無保険の子 2千人超 大阪市国保 滞納者へ人権無視の制裁=@完納しても保険証未送付のケースも 運転資金差し押さえで営業できない
高額な保険料と滞納者の財産差し押えが各地で問題になっている国民健康保険(国保)。大阪市ではこの5月の大型連休中に2千人を超える子どもが無保険状態に置かれるなど、収納率を高めようとする自治体の対応が、子どもの医療を受ける権利を侵害。また資産差し押えで自営業者の営業を破壊しかねない事態も招いています。
大阪社会保障推進協議会(大阪社保協)の調べによると、大阪市では、ことし5月のゴールデンウィーク期間中に、国保加入世帯の子ども2128人が無保険状態でした。
また同月、大阪市が小学生に国民健康保険(国保)証を交付せず、医療機関の窓口で医療費の全額を支払わせていたことが、このほど新たに分かりました。
大阪市浪速区で喫茶店を経営する男性(51)は、08年から国保料を滞納し、短期保険証を交付されていました。
所得の6分の1保険料に消える
4人家族で年間所得が300万円余りの男性に対し、保険料は年間50万円以上。これに国民年金保険料(2人分)を合わせると、年86万円の負担になります。
3年余りで滞納額は97万円、延滞金と合計137万円に膨れ上がりました。男性は「このままでは駄目だ」と定期預金を取り崩すなどし、11年3月末までに全額を納付しました。しかし新しい保険証は、短期証の有効期限4月末を過ぎても届きませんでした。
5月2日、長女(11)が発熱し咳も止まらず、病院へ行くため、区役所へ電話して保険証を発行するよう相談。しかし担当者は区役所まで取りに来るよう指導しただけ。病院からの問い合わせにも、担当者は「窓口に取りに来ていない」と弁明しました。
保険証が郵送で届いたのは、同月5日。発送日は2日でした。「子どもの命をなんだと思っているのか」と男性は怒ります。
国民年金払うと残るのは10万円
大阪市中央区で着物の着付け・レンタル店を経営する女性(55)は、政策金融公庫から融資された運転資金300万円の入った銀行預金を、昨年11月に大阪市に差し押さえられました。着物の買い付けができなくなり、「頭が真っ白になった」と話します。
5年前から保険料納付が苦しくなり、区役所の進めで毎月2万円の分割納付を始めました。残りは滞納になって、延滞金と合わせて60万円近くになっていました。滞納保険料は納付しましたが、ことしは震災の影響でさまざまなイベントが中止され、顧客が着物を着る機会が減り、売り上げは落ちる一方です。
昨年の所得は約180万円。長女(32)は社会保険に加入していますが、長男(22)を扶養しており、保険料は年28万円。「国民年金を払ったら月10万円も手元に残らない。どう考えても高すぎる」と話します。
生存権侵害する差し押さえやめよ
保険料引き下げ・国庫負担引き上げ 運動大きく
国保差し押え問題大学習会に126人
大阪社保協は8日に大阪市中央区の大商連会館で「国保差し押さえ問題大学習会」を開きました。
差し押さえの法的根拠や判例を解説した京橋共同法律事務所の楠晋一弁護士は、「滞納者にも生存権はあり、身ぐるみはいでいいとはならない。憲法に守られている。運動を結果に結びつけていく努力が必要だ」と話しました。
学資保険の差し押さえは大阪市や松原市、門真市で多く発生しています。
「学資保険差し押さえは、滞納世帯に財産がほとんどないことの現れ」と話す三重短期大学の長友薫輝准教授は、「住民を納税者、地域の消費者として育てるという視点が自治体には不可欠」と指摘。また、「国民皆保険体制を維持するためには国庫負担増額は避けられない」と述べました。
国保料下げた
共産党と市民の運動実る
一般会計からの繰り入れ・軽減制度創設も
寝屋川市
寝屋川市は11年度の保険料を引き下げました。
当初は引き上げる公算が強まっていましたが、4月のいっせい地方選挙で引き下げを訴える日本共産党5候補が定数4減の中で全員当選。市長選挙でも長野くに子氏が引き下げを掲げる中、現職が公約に追加しました。
ただし、引き下げ幅は狭く、子どもが多い世帯など逆に負担が増える場合もあるため、同党議員団は「市民が払いやすい、目に見える引き下げを」と求めています。
堺市
堺市でも今年度、前年度に比べて年間1人4500円〜4700円引き下げ、前年度はゼロだった一般会計からの法定繰り入れが7500万円になりました。国保料引き下げを求めた市民団体の請願署名は07年から3万人を超え、唯一引き下げを求めていた日本共産党との共同の運動で実現したものです。
八尾市
八尾市では、3月議会で市長の保険料引き上げが、日本共産党を除く会派の賛成で可決。しかし4月の選挙中、日本共産党と永井きみ子市長候補が国保料引き上げやめよと訴え、定数4減の中で、同党6候補が全員当選し、市民団体も緊急請願署名を行う中で、6月議会で引き上げをストップ、保険料の軽減制度を創設させました。
「国保なんでも110番」
23日(木)9時〜21時 大阪社保協
大阪社保協は23日(木)午前9時から午後9時まで、「国保なんでも110番」を行います。特設電話は、06・6768・3070。
前回1月21日の「110番」は159件。「夫が脱腸で医者にかかりたいが無保険」など、深刻な相談が寄せられました。(
2011年6月19日付「大阪民主新報」より
投稿者 jcposaka : 2011年06月18日