おおさかナウ

2020年05月17日

住民投票から5年
新型コロナ対策に今こそ総力を
大阪市廃止・分割は断念すべき
日本共産党大阪市議団 山中智子団長に聞く

 大阪市を廃止して「特別区」に分割する、いわゆる「大阪都」構想が2015年5月の住民投票で否決されてから、17日で5年になります。住民投票で「ノー」の審判が下ったにもかかわらず、「都」構想を蒸し返してきた維新。ことし11月に再度の住民投票実施を狙い、スケジュールありきで突き進んできました。コロナ危機の中で市民の命、暮らしと営業を守るために、政令市・大阪市の取るべき進路は何か。日本共産党大阪市議団の山中智子団長に聞きました。

政令市の力を生かすべき時

インタビューに答える山中団長

インタビューに答える山中団長

――コロナ危機の中で住民投票5周年を迎えました。
山中 5年前の住民投票の結果、大阪市が存続してきたことの重みを、あらためて感じています。「緊急事態宣言」の発令(4月7日)を受け、議員団として松井一郎市長に緊急要望を行いました(同月10日)。「自粛と補償は一体」の立場で国に補償を求めると同時に、市独自の救済措置を講じることや、感染防止と収束に向けた体制の抜本的強化などに、市が総力を挙げて対応するよう求めました。
 暮らしや経済へのコロナの影響は、さらに深刻になります。この間の補正予算で、学校給食の無償化や府の休業要請協力に対する支援金の市負担分などを盛り込みました。財政調整基金は計276億円を取り崩しましたが、それでもなお約1千億円も残っています。国や府の対策任せではなく、財政調整基金を思い切って使うなど、政令市・大阪市が持つ力を今こそ生かさなければなりません。

税金や時間を割く状況ない

――感染拡大の陰で、法定協の出前協議会や制度案への意見募集など、住民投票に向けた動きは止まっていません。
山中 こんな時に、大阪市廃止分割の議論など、している場合ではないと声を大にして言いたいです。4月の出前協議会(4回)は中止になりましたが、「緊急事態宣言」が発令された日、法定協の今井豊会長は出前協議会を5月10日と12日に開く意向を示しました。市民に対する自粛要請と相反するもので、市民の命・健康よりも「都」構想を優先するのかという怒りの声が広がりました。
 5月の出前協議会は中止になり、法定協委員によるビデオメッセージを発信すると言いますが、コロナ対策を最優先にすべき時に、住民投票を実施するためのプロセスに人やエネルギー、時間、税金を割ける状況にはありません。制度案づくりを担う副首都推進局は解散し、職員の力をコロナ対策に向けるべきです。

税収の悪化は避けられない

――山中さんは、大阪市廃止・分割は「百害あって一利なし」と一貫して訴えてこられました。
山中 「特別区」は権限・財源を府に奪われ、自主財源も乏しい“半人前の自治体”で、住民サービスが維持される保証はありません。あくまで住民投票を強行し、「特別区」設置が可決されたらどうなるでしょうか。今後、経済危機に直面し、税収悪化が避けられない中で、4つの「特別区」は財政的にも成り立たないことは明白で、犠牲になるのは市民です。
 大阪市廃止・分割は、断念するしかありません。推進派の人たちも、これまで思ってもみなかった事態が生まれていることを冷静に受け止め、認めるしかないところにきていると思います。

新しい視点で市政再構築へ

 5年前の住民投票当日、維新の会の記者会見場に、NHKニュースの「大阪住民投票 反対多数確実 『都構想』実現せず 大阪市存続」の速報が流れました=2015年5月17日、大阪市北区内


5年前の住民投票当日、維新の会の記者会見場に、NHKニュースの「大阪住民投票 反対多数確実 『都構想』実現せず 大阪市存続」の速報が流れました=2015年5月17日、大阪市北区内

――コロナ危機でこれまでの政治の歪みが浮かび上がり、“コロナ後の社会像”の議論も始まっています。
山中 大阪市では維新市政以前から、24行政区にあった保健所を一つにするなど、大阪市の感染症対策や公衆衛生、医療は「効率」優先で縮小されてきました。これらを元に戻し、発展させるために、まったく新しい視点で市政を再構築することが必要です。
 大阪市の廃止・分割などではなく、「市民の命と暮らし、営業を守り抜くために、こういう大阪市をつくっていく」という市政の姿を市民の皆さんに示すことこそ、大阪市の役割であり、そこに党派を超えて力を合わせるときです。そのために日本共産党議員団も議会内外で力を尽くします。


(大阪民主新報、2020年5月17日号より)

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