命の砦 救命救急医療を守れ 救命救急センター 知事が補助金抑制計画 継続求め市民ら運動
“命のとりで、救急医療体制のさらなる充実を” 救急医療の最前線から、市民の命と健康を守る医療体制の充実を求める声が噴出。救命救急医療の補助金廃止・抑制を進めようとする大阪府の「府財政構造改革プラン」に対し、住民団体が取り組む署名運動に共感が広がっています。
「胸の当たりを圧迫するような強烈な痛みに飛び起きて。あぶら汗が噴出し声を出すこともできませんでした」。高槻市内の男性(56)は3年前の秋。就寝中の午前5時に襲った心筋梗塞(しんきんこうそく)の発作の苦しみを振り返ります。
「10分で到着します」。妻の119番通報に応対した救急隊員はそう答え、間もなく2台続けて救急車が自宅前に到着。車内での処理を経て3次救急医療機関に搬送され、集中治療室へ。男性は一命を取り留め、約3週間の入院を経て、翌年1月に職場復帰しました。
「救急救命士たちが玄関を駆け込んでくる姿にホッとしました。命を救ってもらえたことに感謝の気持ちでいっぱいです」と男性は話します。
全国でも少ない独立型センター
男性が住む高槻市では、1973年、高槻市や高槻市医師会などによって夜間休日応急診療所が設置され、85年には重篤患者を対象とした3次救急の大阪府三島救命救急センターを開設。全国でも少ない独立型の救命救急センターとして、年間を通じ24時間体制で重篤救急患者の救命医療を行ってきました。
さらに02年からは「救急医療の究極を目指す」とし、救急救命士と専門医が、消防の救急要請に基づき即時出動する特別救急隊「ドクターカー」を運用。08年度は538件、09年度は461件稼動し、重篤患者の蘇生(そせい)治療に画期的な効果を挙げています。同センター報告書によると、心肺停止患者の社会復帰は、09年度だけで12人、府内平均の3倍を超えると評価されています。
中河内や泉州も府の役割後退へ
橋下徹知事は昨年打ち出した「府財政構造改革プラン」で、府内の初期・2次救急に加え、重篤患者の受け入れ先となる3次救急医療機関への独自補助金を削減する方針を表明。大阪府三島救命救急センターへの補助金を抑制し、06年に済世会千里病院(吹田市)に移管した千里救命救急センターについては、5年間継続してきた補助金3億5千万円を4月に廃止する方針。中河内や泉州の府立救命救急センターについても、府の役割を後退させる方向です。
この動きに対し、高槻市や島本町の住民団体「いのち、教育、医療を守る高槻市民の会」は、昨年9月から駅頭などで宣伝行動に取り組んでおり、集めた署名を22日に大阪府などに提出する予定です。
共産党と市民がともに継続運動
日本共産党高槻市議会議員団の中村れい子議員は、昨年の12月定例会で、三島救急救命センターが果たしている役割を強調。補助金抑制方針見直しを府に求めるよう市へ要望しました。答弁で市側は、「3次救急医療の提供体制は基本的に府が確保するもの」とし、補助について強く要望すると述べました。
府が補助金廃止を示している千里救命救急センターをめぐっても、「救急医療を守れ」と昨年12月に「北摂豊能の救命救急医療を守る会」が結成され、補助金継続を求める運動を展開しています。
″助かる命も助からない
府が広域的役割発揮を
共産党府議団
日本共産党大阪府議会議員団は、「財政構造改革プラン」が打ち出した救命救急予算の抑制方針を撤回し、救命救急医療体制の充実を国に要求するとともに、府としても広域的役割を発揮して努力すべきだと橋下知事に迫ってきました。
昨年9月府議会で宮原威団長の代表質問に対し、橋下知事は、救急医療体制の確保は「必要だ」としながら、「他の都道府県と比べてあまりにも突出している部分は精査しなければならない」などと答弁しました。
宮原団長は、2次救急が大きく減っている中で、千里救命救急センターの補助金廃止や、それ以外での予算抑制は、「結局、救命救急にかかりにくくなり、助かる命も助からない」と強調。ドクターカーへの補助制度をつくるなどしながら、国に意見を言うべきだと主張しました。
医療機関の撤退増
国の医療改悪が原因
政府の連続医療改悪による医師不足や診療科廃止に伴い、救急医療現場でも深刻な状態が進行しています。
軽症患者を受け入れる「初期」、入院が必要な患者が中心の「2次」、重篤患者対象の「3次(救命救急センター)」から成り立つ救急医療のうち、政府の診療報酬改悪などで2次救急から撤退する医療機関が増加(グラフ参照)し、「搬送先が見つからない」などの事態も。 08年1月には、東大阪市内で交通事故に遭った男性が5つの医療機関に受け入れを断られ、死亡した事例もあります。 日本共産党の山下よしき参院議員はこの問題を取り上げ、「政府の低医療費政策の根本転換が必要」と追及しました。投稿者 jcposaka : 2011年02月12日