森友学園疑惑を追って
日本共産党・大阪PT(プロジェクトチーム)の活動から
国有地格安売却や大阪府の認可疑惑など、森友学園疑惑を追ってきた「森友問題・大阪プロジェクト・チーム(PT)」の活動について、チーム責任者で府委員会副委員長の中村正男さん、同チームの名部広美さんから寄せられた文を紹介します。
中村正男(PT責任者府委員会副委員長)
名部広美(府委員会政策委員会)
「森友学園問題」は大阪を舞台に、安倍政権と松井・維新府政の根幹をゆるがす一大疑惑事件です。日本共産党大阪府委員会は、この問題がメディアで大きくとりあげられ、国会で追及の火ぶたが切られた2月、「森友問題・大阪PT(プロジェクト・チーム)」(以下、森友PT)をつくり、疑惑追及の活動にのりだしました。
1、PTの設置と活動――チーム力を発揮して
16回の会合、調査を積み重ねて
森友PTメンバーは、中村と名部のほか、伊木知史国政事務所長、わたなべ結近畿比例候補、宮原たけし・石川たえ両大阪府議、寺戸月美大阪市議、さらに山本一徳豊中市議、山田みのり党福島区生活相談所長ら12人のチームです。
多い時には週に1回、これまで16回の会合を重ねました。国会で追及チーム責任者を務める辰巳孝太郎参議院議員、「しんぶん赤旗」関西総局長にも毎回の会議に参加してもらい、連携をとってきました。
疑惑追及と府民への発信と
「森友疑惑」には多くの複雑怪奇な「闇」があります。そのなかで私たちは、「国有地売買疑惑」「私学認可ありき疑惑」の太い筋で狙いを定めました。調査項目・対象を決め、材料や情報を持ち寄っては真偽を見極め、さらに掘り下げる。これが毎回の議論の中心でした。
関係者の取材は数十人に及びます。同時に、「共産党なら明るみにだしてくれるはず」との信頼のもと、膨大な情報、資料が寄せられました。
チームのもう一つの仕事は、情報を発信し、府民世論に働きかけることです。3月初め、小池晃書記局長を迎えての「瑞穂の國小学院」視察と千里中央での街頭演説は、小池さんが国会で自民党の鴻池参議院議員事務所での「面談記録」を明るみにだした直後でもあり、メディアが殺到しました。3月11日にはこの問題を国会で初めて取り上げた宮本岳志衆議院議員と辰巳孝太郎参議院議員、宮原たけし府議団長、山本一徳豊中市議による緊急国会報告会を開催しました(6月にも開催)。
こうした活動を「JCP大阪ビラ・森友疑惑追及特集号」として、これまでに第7弾まで発行しました。そのために特別の「森友追及募金」を訴えると、これまでに400万円以上が託されています。この場を借りて心からお礼を申し上げます。
日本共産党ならではのチーム力
森友PTは、日本共産党ならではのチーム力を発揮する舞台になりました。
毎回の会議に辰巳参議院議員が参加することで、国会でのホットな論戦の到達をつかみ、逆に大阪での調査の到達点をストレートに国会論戦でぶつける。国会と大阪府委員会一体の活動が展開されました。
またチームには豊中の地元で今回の問題の発端、不可解な国有地売買を無所属市議と一貫して追及してきた山本市議、「塚本幼稚園」でのさまざまな問題に1年以上前からかかわってきた福島区の山田さんにも加わってもらいました。それまでの蓄積が力になっています(私たちの最初の本格的調査は塚本幼稚園の驚くべき教育実態からでした)。そして各分野、党内外の専門家の力も借りています。
メディアも、党ならではのネットワークに注目し、「共産党さんなら、こういうことも知っておられるのでは」との問い合わせや、私たちの調査に「同席」を依頼されたことも、一度ならずありました。
2、最大の核心――「国有地8億円引き」売買の怪
「森友疑惑」の最大の核心
「森友疑惑」の最大の核心として追及しているのは、「国有地8億円値引き」問題です。
そもそも当初、なぜ国有地を「定期借地」にするという話になっていたのか?それが売却となった際、隣地の豊中市には「14億円」で売り、近くにある大阪音楽大学から購入申し出があった際には「7億円」でも断ったのに、なぜ「森友学園」には「1億3400万円」で払い下げたのか?
私たちは国有地売買に携わった方から話を聞きましたが、通常やられる「見積もり合わせ」もしていない?
格安売却にいたる過程で財務省、航空局側と森友側との面談がひんぱんにやられていた。ところが「書類は破棄」?! 「データは自動消去」?
調べれば調べるほど、不可解なことだらけでした。
「ゴミ」はなかった!
「8億円値引き」の理由とされたのは「地中9・9m」までの間からでてきた「ゴミ(地下埋設物)」でした。
しかし、これは虚構ではないか。私たちはさまざまに寄せられた現場写真や国が行ったボーリング調査などを土木、建築の技術者、専門家に見てもらいました。「プロの目」から見れば、「ありえない」と即座に答が返ってきました。
これを国会論戦に仕上げるうえで、辰巳孝太郎参議院議員は「国立産業技術総合研究所」に依頼し、調べてもらいました。「深さ3mまでは人工的に埋め立てた埋設土」「それより深い部分は天然の堆積物」で、「地下9・9mのゴミなどありえない」との回答でした。4月に「明るい民主大阪府政をつくる会」がおこなった報告会で、辰巳さんは、「もしこんな深さからマヨネーズ片などのゴミが発見されたら、人類史上世紀の発見になる」と会場を沸かせました。
「値引き」の根拠は吹き飛んでいます。実際には「8億円引き」のために、「ゴミ」の算定量、単価をはじきだし、それにあわせてストーリをつくった疑いが濃厚です。私たちは森友学園にすでに支払った「1億3200万円」の「有益費」についても調べをすすめています。
「神風」(籠池氏)の正体は?
では誰が、ストーリーを描いたのか。籠池前理事長は国会証人喚問で「神風」が吹いたと語りました。
その焦点は「瑞穂の國記念小学院」を「安倍晋三記念小学院」とネーミングしたり、その「名誉校長」に安倍昭恵夫人が就任したことなど、安倍首相夫妻のかかわりです。
国会での連続追及で、籠池夫妻が財務省の田村審理室長に面談した際の「音声データ」も明るみにでました。籠池氏はこのなかで「安倍昭恵首相夫人が棟上げ式で餅をまく予定」とも語り、その予定通りことがすすまないと、「あの方(安倍首相)が侮辱されていることになる」と語っていました。財務省が森友側に貸し付け契約を結ぶ半年も前に「契約書原案」を渡していた事実もつきつけられました。
「安倍首相」をバックにした財務省側が「神風」を吹かせたことは明らかです。
新たな裏付けが続々と
この間メディアをつうじて新しい資料がだされ、私たちの追跡が裏付けられています。
7月26日、NHKは、去年3月、近畿財務局と森友学園側との間で具体的な金額を明示しての価格交渉をスクープしました。財務局は「いくらまでなら支払えるのか」を尋ね、森友側は「上限としておよそ1億6000万円」を提示し、財務局は「(有益費の)1億3200万円を上回る価格でないと売れない」と語ったなどのやりとりです。
続いて8月1日、FNNが籠池氏と近畿財務局担当者との「価格交渉」の「音声データ」を報道。「8億円引き」という売買価格のつじつまを合わせるために、ごみの撤去費を算出した経緯が赤裸々です。
3日「報道ステーション」は、交渉を記録した新たなメモを報道しました。森友側からは、「彼ら(財務省、航空局)のストーリー」にあわせて、「調査ではわからなかった内容でかし(瑕疵)を見つけ」「価格を下げていきたい」などと語っています。
これでも安倍政権、財務省、佐川新国税庁長官らは白を切るのでしょうか。
3、私学認可ありき問題
「瑞穂の國小学院」開校を、「私学認可ありき」ですすめてきた大阪の「維新府政」の責任も問われます。
私学審議会の議事録は語る
府議団がいち早く手に入れた府の私学審議会の議事録は、肝心な部分がまだ黒塗りですが、その後の国会での追及や私たちの調査活動にも大きな役割を果たしました。
2014年12月18日の審議会議事録をみると、「(教育内容に)違和感は覚えます。…それを認可するということになると、やっぱりそこに公費が投入される…限界がどこまであるか」「借り入れが…いま持っているものよりもオーバーしている」「これを認可の方向で物事をすすめる気には私はならない」――。異論が続出し、「認可」はできず「保留」になりました。
それをくつがえしたのが翌2015年1月の27日の「臨時会」です。この時も、「(塚本幼稚園は)毎年返済して、なおかつ余剰金…ウルトラC以上のすごい実態…信憑性があるのかどうか」などの声がでましたが、3月と7月の審議会に追加報告を求めるという異例の「条件付き」認可答申を決定したのです。
取材のなかでは、私学審で最初に「小学校建設費」としてだされた額は「4億円」だったという驚くべき証言もありました。
府議会での日本共産党の追及
日本共産党大阪府議団の宮原・石川両府議も連続追及してきました。
一つは、私学の小学校認可の基準にかかわる問題です。2011年に橋下徹知事(当時)は森友学園の要望を受け、審査基準を緩め、幼稚園しか設置していない学校法人が小学校の開設に借入金をあてることを容認しました。しかし、校地は原則自己所有、例外的に認められる場合でも借地の上に校舎がないこととされていました。ところが、「条件付き認可適当」を決めた2015年1月当時、森友学園は国に「土地取得要望書」をだしただけで、自己所有も、借地契約もされておらず、緩和された基準は満たされていませんでした。国との二人三脚で「認可ありき」へ突っ走ってきたことは明瞭です。
いま一つは「森友学園」が経営する「塚本幼稚園」が大阪府の「特別支援教育費補助金」を不正に受給してきた問題です。私たちの調査の中で、複数の関係者から証言が寄せられ、調べると塚本幼稚園には最高時、園児の14%が「要支援児」と申請され、そんな実態がないのに補助金を受け続けてきました(同じ年の府内幼稚園からの申請平均は0・6%です)。10年間で受けた額は1・7億円。府はいまは告発していますが、当初、調査もし、適正に執行しているといいました。ここまで見逃してきた責任は重大です。
府議会では、「維新の会」が「森友学園」の関連業者から企業献金を受けていたことも暴露しました。
さらに5月、新たに追及した重大な問題が「寄付金問題」の虚構でした。私学審で大きな懸念が持たれた「森友学園の財務状況」について、府の私学課は億単位の「多額の寄付金」が寄せられ安定したと報告していました。ところが、私たちが調べると、その痕跡がありません。さまざまなルートで、最も多額、「2億円の寄付」をおこなったという会社社長がわかり、その方に「しんぶん赤旗」記者が直接お会いすると、はっきり「寄付はしていない」と証言し、見せかけのカラクリを教えてくれました。「いったい私学課は、何をもって、経営安定と判断したのか」。石川府議は詰め寄りました。
後追い報道が次々と
この問題でも、私たちの追及を跡付ける報道が続きます。
6月3日、NHKニュースは「森友学園への寄付を社長が否定」ととりあげました。その際、府に「寄付者リスト」がだされたことにも言及しています。
さらに「毎日」8月4日付は、「大口寄付者」とした3社の入金は実際にはなく、「別のコンサルタント会社の名義で約4億円が入金されていた」。「見せ金」だった疑いがあるとしています。
2015年1月の臨時会で「認可適当」としたの根幹が崩れています。「維新府政」は、これを承知で私学審に報告し、虚構づくりに手を貸したのかが、問われます。
4、加計・森友疑惑隠しは断じて許されない
「森友疑惑」では、まだベールに包まれている問題も多くあります。メディアが「疑惑の3日間」とも指摘する安倍首相の日程もその一つです(2015年9月3日に安倍首相が迫田理財局長=当時と会い、翌4日に「戦争法」審議で紛糾していた国会を抜け出し、大阪でテレビ出演するとともに、ある料理屋である関係者と食事し、5日に昭惠夫人が塚本小学校で講演し、名誉校長に就任した)。
維新府政とのかかわりでも、籠池氏自身が府議会の参考人質疑の際、「真相解明のために、トカゲのしっぽ切りでなく、百条委員会を設置し、松井知事、吉本私学課長、酒井弁護士も府議会に呼んでほしい」と語るほど、深いかかわりの全容解明はこれからです。
安倍政権、維新府政は一蓮托生となり、「疑惑隠し」「疑惑幕引き」に躍起です。
同時に、この間の国会論戦と怒りの世論の包囲のなかで、「国有地8億円売買疑惑」と「私学認可ありき疑惑」の経緯が一歩一歩明るみにだされてきました。安倍政権、維新府政がなんの証文もださないまま、「知らぬ、存ぜぬ」は通用しないところまで、追い詰めてきたことは明らかです。森友PTの活動はその一助になっていることを自負しています。
いよいよこれからです。加計学園問題とともに、森友疑惑追及をさらにすすめ、こんな政治の私物化を許さない。真相解明と政治転換を果たすまで、私たちの活動も歩みを止めずにすすめたいと思います。
(大阪民主新報、2017年8月13日・20日付より)