大阪市「政治活動制限条例案」 世界の流れに逆行 山中議員が撤回迫る
20日の大阪市議会財政総務委員会で日本共産党の山中智子議員が、橋下徹市長が制定を狙う「大阪市職員の政治活動の制限に関する条例案」について質問しました。
勤務時間外も制限する条例
山中議員はまず、大阪市の中で長年行われてきた労使の癒着や勤務時間内の選挙動員などを、しかるべき法と規則で正すことは当然だと主張しました。その上で、表現の自由が基本的人権の中で大切な中で、プライベートな時間まで職員の政治的行為を制限する条例は制定すべきでないと述べました。
山中議員は条例制定の目的とされている「公務員の政治的中立性を揺るがす事象が生じている」(第1条)とは具体的に何を指すのかと質問。橋下市長は、第三者調査チームが4月に出した報告書で、区役所内で特定候補を支持する「紹介カード」を把握したり、区長会議で選挙情勢を報告していた事例を挙げているとし、「法適用上はグレーだが、グレーだから許すのではなく、グレーだからしっかりただすべき」と答えました。
山中議員は、地方公務員法にある職務専念義務違反などを適用すれば事足りるもので、条例によって職員のプライベートな時間まで政治的行為を規制しなければならない行為だとは報告書には書いていないと指摘。橋下市長は「国家公務員法に問題があることは分かっている」としつつ、(大阪市で)独自のルールをつくるより、国家公務員法(が禁止する政治行為を)をそのまま引用した」と述べました。
修正されて成立した地公法
山中議員は、国家公務員法は1947年10月に制定されたが、占領軍の対日政策が変化する中で48年の改定ですべての政治的行為が規制されたことや、地方公務員法に国家公務員法と同じ規制を持ち込むことは人権じゅうりんになるとして修正して制定されたと指摘しました。
また山中議員は、08年に国連規約人権委員会が日本政府に対し、国家公務員法をめぐり「表現の自由や公的な活動に参加する権利を不合理に制限している法律を撤回すべき」と勧告していることを紹介。「時代の流れや世界の環境からも、一日も速く撤廃しなければいけない国家公務員法を引き写しにするような条例は制定すべきではない」と強調しました。
議論委ねると論点すり替え
橋下市長は「国家公務員法を引用して、問題点は国の議論に委ねていきたい」と話をすり替え。山中議員は「時代錯誤の、表現の自由をなくしてしまうような条例は制定すべきではない」「どう喝によって『忠実に市長の言うことを聞きなさい』と、命令に抵抗するような職員や労組は徹底排除する本当に許されない姿勢が表れた条例案だ」と述べ、重ねて撤回を要求しました。
ブレーン政治♂めよ
特別顧問・参与問題
小川議員が主張
20日開かれた大阪市議会財政総務委員会で日本共産党の小川陽太議員は、橋下徹市長が就任以来、市政の重要課題について委嘱されている特別顧問・特別参与に対して、市民から提出された陳情を基に質問しました。
小川議員は「陳情者は、特別顧問・参与は市場原理主義的な構成がとられすぎ、公務員や公選職でない者が市政に発言力を持ちすぎているのは危険と指摘している」と述べて、陳情の採択を求めました。
市当局は、昨年から延べで特別顧問19人、特別参与68人の計87人に委嘱し、特別顧問には謝礼・交通費として11年度は845万円、12年度はことし4月末確定分だけで317万円支払っていると説明。平松前市政は特別顧問3人だけで、非常勤嘱託の位置付けでした。
小川議員は横浜、名古屋、神戸の3政令市にも外部有識者が政策立案で助言する制度があるが、神戸市の「政策提言会議」には商店街関係者も入っていることなどを示し、「大阪市の特別顧問・特別参与が担うものは非常に特異だ」と指摘。「府市統合本部」を舞台に、慶応義塾大学教授の上山信一氏らが、地下鉄民営化や市バス路線の再編を決めていると批判しました。
市長の意向に沿いトップダウン
市バス路線の再編で小川議員は、58路線は民営化を前提とし、残る81路線はいったん廃止し、公募区長があり方を決めるとしている問題に言及。「平野区加美地域は地下鉄もなく、バスが再編されると、区民が区役所に行く手段が寸断される。結局、市民の声が届かない。市長の意向に沿ったトップダウンの政策を補完するのが、特別顧問・特別参与。この制度を根っこから見直し、市民の声を正確にくみ取る仕組みをつくるべき」と主張しました。
さらに公募区長が特別参与を委嘱することも可能になっていることについて小川議員は、「市民は自らの思いが市政に反映される基礎自治体を望んでいる。ブレーン政治は改めるべき」と語りました。
広範な規制.多大な委縮効果
政治活動制限条例案に反対
大阪弁護士会会長が声明
大阪弁護士会の藪野恒明会長が20日、大阪市の「職員の政治的行為の制限に関する条例案」に反対する声明を発表しました。
声明では、同条例案は市職員に対し、憲法第19条、21条で認められた思想良心の自由、集会・結社・表現の自由に地方公務員法の規制を超えて厳しい制限を課すもので、憲法・地方公務員法に反する疑いがあると指摘。さらに条例案にある「過度に広範かつ不明確な規制は、民主主義の根幹である表現の自由、政治活動の自由に対して、多大な萎縮的効果をもたらすもの」で、違憲の疑いがあるとしています。
条例案がならった国家公務員法の刑事罰の適用についても東京高裁で違憲判断が出ており、公務員への広範な政治的行為の規制は見直しが迫られていることに、条例案は逆行していると指摘。懲戒処分も、刑事罰よりも重大な不利益を受ける可能性があるとするとともに、条例をつくるべき立法事実についても疑問があるとしています。(2012年7月29日付「大阪民主新報」より)
投稿者 jcposaka : 2012年07月28日