は1兆1千億円を超える有利子負債を抱えています(無利子負債は2380億円)。08年の世界金融危機までの5年間は黒字だったとはいえ(09年度は赤字予想)、経営危機に陥った原因は何でしょうか。
国の法律では第1種国際空港は国の責任で造ると明記されています。ところが当時の自民党・中曽根内閣、日本共産党を除く府議会の「オール与党」、関西財界が株式会社(民間活力方式)で建設・運営し、地元も負担することになりました。1期工事1兆5200億円、2期工事は1兆1千億円で、計2兆6千億円、そのうち府民の税金(府の負担)は1600億円くらいで、府民1人当たり約2万円を、直接負担したことになります。
日本共産党は80年代後半から「関空は国の責任で」「ゼネコンの超高値工事の見直し」「2期事業は中止せよ」と一貫して主張し、私自身、6年前には財務省と国交省に直接、2期事業中止を訴えました。
リニアで短縮もわずか数分
橋下知事は、なにわ筋線や関空リニアを造るなどと言っています。なにわ筋線は地下鉄で、いまのところ3千億から3500億円かかるとされていますが、私はもっとかかると思います。
ところが関空へのアクセス時間はたった6〜7分短縮されるだけ。そのためだけに3千億も4千億円も使うのでなく、高齢者対策や子どもの医療費など府民のために使うのが先決だというのが日本共産党の意見です。
JR東海の非常に甘い見通し(「JRが07年度までのようにもうかる」、「人口減少社会なのに客は1・5倍に増える」と想定)でも、リニアが東京―大阪間に開通するのは2045年。いまから35年先の話を持ち出して、「だから伊丹廃港だ」というのはまったく非現実的です。
府知事の発現は「空理空論」
道路や空港をつくれば経済がよくなるのではありません。いま日本は、サミット参加国の中で唯一成長が止まり、国民の収入が減った国とされています。大阪府民の収入の落ち込みは全国平均の3倍にもなります。「飛行場をつくればたくさんの人が来る」とか「アジアの需要を関空に取り込む」と言っても、言葉だけであり、空理空論です。いま大阪に求められているのは暮らしや中小企業の経営を応援する、当たり前の政治です。
投稿者 jcposaka : 2010年04月02日