復興と救援 原発ゼロへ 国民的討論と運動交流を 共産党が府民フォーラム
日本共産党大阪府委員会は18日、小池晃党政策委員長を迎えて「救援・復興と原発からの撤退を求める府民フォーラム」を開きました。被災者救援と震災復興、原発ゼロの日本社会実現を目指し日本共産党が発表した政策提言について、国民的討論と運動の交流を広げようと開かれたもの。大阪市此花区内の会場は詰め掛けた185人でいっぱいになり、モニター中継した第2会場も人であふれました。
開会あいさつで勝田保広・党府副委員長は、100日目を迎えた被災地の現状に触れながら、「1日も早い復興・救援に力を尽くしたい」と述べ、3次にわたる政策提言を行っていることを紹介。「復興への希望が持てる施策の前進と併せ、原発からの撤退の決断を政府に迫っていく国民的な大運動を大きく広げていきたい」と述べました。 小池氏は日本共産党が5月17日に発表した「大震災・原発災害にあたっての提言(第2次)」と、6月13日発表した「原発からのすみやかな撤退、自然エネルギーの本格的導入を―国民的合意と討論を呼びかけます」に沿って報告。この中で小池氏は、「救援・復興の基本は、被災者が再出発できる生活と産業基盤の支援」だと強調。現在の技術水準では安全な原発をつくることはできないと述べ、5年から10年以内に原発ゼロのプログラムを策定し進めていこうと提案していると述べました。(別項) 大阪母親大会連絡会の植田晃子委員長は、2800人が参加した大阪母親大会での震災と原発問題をめぐる議論などを紹介。核の被害から子どもたちを守り平和な世界を実現しようと始まった母親大会の歴史に触れながら、「被災者の立場に立った復興・救援、自然エネルギーへの政策転換を求めて大阪中の女性、母親と力を合わせていきたい」と訴えました。再生可能なエネルギーの普及へ
視覚障害被災者への支援ネットワーク「インタッチ」を立ち上げた視覚障害者のための専用ラジオ局「JBS日本福祉放送」の川越利信さんは、被災地でラジオを届けたり、地元新聞社などと提携して情報発信する活動を紹介。行政による実効ある津波対策強化や正確な原発情報公開など、立場の弱い障害者が守られる防災に強い社会づくりを訴えました。
自然エネルギー市民の会の藤永延代さんは、福島原発事故で20代の青年労働者が高濃度の放射線で被ばくした重大事故に触れ、「人を使い捨てにするような社会は、絶対に変えていかなければならない」と強調。世界有数の地震国・日本に原発は不向きだとし、日本で再生可能エネルギーを普及するために、電力事業のあり方やエネルギー政策を転換する必要性を訴えました。
ボランティアや医療支援を報告
民青同盟大阪府委員会の伊木智史委員長は、5月に実施した被災地ボランティアの経験を報告。被災者支援と原発ゼロ社会の実現と合わせ、若者が人間らしく働ける社会にしていく運動を大きく広げたいと述べました。
大阪民主医療機関連合会の是枝一成さんは、大阪から170人を被災地に派遣し医療支援を行ったと発言。介護面での支援強化と合わせ、全国どこでも安心できる医療体制の確立が求められていると訴えました。
被災者が再出発できる生活支援と産業基盤の支援を
小池政策委員長が報告
権力闘争やめ問題の解決を
小池氏はまず、震災後に被災地の病院に泊まり込んで医療・救援活動に取り組んだ経験や、2次提言を作成した5月、志位委員長らと宮城、福島、岩手の3県を回った活動に触れながら、「被災地はがれきの処理も進んでおらず、原発事故の収束もままならない。まさに現地は救援活動のまっただ中だ。中央政界のでたらめな権力争いはやめ、被災地が直面している問題を解決する内容を持った2次補正予算をつくるべきだし、そのためには会期延長も必要だ」と強調しました。
マイナスでなくゼロからに
その上で小池氏は、避難所などで聞いた被災者の声として、「2カ月頑張ってきたがもう気持ちが折れそうになっている」と語る農家の苦悩や、津波で新居が流され2400万円の住宅ローンが残されたケースを紹介。「生活再建への被災者の思いは、“マイナスではなくせめてゼロからスタートさせてくれ”という切実なものだ。この声に政治が応えなければならない」と述べ、救援活動に全力を挙げるとともに、住民合意を大切にし、地域ごとの歴史的・地理的条件、産業構造の違いを考慮して、被災者が再出発できる生活支援と産業基盤の支援を、国家的プロジェクトとして進める必要があると述べました。
中小企業支援策について、債務凍結や返済不要の事業立ち上げの資金供給などきめ細かい対策が必要と指摘。2重ローン問題で政府が対策を打ち出したのは“一歩前進”としつつ、門前払いのケースが出る可能性を指摘しました。
会長の年収の半分で守れる
雇用問題では、宮城県高城市のソニー工場で正社員280人が広域配転となり、150人の期間社員が雇い止めになった問題に言及。共産党の国会質問で厚生労働相が、「工場流失を理由に解雇はできない」と答弁した点を強調。巨額報酬を得ている会長の年収の半額で期間社員の雇用を守ることができるとし、「大企業は社会的責任を果たさなければならない」と訴えました。
被災者にのしかかる消費税
復興財源で、政府・財界が消費税増税を打ち出している点を厳しく批判。「被災者にも重くのしかかる消費税は、絶対に引き上げるのは反対だ」とし、在日米軍思いやり予算や政党助成金など予算組み替え、大企業の巨額ため込み金を復興に活用することが重要だと訴えました。
原発技術そのものが未完成
原発問題で小池氏は、原発事故が他の事故とは違って、大規模で深刻な影響を及ぼす「異質の危険」を有する問題や、「軽水炉」型原発が持つ構造的欠陥、使用済み核燃料の処分方法さえ確立されていない問題など、原発技術そのものが未完成である課題を詳述。
世界的には原発廃炉までの平均稼働が22年間なのに対し、日本では54基の原発のうち、すでに3基が40年を超え、16基が30年を超えて稼働していると指摘、「安全対策で停止中の原発を動かすとする政府の方針は、新たな“安全神話”に突き進もうとするものだ」と痛烈に批判しました。
まちづくりや仕事興しにも
小池氏は、太陽光、中・小規模水力、地熱発電や風力発電など日本で活用可能な再生可能エネルギーは、原発54基の40倍の力を持っているとの環境省の報告を紹介。自然エネルギーの活用は、地域の仕事起こしやまちづくりにつながると強調。高知県梼原(ゆすはら)町が、風力発電を中心に中規模・小規模の水力発電や太陽光パネル、バイオ燃料、地熱発電などでエネルギー自給率100%を目指し、間伐促進による雇用拡大や地域起こしにもつながる豊かな経験を紹介しました。
転換は世界の大きな流れに
世界で広がる脱原発の流れについて、ドイツは2022年までに原発から撤退し、自然エネルギーの割合を現在の16%から20年に35%、50年までに80%にしようと計画。電力の40%を原発に依存するスイスも撤退を決め、国民投票で圧倒的多数が原発撤退を選んだイタリアの動きを紹介。小池氏は「原発から自然エネルギーへの転換の流れは、世界の大きな流れになりつつあります。原発ゼロの日本に向かって、運動を広げていこう」と呼び掛けました。(2011年6月26日付け「大阪民主新報」より)
投稿者 jcposaka : 2011年06月25日