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医療から遠ざける 国保広域化 国は責任放棄 保険料アップの自治体続出 高すぎて保険料払えない 保険証取り上げ155万世帯

2013年03月24日

 かつては自営業者や高齢者、いまでは非正規労働者や失業者も多く加入する国民健康保険(国保)。加入世帯の約4分の1が滞納するほど、高すぎる保険料、行政による過酷な取り立てが、医療費窓口負担の増大とあいまって、ますます住民を医療から遠ざけています。
 守口市の例では12年度保険料は、4人家族(40代夫婦と未成年の子2人)で給与所得控除などを差し引いた年間所得が300万円の場合、年間保険料は約66万円にもなります。
 滞納世帯は11年度、全国の国保加入世帯の20%に達し、正規の保険証を取り上げられ短期証や資格証明書を交付されている世帯は155万世帯に上っています。

国の責任後退

 歴代政権は1984年の国保法改悪で医療費に対する国庫負担金を引き下げ、その後も国の責任を後退させ続けてきました。国保の総収入に占める国庫支出割合は80年度57・5%から2010年度は25・6%へ半減しています。
 国保料の収納率の低い自治体や、保険給付費が国の基準を超える自治体には、交付金減額のペナルティーが課されてきました。2010年の法改定で、その権限が国から都道府県へと委譲。市町村間の国保の財政力の不均衡を調整するために交付する調整交付金(給付費の7%)は、都道府県が定める「広域化等支援方針」の達成状況に応じて、知事が配分を決めることになりました。
 また、11年度には、それまで自治体によって異なっていた国保料の所得割の計算方式を統一するために法を改定。さらに13年度には、扶養家族なども考慮しない方式に一本化される見通しで、子どもが多い世帯などは、より負担が大きくなります。
 大阪府の「支援方針」では、「一般会計からの繰り入れ金を財源に充てることは望ましくない」とし、保険料を低く抑える目的での繰り入れは廃止すべきと規定。さらに、府調整交付金の配分を決める際、各市町村の「財政の健全性の確保・向上」、「広域化の推進」などを採点。「不適正な一般会計繰り入れを行った市町村」はマイナス20点、「滞納処分を強化している市町村」はプラス10点とするなど、いまでさえ高い保険料の高騰や、問答無用の保険料徴収を招く内容で、まさに国の悪政を先取りするものとなっています。

値上げへ圧力

 また、市町村と国保組合からなる府国保連合会に、市町村からの拠出金で基金をつくり、高額医療費の給付費を交付する事業を開始。15年度からはこれをレセプト(診療報酬明細書)1円以上からに改定することで、事実上、国保財政は都道府県単位化され、国の責任がますます後退します。
 大阪社保協が取り寄せた府の資料によれば、11年度、大阪市への交付金から拠出金を引くと約14億円のプラス。貝塚市2億1千万円、泉佐野市1億4千万円、守口市8千万円が続きます。府内43市町村のうち、拠出金を上回る交付金を受けているのは14市町のみで、残りはマイナスとなっています。
 加入世帯の平均所得が高い自治体や国保料収納率の低い自治体は交付金を減らされ、高槻市など保険料を引き上げざるを得ないよう、追い込まれる自治体が生まれています。

福祉壊す差し押さえ

 負担能力があるにもかかわらず保険料を納めない「悪質」な加入世帯へ実施される財産調査や差し押さえを、生活苦から保険料を滞納せざるを得ない世帯にまで乱発する自治体が増えています。
 大阪市内で重度の知的障害のある息子と妻の3人で暮らす男性は、2月に大阪市から預金の差し押さえ予告を受けました。口座には障害のある児童を育てる父母に支給される特別児童扶養手当が入金されています。
 滞納保険料は今年度分の保険料計約21万円。来年度中に完納する分割納付を夫婦が申し出ても、担当者は10万円を即納付するよう要求しました。
 特別児童扶養手当は、児童の福祉増進を目的に月3万3570〜5万400円を、1年に3回、一度に4カ月分が口座に振り込まれます。
 特別児童扶養手当は差し押さえが禁じられていますが、市は「最後に入金された手当以外は預金と見なす」として、次回の入金後は1回分約20万円を差し引いた額を差し押さえできるとしています。この口座には特定児童扶養手当以外の入金はありません。
 男性は、夫婦で理髪店を営み、年間所得は約120万円。その1カ月分となる10万円は簡単には用意できません。自宅兼店舗のローン返済は終えましたが、「自分たちが死んだ後に、子どもに少しでも(財産を)残しておきたい」とも話しています。

国は責任果たせ
日本共産党 参院大阪選挙区候補
たつみコータローさん

 この数年間、私自身が受けた相談の中で特に多かったのが、高すぎる国保料についてでした。とりわけ大阪市の国保料は06年に住民税方式から所得方式へと計算方法が変更され、最大で従来の4倍もの保険料になった世帯もありました。
 母子家庭や年金生活者の保険料が上がり、滞納者には保険証を取り上げるという人権問題にもなりました。
 保険料負担増の大本には、国保財政に占める国庫負担を減らし続けてきたことにあります。今こそ国の責任を果たさせるために、全力を尽くします。

大阪市が国保料3%値上げ
「実態に合った保険料に」日本共産党.北山良三市議

 橋下徹大阪市長は13年度から国保料を3%値上げしようとしています。40歳代夫婦と未成年の子ども2人の4人家族の保険料は、所得200万円の場合は現行38万6千円から39万8千円へと1万2千円アップになります。
 値上げの理由は、府内市町村の08〜12年度の国保料と同じ負担割合(所得比)にするという機械的なもの。大阪市議会の代表質問(6日)で日本共産党の北山良三議員は、国保加入者の平均所得水準は全国平均145万円、府120万円に対し大阪市は95万円と低いことを示し、「社会保障である以上、支払能力に応じた保険料にすべき」と、値上げではなく値下げを要求。橋下市長は市民生活の実態抜きに「大阪市の国保料は飛び抜けて安い」などと言い放ちました。
 15日の大阪市議会民生保健委員会で北山議員は、所得200万(夫婦と子ども2人の4人世帯)の世帯の国保料の負担割合(所得比)は16・2%で、全国20政令市中8位の高さだと指摘し、「飛び抜けて安いと言えるか」と追及。橋下市長は「1人当たりなら安い」などと話のすり替えに終始し、市の担当者も「広域化を見据えて(負担割合を)府内比較した」と値上げを正当化しました。
 北山議員は、「同じ所得200万円でも一人暮らしより4人家族の方が生活が苦しい。収入や所得だけで負担を議論するのは実態に合わない」と厳しく反論。国保料の負担軽減のために一般会計から国保会計に行っている任意繰り入れが215億円(08年度)から179億円(13年度予算案)に削減される一方、国保会計は直近の2年で188億円の黒字だとし、「『めちゃくちゃ安い』という理屈で3%値上げする道はとるべきではない」と主張しました。

投稿者 jcposaka : 2013年03月24日

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