住宅保障どこに 府営住宅 取り壊し・半減へ 建て替え→取り壊し.大阪市淀川区.東三国住宅 空き家増え防犯に不安
橋下知事の下で、公営住宅への府の責任がないがしろにされようとしています。建て替えるはずだった府営東三国住宅(大阪市淀川区十八条)は、橋下知事が就任後に廃止・取り壊し方針を決定。同住宅では退去を迫られるなど、住民の生活を脅かす事態が生まれています。一方、現在約13万6千戸ある府営住宅の管理戸数を、将来的に半減するという「財政構造改革プラン」も打ち出しています。府民への住宅保障の責任を放棄しようとする府の動きに対して、住宅削減に反対する請願運動が進められ、19日には学習活動交流集会が開かれました。
2年めどに退去100世帯残る
東三国住宅(4棟360戸)は、昭和40年代に建てられました。大阪府は、「府営住宅ストック総合活用計画」(2006〜15年度)に基づいて、全体の9割を建て替え・耐震補強する方針でした。しかし橋下知事が就任後、「高コスト」「耐震工事施行困難」などを理由に昨年春、府営住宅では初めて東三国住宅の廃止・取り壊し方針を表明。住民に対し2年をめどに退去を求めました。
住宅には当時、65歳以上の高齢者が7割以上住んでいたとみられます。廃止方針が出された後、住民たちは近くの公団や府営住宅などに転居しましたが、いまもなお100世帯が住み続けています。
将来への不安で命絶つ高齢者も
4棟6階に住んでいる伊東満子さん(84)は、住んでいた区内の家が区画整理地域となったため、40年前、東三国住宅に一家で転居。子どもは独立、実母や夫も見送り、現在、わずかな年金で独り暮らしています。
先月、住宅で暮らしていた80代の女性が、自宅で孤独死。別の80代の知人女性も、団地で飛び降り自殺しました。2人とも、廃止・取り壊し方針が出された後、伊東さんに将来への不安を語っていました。
半年後の立ち退き期限を前に、伊東さんも別の府営住宅に2回申し込みましたが、いずれも抽選もれ。行くあてはまだ決まっていません。
「私だって心細くなって死にたくなることがありますよ。空き家も増えてきて防犯上の不安も出てきています。こんな思いを、いま府営に住んでいる人や府民にさせたくない。(自治体の)長というのは、弱い人を幸せにするのが仕事のはずなのに、橋下さんはまったく逆のことをしている」
府営住宅は増設こそ
府営住宅削減に反対する連絡会
住宅貧困の解決へ
2月府議会へ署名呼び掛け
府営住宅削減に反対する連絡会は、ことし8月に全大阪借地借家人組合連合会、全大阪生活と健康を守る会連合会など10団体で結成。府営住宅の管理戸数の削減をやめ、府民の住宅貧困の解決へ増設を求める請願署名275団体分を、9月府議会に提出しましたが、維新の会、自民、民主、公明が反対して不採択になりました(日本共産党、社民党は賛成)。
連絡会が19日、大阪市中央区で開いた学習活動交流集会には、約80人が参加。連絡会の船越康亘事務局長は、来年2月府議会に向けて、個人請願署名を進めることを呼び掛け。学習会や宣伝行動、連絡会への参加団体の拡大に取り組むとともに、地元選出の府議などへの要請に力を入れることを提案しました。
府営住宅は黒字生かして増設を
日本共産党の堀田文一議員が、9月府議会での論戦などを報告。府内の住宅困窮世帯が60万8千に上り、府営住宅の応募倍率は29・4倍(ことし10月募集)と深刻になっている一方、府営住宅会計は黒字(08年度81億円)だと強調。橋下知事が「将来半減」の前提にしている「住宅セーフティーネット政策」とは名ばかりで、府営住宅を解体する方向で、府の住宅政策を転換しようとしていることを明らかにしました。
堀田議員は、来年度に行われる府営住宅ストック総合活用計画(06〜15年度)の見直しで、削減が行われる可能性があると指摘。府営住宅13万8千戸のうち4万5千戸がすでに募集停止であり、単純に廃止する団地は当分放置されることになると述べました。
府議会で「ストック半減はすばらしい」(維新の会)など、橋下知事を後押しする流れが強まっている中で、堀田議員は「府営住宅は黒字。半減ではなく、黒字を生かし、増設や家賃補助の拡充こそが必要」と語りました。
自治体間で削減競争$カむ
平山洋介神戸大教授
19日の学習活動交流集会では、神戸大学大学院の平山洋介教授が「住宅貧困を解決するための公営住宅の役割について」と題して講演しました。
平山氏は、戦後日本の住宅政策について、中間層による持ち家の取得を促進することが中心だったと指摘。さらに90年代半ば以降の新自由主義路線で、公営住宅・UR住宅など公共賃貸セクターの解体が進められていることを明らかにしました。
先進国の中でも貧困
平山氏は、主要国の国民の住宅所有状況を紹介。公的借家はイギリス21%、フランス17%、オランダ35%などで、国の家賃補助受給世帯はイギリス16%、フランス23%、オランダ14%です。
オーストラリアの公的借家は5%ですが、家賃補助受給世帯は14%。アメリカは公的借家2%、家賃補助受給世帯は2%です。それ対し、日本は公的借家6%で、国の家賃補助制度はありません。
「先進国の中でも公的な住宅保障が弱いのが日本」と平山氏は指摘しました。
平山氏は、国民の所得が減少し続けている中で、若い世代で民間借家への居住者が増え続けるとともに、低家賃の住宅の絶対数が不足している実態と、失業と同時に住宅を失う人が生まれるなど、″住宅貧困≠ェ広がっていると指摘。住宅保障を独自の政策として位置付けることが重要であり、公的賃貸住宅の拡充や、公的家賃補助制度の創設こそが求められると述べました。
求められる公営住宅
さらに平山氏は、橋下知事の府営住宅半減案の背景に、自民党政権の「地方分権改革」や、民主党政権の「地域主権改革」があると指摘。すでに他都市で、建設・管理コストや家賃減免での持ち出しを理由にした公営住宅の削減が進んでいる中、橋下知事の府営住宅半減案は、「あちこちに伝染し、(自治体間で)公営住宅の“削減競争”を生み出しかねない、危険な政策」と批判しました。(11月28日付「大阪民主新報」より)
投稿者 jcposaka : 2010年11月27日