労働者.大量解雇・配転 大企業.空前のカネ余り 「社会的責任果たせ」大企業労働者が実態交流
「空前のカネ余り」といわれる大企業。リーマンショック以降の急激な「V字回復」で、純利益は4兆円から7兆円と急増。内部留保(ため込み利益)は1年間で11兆円上積みの244兆円。その一方で、正規労働者の非正規化、リストラ、派遣労働者の期間工化などが進められ、4人に1人の1100万人が年収200万円以下。労働者の賃金が下がり続けている国は、先進国の中で唯一、日本だけです。そんな中、府内の大企業で働く労働者や組合員が「働くルールの確立で働きがいのある職場をつくろう!」をスローガンに、14日、大阪市北区の国労大阪会館で交流集会を開催。実態を出し合いました。
集会は、大企業で働く労働者を中心に、大阪労連などが参加する実行委員会が主催。パナソニックやダイキン工業などの大手家電メーカー、南海、近鉄、阪急などの私鉄とJR西日本、三菱東京UFJなどの都市銀行やNTT西日本などから84人が参加しました。経営戦略の失敗労働者にかぶせ
金融労連の浦野弘さんは、三菱東京UFJ銀行でカード販売業務を担う契約社員400人が、解雇される問題を告発。「解雇の理由を銀行側は『カードの利用不振』としているが、これは銀行の経営戦略の失敗であり、労働者には何の責任もない。銀行は雇用を守る社会的責任を果たさなければならない」と述べました。
三菱東京UFJグループは、2010年3月期で経常利益5456億円、同年6月の第1四半期の純利益は1663億円の高収益を計上しています。さらに、過去の不良債権処理で巨額の赤字を計上し、翌期以降の黒字と相殺する「繰り越し欠損金」により税金を納めていません。
偽装請負の改善内実は期間雇用
JMIUダイキン工業支部の長岡大吾書記長は、「20代の若者も争議に参加している。彼らのためにも負けられない」と支援を訴えました。
空調機器大手のダイキン工業は、長年、偽装請負で働かせていた労働者を、大阪労働局の是正指導で直接雇用に切り替えましたが、内実は2年半限定の期間雇用でした。それまで12年間、ダイキン工業で働いていた長岡さんは「まさか2年半で解雇しないだろう」と考えていたと言います。
しかしダイキンは、ことし8月末に約200人を雇い止めし、不足人員を補うため、新たに約200人を雇いました。
4人の有期間社員が9月、同社を相手取り、雇用継続を求めて大阪地裁に提訴。原告側は、同社の業績が好調であることや、多数の社員を雇い止めにしながら、新たに有期間社員を受け入れている問題を指摘。長年、違法な偽装請負など不安定な状態で働かされていたことから、雇用責任が生じているとし、「雇い止めは解雇権の乱用で無効」と主張しています。
会社更生手続き中の日本航空のリストラについて、航空連大阪地連の仲村豊事務局長は、「破たんの要因は、放漫経営と航空行政の失敗、そしてアメリカの圧力だ」と指摘し、「トップはいっさい責任を負わず、労働者の首を切ってしのごうとしている」と批判しました。
家庭の事情などまったく無配慮
分科会では、「賃金・能力成果主義」と「非正規・有期雇用問題」、「リストラ、配転合理化・健康問題」、「雇用延長・再雇用年金問題」の4つのテーマに分かれて交流しました。
50歳で全国への配転や賃下げを迫られるNTT西日本の労働者は、親の介護があっても全国配転の対象にされていると告発しました。無理な配転によって体を壊す労働者も多いと話しました。
輸出主導型やめよ
伍賀一道金沢大教授
集会では、金沢大学の伍賀一道教授が記念講演し、雇用と労働環境の貧困から脱却するために「労働基準、企業の社会的責任、ナショナルミニマム(政府が国民に対して保障する最低限度の生活水準)の確立を」と訴えました。
伍賀氏は、日本の円高体質に触れて、「輸出主導型の経済が、日本の雇用や働き方、働かせ方を特徴付けている」と解説。規制緩和や構造改革によって、90年代後半から雇用破壊が急速に進み、02年からの「バブル期を超える好景気」の時期に、「ワーキングプア」、「ネットカフェ難民」が社会問題になったと述べ、経済政策の転換や、国際情勢を学習しながら、地域社会と一体に運動を進める重要性を指摘しました。
「内部留保を還流せよ」
日本共産党
国会では日本共産党が、大企業がため込んでいる巨額の内部留保を「社会に還流せよ」と国会論戦を繰り広げています。
山下芳生参院議員は10月15日、参院予算委員会でダイキン工業の問題を取り上げ、「労働者派遣法を抜本改正して人間らしい雇用を保障することは、この244兆円もの巨額な資金を生きたお金”として日本経済に環流させて、経済危機を打開する大きな力になる」と菅直人首相に迫っています。(11月21日付「大阪民主新報」より)
投稿者 jcposaka : 2010年11月20日