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知事の「大阪都」構想.なんのため? 橋下知事×平松市長 「バトル」の影で知事が語らぬ中身とは―

2010年09月18日

住民施策は無関係/大企業誘致に固執

 橋下徹知事の掲げる「大阪都」構想をめぐって、マスコミが知事と平松邦夫大阪市長との「対立」を盛んに伝えています。一方で、橋下知事は自らが率いる「大阪維新の会」のタウンミーティングを8月末から開始。こうした議論の中で、府民の暮らしへの責任を投げ捨て、大企業呼び込みという破たんした経済活性化政策に固執する、知事の姿勢があらわになっています。

 11日夜、箕面市内であった「大阪維新の会」のタウンミーティング。地元選出府議の支援者ら約1千人の聴衆を前に、橋下知事は、「大阪都」構想についてメディアの一部にある「メリット・デメリットを示せ」との声を意識して言いました。

府の責任投げ出し

 「図書館がいきなり6つから7つに増えるとか、細かな話をメリットとして挙げてくれと言われても、それは無理だ」
 橋下知事によれば、住民に身近なサービスは「大阪都」構想の下での「特別区」や市町村の責任であって、「大阪都」には最初から関係ないということです。
 こうした考えは、橋下府政の「財政構造改革プラン」でも、すでにはっきり打ち出されています。福祉医療費助成制度の見直し、府営住宅の半減、中小企業の融資制度改悪など、府の責任を徹底して投げ出そうとしています。
 さらに府と市町村は国民健康保険(国保)の広域化の名の下に、「府内統一保険料化」に着手。市町村が負担軽減のために行っている一般会計からの繰り入れを廃止するもので、1世帯平均で年間約2万円の国保料値上げが襲いかかります。
 「大阪維新の会」は政策文書などで、全国最高の生活保護率、高い完全失業率などを挙げ、「貧困の再生産という最悪の事態」と強調。しかし、「大阪都」構想をめぐる議論の中では、府民に重大な影響を与えることになる施策の改悪や削減には、何も触れません。

企業くる保障ない

 タウンミーティングで橋下知事は「大阪都」構想の目的を語りました。
――大阪を世界で5番目以内の都市に。企業をもうけさせ、府民全員の所得を上げる。それは、企業が活動しやすい環境を提供して初めて実現する。
――世界は激烈な都市間競争だ。アジアや世界の企業を大阪に集め、カジノに来てもらうには、鉄道や高速道路を整備して、関空をもっと便利にしなければならない。
――大阪市域で鉄道や高速道路をつくりたくても、権限を持つ平松市長は消極的で、大阪全体のプランが描けない。「大阪都」実現で、指揮官は一人、財布(財源)も一つにする。
 ここには、落とし穴があります。空港や高速道路を整備し、「特区」で法人税減税を打ち出して、実際に内外の企業を呼び込める保証はどこにもありません。
 大阪府と大阪市による関空を中心にしたベイエリア開発や、りんくうタウンをはじめ、大阪市のテクノポート計画やWTC開発など、企業進出を当て込んで巨額の資金を投入した事業は、ことごとく失敗。府市の財政は悪化し、「財政再建」の名で住民に犠牲が転嫁されてきました。
 大阪の現状を、沈みかけている豪華客船に例えた橋下知事は、「『維新の会』と共にタイタニック号から脱出しよう」と聴衆をあおりましたが、「呼び込み型」の「成長戦略」の結果は、歴史で証明済みです。

メモ「大阪都」構想

 大阪府と大阪市、周辺の市を再編・統合する構想。大阪市は8〜9区、堺市は3区に分割、周辺の衛星都市とともに人口約30万人の「特別区」にするというもの。日本共産党大阪府議会議員団が出した、東京都の例を基にした試算では、「特別区」になればそれまで市の収入だった固定資産税や法人市民税の45%が、「都」に吸い上げられることに。その財原と権限を、淀川左岸線延伸部(3500〜4千億円)や、なにわ筋線(2500〜4千億円)などの巨大開発に使う狙いがあります。橋下知事と「大阪維新の会」は5年以内の構想実現へ、来春の府議選・各市議選での過半数獲得や、大阪市長選での候補擁立などを目指しています。

平松市長
「住民の幸福」語るが市民施策は切り捨て

 橋下知事との公開討論(9日)で平松市長は、「(行政の最大の課題は)住民の幸福」「いま本当に困っている人が山ほどいる世の中で、なぜすぐ『大阪都』がないといけないのか」と主張しました。
 しかし平松市長は、「9年間で2700億円の収支不足」を掲げ、今秋発表する新たな市政改革基本方針では「毎年120億円の経費縮減が必要」として、敬老パスはじめ市民向けの単独予算事業の全面見直しや市営住宅の家賃減免制度の改悪などを検討しています。
 その一方で「事務事業の総点検・中間とりまとめ」(昨年11月)以来、淀川左岸線2期工事や舞洲土地造成・基盤整備などは継続。橋下知事が要求する淀川左岸線延伸部建設などは検討対象にするなど、開発推進を改める姿勢はありません。

府民の暮らし再優先
「開発型」から転換を
日本共産党

 日本共産党大阪府議会議員団は、8月末に知事に出した提言「成長戦略は、府民の暮らし向上と大阪・地域経済活性化のために」で、「暮らしの悪化は、国際競争に打ち勝つ戦略がなかったからでも、都市制度に問題があったためでもない。政治のあり方にこそ問題」と強調しました。
 大阪府の目指すべき方向性として、国の政治を「国民が主人公」の政治へと転換を求めるとともに、暮らしや地域経済の悪化、財政危機の原因を直視し、「開発型行政」の転換を要求。内外の大企業呼び込みや、不要不急のインフラ整備ではなく、住民の暮らし最優先の市政を貫き、社会保障や中小企業振興で大阪経済活性化に取り組むことを示しています。
 その中で、公共事業を生活密着型に転換し、地域経済への波及効果が大きい中小企業の仕事を増やすこと、「外需型」ではなく内需型の経済振興こそ、大阪が目指す方向だと強調しています。

投稿者 jcposaka : 2010年09月18日

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