自然エネルギー 市民の手で 太陽光発電で予測上回る実績 大阪市東淀川区 ECOまち・さわやか発電所 稼働1年半で1万5千キロワット以上 CO2削減効果は年7.4トン(火力発電との比較)
“市民の手で開こう自然エネルギーの未来”。自然エネルギーに関心のある市民や団体の共同出資で、太陽光発電システムを使った「市民共同発電所」プロジェクトに取り組む大阪市東淀川区の市民団体「ECOまちネットワーク・よどがわ」(事務局・大阪経済大学内)。福島第1原発事故を契機に原子力発電所への不安が高まる中、大阪市内初の試みとなる市民共同発電所「ECOまち・さわやか発電所」が、本格稼働から1年6カ月経ち、予測を上回る実績を上げています。
事業費の半分は補助金
さわやか発電所は、3年越しの準備期間を経て2009年12月、同区豊新2丁目の介護老人施設「さわやか苑」の屋上に完成しました。
パネル80枚、出力10`h、年1万`h(一般家庭3軒分)を発電し、年7・4dの二酸化炭素削減効果(火力発電所との比較)があるといいます。
事業費920万円のうち約559万円は、国や市、関西電力の補助金を充て、残りは出資金や寄付で賄いました。
発電量すべてを施設側に買い取ってもらい、出資者への返還金とし、20年で完済する計画です。
「地球に降り注ぐ太陽は無限のエネルギー。太陽光発電の魅力や役割を広げ、市民の財産になればいいですね」。出資者としてプロジェクトに協力する西村貞子さんが語ると、同団体の会計担当・山本容子さんも、「稼働から4月までの累積発電は約1万5322`h。当初の予測を上回る実績です」と笑顔を見せます。
地域活性化とあわせて
ECOまちネットワーク・よどがわは、大阪経済大学地域活性化支援センターの呼び掛けで06年に設立。発電所建設・運営を活動の柱と位置付け、さらに大学生らと連携して、地球温暖化問題や地域活性化などをテーマに「環境まちづくり」の活動を促進しています。これまで市民学習会・見学ツアーに加え、「よどがわ菜の花プロジェクト」「自転車まちづくり」「ECOまちビジネス」など、地域活性化の課題を探ってきました。
大阪経済大学が実施した環境先進国ドイツへの実習旅行もその一環。社会人として一般参加した同会役員の山原和子さんは、「再生可能エネルギーへとシフトする欧州諸国のエネルギー事情を学び、原発と化石燃料に依存した日本のエネルギー政策を根本から転換する必要性を感じた」と振り返ります。
中島大水道から学んで
「より良い地域社会を願う、住民たちの共同の輪が広がっています。地域社会を知ることで、秘めた可能性の大きさを感じることができました」と語るのは、同会役員の藤元百代さん。
昨年5月に企画した「まちあるきイベント」では、江戸時代の農民がつくった農業用排水路「中島大水道」跡を見学しました。
立ち上がった農民たち
中島大水道は、度重なる洪水に苦しんでいた農民たちが、自ら立ち上がり、百姓普請で、わずか50日という短期間で全長9・5`の排水路を掘り抜いたというもの。幕府への直訴を重ねた工事責任者の3人の庄屋は、村と村民を守るため工事完了後に自害。この事実は、いまも区民に語り継がれ、毎年春に顕彰祭りが開かれています。
イベントの案内役は、3庄屋の1人、一鉼太郎兵衛の子孫で同団体会長の一鉼正義さんが務めました。同区に生まれ育ち、区の発展に尽くしてきた一鉼さんが語ります。
「中島大水道は江戸時代の住民運動の“証”。生きるために、農民たちが血と汗を流した歴史から学ぶべき課題は多い。地球の未来を守るため、多くの市民と力を合わせ、自然エネルギー普及と環境に優しいまちづくりの推進に力を尽くしていきたいと思います」
家庭での普及に可能性
ECOまちネットワーク・よどがわ
柏原誠事務局長(大阪経済大学地域政策学科講師)
日本は、自然エネルギーへの補助も間口も狭いという問題があります。
日本の電力会社の自然エネルギー買取価格が安すぎるため、太陽光発電が稼働し続けても、資金回収に長期間を要するというリスクがあり、市民レベルで普及が進まない大きな要因となっています。
現在、政府が検討している『再生可能エネルギーの全量固定買取制度』は、コストに見合った電力買取を電力会社に義務付ける内容で、投資価値も十分に見込めるなど、家庭レベルでの自然エネルギー普及に大きな可能性を広げるものです。
神奈川県では、県がソーラーバンクを作り、市民負担無しに、4年間で200万戸の住宅に太陽光パネルを設置する構想を新知事が発表し、脱原発・再生可能エネルギー促進の動きを進める自治体も出てきています。
大阪府でも、自然エネルギーに対して積極的な政策が進むよう、声を上げていきたいですね。
大阪府も自然エネルギー推進を
市民共同発電所全国フォーラム事務局長.藤永延代さん
大阪市内初の市民共同発電所として期待を集めた「さわやか発電所」は、温暖化防止事業の一環として、社会福祉法人・さわやか苑の屋上に、設置費用約1千万円のすべてを一般市民の供出、国の助成制度・大阪市の補助金・関西電力グリーン基金などを活用し調達しました。
場所選びと資金集めこそが「何のために?」「何で私が?」という問い掛けに答えていく共同発電所運動の真髄で、進める側としても一番鍛えられる場面です。運動の成果は全国に拡がり、いまでは200カ所を超え、総事業費も25億円を超えています。
大阪府知事は「脱原発・自然エネルギー推進」を声高に宣言しましたが、それなら、わずか年間250万円の共同発電所への補助制度を廃止したり、温暖化防止対策も自主に委ねるなどのサボりはやめるべきです。
投稿者 jcposaka : 2011年05月26日