たつみコータローのさわやか対談 「生きづらさ」の背景に社会構造 作家・活動家/「反貧困ネットワーク」副代表 雨宮処凛さん 憲法が生かされる政治にすべき
日本共産党 参院大阪選挙区候補 たつみ コータローさん
共に30代で、格差と貧困問題に取り組んできた作家の雨宮処凛さんと、日本共産党のたつみコータロー参院大阪選挙区候補が対談。活動を通して感じて来たこと、問題解決に必要なことなど語り合いました。
雨宮 私は25歳で物書きデビューしましたが、31歳ぐらいまでは純粋な生きづらさや心の問題などに取り組んでいました。2006年に不安定なプロレタリアートを意味する「プレカリアート」という造語に出会い、問題の背景に社会の構造があることを知りました。 たつみ 生活と健康を守る会事務局を9年やり、7千件の相談を受けました。かわいい女の子が事務所に来たんですが、見ると全部虫歯。お母さんが歯医者に連れて行けてないんですね。ここ数年は若い人の相談が多く、心の問題を抱えて働けず、親の年金で暮らす中で、何で働けへんねやと罵倒されて親子関係がこじれるという例もあります。 雨宮 私が取材した人の中にも、苛酷な職場でいじめに遭ってうつ病になり、実家に帰って生活。親からいつまでだらだらしてるんだと言われ、親への当てつけのように自殺したという例もありました。それを見た時、この親子だけの問題じゃなく社会構造に問題があるという視点が見えてきました。 たつみ 僕たちが就職活動を始めた時は就職氷河期でした。雑誌では、バブルがはじけ、これからは会社人間ではなくて自由に生きるのがトレンドだという情報があふれていました。当時の日経連の方針を見ると、非正規雇用をどんどん増やしていこうと言っていた。同年代には、非正規になって以降、正社員になれていない人が多い。本当に仕組まれたものだったと思いますね。政治のひずみ
雨宮 この間、閣議決定された生活保護改正案、どう思いますか?
たつみ まず水際作戦の合法化という大問題。
雨宮 扶養義務のある人の資産や収入などを、銀行や勤務先まで調査するという項目も異常です。
たつみ 北九州市でおにぎりが食べたいといって男性が餓死した事件がありましたが、私が相談を受けていた4人の子どもさんがいた此花区のシングルマザーは、この間の生活保護バッシングによる精神的負担で自殺されました。
雨宮 去年1月、札幌の姉妹の餓死事件があり、調査に行った時、地元の生活と健康を守る会の人も同行されました。そういうところとつながっていたら絶対餓死しなかっただろうと。でも考えてみると、支援団体が一枚かんでいるかいないかで、生きるか死ぬかが分かれるシステム自体がおかしいんですね。
たつみ 枚方の自動車保有の生活保護裁判で原告完全勝利の大阪地裁判決が出されました。生まれつき股関節に障害をもっておられる女性が、車保有を理由にした保護打ち切りは不当だと立ち上がった裁判です。憲法25条や幸福追求権が生かされた判決でしたが、自立自助、個人の幸福追求権利は、公の利益の前に制限されるという自民党の改憲草案が現行憲法なら、なかった判決じゃないかと思います。
1960年の朝日裁判の判決のように、生活保護の最低基準は予算の有無によって決められるべきでなく、必要な額を予算で配分すべきだという視点、憲法が生かされる政治にすべきなんですね。
雨宮 生活保護にしても働くことにしても、人間が生存することを基準に決められていない。アベノミクスで浮かれたムードになり、内閣支持率が7割ということですが、その安倍内閣が改憲や生活保護引き下げなど、とんでもないことをやっていることがスルー(素通り)されているのが恐ろしいですね。
心に寄り添い
たつみ 今回の円安でも、トヨタの売り上げは上がっているけれど、海外に生産拠点を移しているから、国内の中小企業にはおこぼれはこないという経済構造になっているんですね。
公益社団法人の日本経済研究センターが、日本がなぜデフレになったのかという研究を発表しました。ドイツ、韓国、アメリカと日本を比較して、日本は景気の拡大局面で賃金を引き上げず、非正規雇用を拡大したことで98年頃から賃金がマイナスになり企業貯蓄が増加したと。
雨宮 かつかつだったら消費できないという人を増やしたわけですから、少子化になるのも結婚できないのも当然。政治状況によって取り返しのつかない人生の損失になってしまっているんですね。
労働問題も貧困問題も、人間らしい働き方とか、安定雇用とか言っても、リアリティーが持てない人がたくさんいます。ワーキングプアにとっての既得権益層は生活保護受給者だという、悲しい構造を超えるためには、まずそのいらだちや苦しみに寄り添わないと、言葉が心に届かないと思います。
「届く言葉」で
3・11以降、原発を入り口にして、TPPや貧困問題に興味を持った人も多いです。原発問題は、利権や情報非公開とか、戦後の自民党政治的なものの一番嫌なものが詰まってる。震災以降数百万人ぐらいの人がデモデビューしましたが、官邸前がすごいと思ったのは、どこに行けばいいのか、どこに怒りをぶつけたらいいのか分からない、けれども絶対みんなそう思っているだろうと人を信じて、あの場をつくったら本当に来ちゃったということです。原発がいま一つしか動いていないのも運動の結果だし、普通の人たちが20万人官邸前に集まったら、首相を引きずりだすこともできちゃうという前例をつくったのも歴史的なことです。
たつみ なんでこんな地震の多い国にこれだけの原発があるのか。3・11以降、いかに電力会社がひどく、いかに日本経済システムを握っているのかが見えやすくなり、以前から私たちが言っていた、大企業中心の政治は駄目だとか、企業団体献金を一切もらってないという訴えも、皆さんにすっと入るようになったのを実感します。
雨宮 貧困の問題にかかわっていると、共産党の言っていることとすごい近いんですね。普通に働いたら報われ、それなりに幸せに生きていく権利があるじゃんという、当たり前のことを言うことはとても重要だし、期待しています。
たつみ 一人の人間が普通に働いて、休みの日には家族と遊んだりすることが幸せと思える。そういうことさえままならなかったり、バリバリ働かないと、国際競争力に負けちゃ駄目だと思わされていることは、ものすごく不幸だと思います。この国の主人公は私たち国民なんだということを堂々と掲げて、「届く言葉」で訴えていきたいと思います。
あまみや・かりん 1975年、北海道生まれ。作家・活動家。自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版)でデビュー。『生きさせろ!難民化する若者たち』(太田出版)でJCJ賞(日本ジャーナリスト会議賞)受賞。「反貧困ネットワーク」副代表、フリーター全般労働組合組合員。(2013年6月2日付「大阪民主新報」より)
投稿者 jcposaka : 2013年06月02日