加害と被害 両面展示こそ 府民の声反映させよう ピースおおさかリニューアルでシンポ
ピースおおさか(大阪国際平和センター 大阪市中央区)が、日本の戦争加害の展示を大幅に縮小し、大阪大空襲に重点を置く展示内容にリニューアルしようとしている問題で、「府民の声をリニューアルに反映させよう」と6月29日、大阪市港区の港区民センターでシンポジウムが開かれ210人以上が参加しました。同実行委員会の主催。 集会で15年戦争研究会の上杉聡さんが基調提案。ピースおおさか設立の経過を述べ、「府と市、民(たみ)が一体となってつくりあげた、日本でもまれな誇るべき施設」と紹介しました。
維新の政治で予算削減され
ピースおおさかは、維新の会府政・大阪市政による予算削減などで展示がなかなか充実できず、学芸員も減らされました。そのため常設展示が更新されず、入館者の多数を占める小中学生に難解だったり、一部展示の劣化・陳腐化は事実ですが、「展示内容を改悪しようとする勢力に迎合し、これまでの努力を無にするためだけのリニューアルであるなら、反対せざるを得ない」と話し、平和を願う人々がリニューアルに要望の声を上げようと呼び掛けました。
元大阪城天守閣館長の渡辺武さんら7人がパネラーを務めました。
歴史の誤った矮小化になる
渡辺さんは大阪城の「平成の大改修」の経験を紹介するとともに、「リニューアルは不可欠だが、施設の目的を再構築する必然性がない。リニューアル構想で空襲犠牲者の追悼に重点を置いているが、被害と加害の直視がなければ、歴史の誤った矮小化になりかねない」と指摘しました。
大阪大空襲の体験を語る会代表の久保三也子さんは、「(戦時中)防空壕をつくれと見本を書いた回覧板が回ってきたが、材料や道具の支給はなく、統制で入手できなかった。ピースおおさかの展示にあるようなものはできなかった」と発言しました。
国際の名に恥じぬ資料館に
小学校教員の橋口哲さんは、空襲被害と現在との比較や、大阪城の戦跡の活用を提案するとともに、砲兵工廠に大勢の朝鮮人が働いていたことを指摘し、「韓国・朝鮮、中国の人々についての視点を抜かしてはいけない。『国際』の名に恥じない平和資料館であるように願いたい」と話しました。
甲南大学人間科学研究所の博士研究員の人見佐知子さんは、学童疎開による親との離別など、「戦争が、普段の人間関係や日常生活を破壊するかという観点から考えれば、残虐性を出さなくても展示できるのではないか」と提案しました。
大阪女学院大学教授の奥本京子さんは、展示様式について、考えさせる質問や議論し合える契機の重要性を指摘し、ワークショップやアートの活用も提案。「感情に訴えるだけでなく、知的に物事を考える場ととらえることが大事ではないか」と呼び掛けました。
日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワーク代表の方清子さんは、「展示が残虐だ、自虐だからと言って、歴史の事実を教えないのはもってのほか。どうすれば分かりやすく伝えられるのか工夫すべきだ」と述べました。
戦争を正しく伝える施設に
大阪戦災傷害者・遺族の会代表の伊賀孝子さんは、「終戦前に戦地から戻ってきた兄から中国人捕虜に残虐な行為をしたと聞かされた母が『なんでそんなことをしたのか』と怒った時、私は『こらしめにいっているのだから』と言って、当たり前に受け取った。振り返って教育の恐ろしさを知った。ピースおおさかは戦争を正しく伝える施設であってほしい」などと述べました。
シンポジウムには、日本共産党の寺戸月美、小川陽太の両市議のほか、公明党、民主党の市議、民主党の府議も参加しました。(2013年7月14日付「大阪民主新報」より)
投稿者 jcposaka : 2013年07月14日