現代版「踏み絵」 橋下市長が思想調査 全職員に政治活動と組合加入の有無問う「憲法違反」抗議相次ぐ
橋下徹大阪市長は市役所全職員に対し、「特定の政治家を応援する活動に参加したことがあるか」などを問う思想調査を業務命令で実施。正確に回答しない職員は処分、「不適切」な行為を申告した職員は処分を軽減するとまでしており、労組は緊急の抗議宣伝や集会を開催。「現代の『踏み絵』」「大阪市役所恐怖政治をもたらすもの」「ものいえぬ職場で市民サービスも低下する」など、府内各団体からもいっせいに抗議と中止を求める声が上がっています。
問題のアンケートは、「労使関係に関する職員のアンケート調査」。「橋下徹」と直筆の墨字で書かれた9日付け文書を添付し、「任意の調査ではありません。市長の業務命令」として回答を求め、「正確な回答がなされない場合には処分の対象」、「自らの違法行為について、真実を報告した場合、懲戒処分の標準的な量定を軽減」するとしています。
回答期限は10日から16日。氏名や職員番号、所属部署を記入する記名式で、用紙での回答は受け付けず、各質問項目に答えなければ先に進めないインターネットサイトでの回答を義務付けています。
質問22項目こと細かく
質問は22項目で、組合加入の有無や加入を誘われたことがあるか、ある場合は誘った人の名前まで回答を求めています。
また、「特定の政治家を応援する活動(求めに応じて、知り合いの住所等を知らせたり、街頭演説を聞いたりする活動も含む。)に参加したこと」があるかどうかを問い、参加の場合は、「自分の意思」「組合から誘われた」「組合以外の者(職場の上司)から誘われた」のいずれかを選ばせ、活動内容や誘った人の名前、誘われた場所、時間帯まで書く欄を設けています。
職場の関係者から、特定の政治家に投票するよう要請されたことがあるかどうかを尋ね、要請者、場所、時間帯も記入。知人や親戚などの情報を提供する「紹介カード」を配布されことがあるかどうかも問い、「受け取った」人には、返却したかどうか、返却した人にはその理由まで尋ねています。
さらに先の政治活動を「誘った人」や投票を「要請した人」などの名前については、設問の都度、「通報窓口に無記名で情報提供していただくことも可能」と、匿名での情報提供も求めています。
処分で脅す恐怖政治
即時中止・データ廃棄を
橋下市長の異常なアンケート調査に対して、法律家団体や労働組合などから、抗議と即時中止を求める声明や市長宛ての抗議文が相次いでいます。
大阪弁護士会
大阪弁護士会は会長声明で、大阪市職員の思想信条、政治活動の自由や労働基本権などを侵害する調査項目について、「職務命令、処分等の威嚇力を利用して職員に回答を強制するもので、到底許されるものではない」と指弾しています。
民主法律協会
民主法律家協会は、「回答するか否かによって市長への忠誠さを示す『踏み絵』まがいの調査」と批判しています。
大阪市労組
全労連・大阪市役所労働組合(竹村博子委員長)は、アンケート中止を求める声明を発表。声明では、同調査が、「思想調査であり、プライバシー侵害の憲法違反の内容」であり「組合活動への不当な弾圧」だと批判。職員を処分で脅し、住民福祉の向上に努める全体の奉仕者から、橋下市長の顔色をうかがうだけの物言えぬ職員を生み出すと指摘するとともに、職務の遂行と関係のないアンケートへの回答を命令することは、違法、無効で、すでになされた回答は破棄するよう求めています。
市労組は13日、大阪府関係職員労働組合や大阪教職員組合と共に市役所前で宣伝。アンケートの不当性を訴えるニュースを配りました。
大阪自治労連
大阪自治労連(前田仁美委員長)は、荒田功書記長名で談話を発表。アンケートが、「職員のプライバシーや思想信条の自由、組合活動の自由を侵害する明白な違憲行為であり、市長としての職権乱用」で不当労働行為そのものだと指摘。思想信条の侵害と不当な労働組合への弾圧を狙う「思想調査」をただちに中止をと求めています。
共産党府委
日本共産党大阪府委員会の勝田保広副委員長は談話を発表しました。
憲法第19条が保障する「思想・良心の自由」を踏みにじる憲法違反の行為、「思想調査」であるとともに、労働組合に対する支配介入そのものを示す不当労働行為であり、憲法28条が定める労働基本権を踏みにじるものだと指摘。さらにこれを「職員の職務上に関するもの」に限られた市長の「業務命令」(地方公務員法32条)として強制することは言語道断だと厳しく批判しています。
さらに「橋下氏と『大阪維新の会』による『大阪市役所恐怖政治』をもたらすものにほかなりません」とし、今回のアンケート調査は、橋下・維新の会の狙う市政の姿、とりわけ「教育基本条例案」「職員基本条例案」が通ればどうなるかを浮き彫りにしたものだと指摘。ただちに調査を中止し、回収データの即時廃棄を求めるとともに、2条例案の成立をストップさせるたたかいに総力を挙げるとしています。
新婦人
新日本婦人の会大阪府本部は、「職員同士を疑心暗鬼にさせ、ものいえぬ職場になり、ひいては市民サービスの低下はまぬがれえない」と厳しく批判。
AALA
大阪府アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会は、職員の思想信条、組合活動の自由、個人のプライバシーを「公権力によって蹂躙する犯罪的行為」と橋下市長あての抗議文で述べています。
連合系労組が救済申し立て
連合系の大阪市労働組合連合会(市労連)は13日、大阪市中央区内で1千人規模の集会を開催。同日、府労委に不当労働行為の救済を申し立てました。(2012年2月19日付「大阪民主新報」より)
投稿者 jcposaka : 2012年02月11日