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シリーズ これが自治体のやることか 橋下「改革」の現場から 最終回.地域福祉事業補助の廃止

2012年07月21日

地域の絆≠壊す「改革プラン」

 「いつも必ず誰かに見守られているような気がするんです」
 大阪市城東区に住むAさん(80)は夫を亡くしてすでに8年。それでも1人暮らしの寂しさを感じたことがないと笑います。毎月数回、1人暮らしのお年寄りらが温かい食事を楽しむ「食事サービス事業(ふれあい型)」には決まって参加しています。

草の根の絆で築かれた事業

 高齢者を含む世帯のうち、独居世帯の割合が41・1%(全国24・8%)と高い大阪市。同食事事業は独居世帯の約17%、約3万1千人が利用し、約1万4千人のボランティアが運営する草の根の“絆”で築かれた事業です。
 食事会の会場は自宅から10分ほどの「老人憩の家」。健康づくりも兼ねて歩いていきます。準備や配膳などをするボランティアは近所の主婦ら町会関係者が中心で、顔を合わせると「何か変わったことない?」と声を掛けてもらいます。
 自宅の冷蔵庫には、「安心カプセル」が入っています。「もしも」のときの救急処置の際に役立てる目的で、地域の社会福祉協議会(社協)などが進めているもの。健康状態と服用中の薬の名前などを記載。「長生きするのもしんどいなぁと思ったこともあったんですよ。でも暮らしと安全を守ろうという皆さんの取り組みがあるから、本当にありがたいなと思いますね」

地域福祉支える事業も対象

 橋下市長が進める市政改革プランは、市民サービスを3年間で大幅削減する、全世代にわたる攻撃です。当初計画では「廃止」とされていた老人憩の家の運営補助(1カ所年間43万円)は大幅カット、独居高齢者の食事サービス事業の補助もカットされ、地域福祉の事務局機能を担うネットワーク推進員への補助も、削減対象となっています。地域の人たちが専門的な研修を重ね、老人憩の家などを拠点に地域のお年寄りの実態を把握し、日常的に支援を進めています。
 これらの地域福祉を支えてきた多くの事業がいま、補助廃止など見直しの対象となっていることに、関係者の中に批判が高まっています。

年間1万人の参加あるのに

 「地域社会では“絆”をつなぐための多くの取り組みが進められています。橋下市長の“改革”は、何より大切な地域の“絆”を壊すものではないでしょうか」
 こう語気を強めるのは、大阪市城東区内のある振興町会長の男性(72)です。
 地域の安全対策を進める目的の「青色防犯パトロール活動」で、6月から日中だけでなく夜間(午後8〜10時)の活動もスタート。さらに災害時の安全対策として、夜間の泊まり込み避難訓練も実施。乳幼児のいる親子の集いから高齢者のカラオケ大会など、老人憩の家で開かれる行事には、年間約1万人が参加しています。
 男性町会長は、こうした粘り強く続けられた活動があったからこそ、地域の安全が守られていると言います。
 「決して銭金の問題でなく、町会活動に参加する多くの人たちが、地域の暮らしを守ろうと必死に頑張っていることを知ってほしいんです。そうでないとボランティアはどんどん離れ、地域の福祉はあっという間に崩壊してしまいますよ」

多くの怒りの声さらに広げ

 「行政と二人三脚で進めてきた地域福祉の歴史の危機です。たたかいはこれからですよ」
 ある区の連合振興町会の婦人部長が訴えます。
 長く地元自民党市議の後援会幹部を務め、市議の「維新の会」鞍替えに「違和感」を感じ、いまでは政治活動には関わらないようになりました。
 「改革プランの素案が出た時、“声を出さなきゃ”と知り合いみんなにパブリックコメントを出そうと呼び掛けたんです。“自民党だったあなたが?”とびっくりされたけど、そんなことを気にしているときじゃない。町会や民生委員、社協など多くの方が怒っています。この声を広げていかなければならないと思います」(2012年7月22日付「大阪民主新報」より)

投稿者 jcposaka : 2012年07月21日

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