憲法に背く大阪維新の会の定数削減に反対する 府・市議会定数削減ストップヘ府民の共同を
日本共産党大阪府委員会自治体部長 丸野賢治
議員定数の問題と日本国憲法の理念
大幅な削減を府・市議会で
大阪維新の会(代表=橋下徹知事)の府議会会派が、府議会議員定数を現行109から88に削減する条例改正案を5月議会に提案しました。また大阪市議会の大阪維新の会も、現行86の議員定数を69へ削減する条例案を提案するとしています。橋下知事も、「全国で類を見ないような定数削減、(公約で)やると約束したことはどんどんやっていく」と強行の構えです。
議員定数は、地方自治実現の憲法理念にかかわる問題であり、議会制民主主義をどう考えるかという民主主義の重大問題です。決して一党一派の“思惑”で扱ってはならないものです。日本共産党は、憲法に背く民主主義破壊の定数削減にきっぱり反対し、広範な府民の皆さんと共同して、民主主義と地方自治を守るため全力を尽くします。
議会と議員の根拠は憲法に
そもそも地方議会と地方議員は、誰のために、何をするために存在するのでしょうか。その根拠は憲法に由来します。憲法93条は、地方自治体に議会を設置すること、自治体の首長と議員は住民が直接選挙で選ぶことを定めています。
憲法の規定を受けて地方自治法は人口ごとの議員定数の上限を定めており、大阪府議会は120人、大阪市議会は96人です。地方自治法でいう定数とはこの上限規定のことであり、議員定数はこの規定を基本に「特別の事情がある場合に減員することができる」とされてきました。
地方分権一括法で、「議員定数は条例で決めることができる」と改訂されましたが、あくまでも議員定数は憲法と地方自治法の精神を基本にして、その上で自治体の「特別の事情」を考慮して検討されるべきであることには変わりはありません。
民意の反映と行政チェック
こうして、国民が少なくない経費をかけて選挙し、議員を在職させるのは、第1に地方議員を通じて住民の行政需要を的確に把握し、それを地方行政の制度・運営に反映させるためです。第2に行財政権を一手に握っているため専横に陥りやすい首長を監視させ、行き過ぎをチェックさせるためです。
住民が、行政に施策の実施を迫ったり、行政をチェックする道は、首長の不信任の直接請求や、住民投票などの方法もありますが、議員を選んで要求を実現し、行政の専横を日常的、継続的にチェックさせることが、憲法が定めた重要で基本的な権利です。
定数の問題を考える基本は
「議員数は少なければ少ないほどいい」というやみくもな「議員定数削減」は、住民の声を議会に反映する道を閉ざす民主主義への逆行です。議員の定数は、「住民の中にある多様な意見や要求が議会に正しく反映されるには、どれくらいの規模が必要か」という基本的な「物差し」で決めるべきです。
2005年3月、全国都道府県議長会が設置した学識者、有識者で構成する「都道府県議会制度調査会」は、次のように提言しています。
「議員定数については、次のように考えられるべきである。議会は地域における政治の機関であり行政体制の一部ではない。したがって、議員定数の問題は、単に行政の簡素合理化と同じ観点からのみ論ずる問題ではない」
「議員定数は、議会の審議能力、住民意思の適正な反映を確保することを基本とすべきであり、議会の役割がますます重要になっている現状においては、単純な定数の一律削減論は適当ではない。また、競って定数削減を行うことは、地域における少数意見を排除することになりかねない点にも留意すべきである」
議員が「住民の要望、意見を行政にきちんと反映しているか」「行政のチェックをきちんと果たしているか」という2つの仕事を期待どおり果たしているか、運営に無駄はないかということは大事な問題ですが、議員定数問題とは別に真摯(しんし)に検討する必要があります。
大阪維新の会の「経費削減」を目的にした大幅な定数削減は、憲法と地方自治法の精神を全く考慮の対象としない危険な提案と言わなければなりません。
知事と維新の会の本当の狙いは何か
多様な意見が反映されない
大阪維新の会の大幅な定数削減は、選挙制度の上からもきわめて反民主主義的な結果をもたらすものです。
大阪維新の会の大阪府議会定数削減案は、現行の62の選挙区を維持しながら、人口10万人に議員1人を基本とするもので、府下48の選挙区が1人区となり、2人区を加えると9割にもなります。これでは比較多数を得た党派が圧倒的な議席を占めることになり、府民の多様な意見や要求は議席に反映されなくなります。ちなみに4月の府議選の結果を定数削減案に当てはめれば、維新の会は実に61%の議席を占めることになります。
もともと選挙制度は、国民の民意が議席に正しく反映する、これが最大の基準です。民意を議席に正しく反映させることは、地方自治の本旨である住民自治を発展させるためにも重視されなければならない基準です。
死票も増えます。4月のいっせい地方選挙の結果で試算しても、現行定数での府平均の死票率29%が、大阪維新の会案では40%台に急増し、選挙区によっては70%に達するところも出現します。実に7割もの住民の意見が議席に反映しないという事態になります。
本当の無駄を削減してこそ
大阪維新の会は、議員定数削減の目的について「経費の削減」としていますが、これは本当の狙いを隠した大きなごまかしです。
大阪府議会の議員の人件費(報酬、期末手当、共済負担金)は現在17億9千万円(H23年度予算)で、1人あたり1642万円、政務調査費700万円で、合計約2300万円です(このほか議員経費は選挙費用などがあるが個人の経費に限る)。21人減らすと、4億8千万円になります。確かに大きな経費ではありますが、民主主義実現のコストとして削減に値するものでしょうか。
無駄な経費の削減は当然です。経費削減というなら、約100億円もかけて購入しながら、防災機能の欠陥が明らかになった咲洲庁舎(旧WTCビル)など、府税の無駄使いなどを徹底してカットすべきです。
府民を遠ざけ大阪府解体へ
大阪維新の会の本当の狙いは、大阪府議会から住民を徹底して遠ざけ、少数意見排除の「民意の集約機関」につくり替えようとするものです。橋下知事はかねがね、大阪府の仕事から、地方自治体本来の仕事である「福祉の増進」の仕事を排除して、大企業の為のインフラ整備に特化していくことを主張しています。福祉の増進を求める「府民の声は邪魔」というわけです。大幅な定数削減は、橋下知事の「大阪府解体」を支える議会を強制的につくろうとするものです。
日本共産党は、大阪維新の会の大幅な定数削減に反対し府民の民意を反映する府議会と、選挙制度を目指して全力を尽くします。(まるの・けんじ)
投稿者 jcposaka : 2011年06月13日