臨時大阪市議会
住民投票はきっぱり断念を
共産・市民統一会派 山中智子幹事長が代表質疑
大阪市を廃止・分割する、いわゆる「大阪都」構想を巡り、「特別区設置協定書案」の承認が焦点となっている臨時大阪市議会の本会議が24日開かれ、統一会派「日本共産党・市民とつながる・くらしが第一大阪市議団(共産・市民)」の山中智子幹事長が代表質疑に立ちました。新型コロナの感染症の先行きに見通しが立たない中、山中氏は松井一郎市長(大阪維新の会代表)に対し、「住民投票などやっている場合ではない。コロナ対策を最優先に」との市民の声を突き付け、住民投票はきっぱり断念するよう迫りました。
コロナ対策に傾注を
感染拡大は必至 市民分断やめよ
山中氏は、これから秋にかけて感染拡大は必至で、市民の中で感染への不安、暮らし・営業の不安が渦巻いている中、「あくまで住民投票を行うのか」と問い掛けました。臨時議会に提出された22件の請願・陳情はすべて「協定書案」の議決に反対で、うち15件の陳情はコロナへの不安などから議決しないことを求めていると指摘。「コロナ対策こそ最優先にという市民の声に応えるべきだ」と述べました。
松井氏は、「コロナ後」を見据えて維新の公約である「都」構想を同時に進めると答弁したのに対し、山中氏は「現下の課題は、市民の命・暮らしを守ることだ」と反論。感染拡大防止のために、市民の一致協力、政党・政派を超えた市民の連帯が求められる時に、10億円の税金を使い、市民を分断する住民投票を強行するのはとんでもないと主張しました。
大阪市の持つ力 今こそ発揮して
山中氏は、府内の累計感染者数7586人(21日現在)のうち大阪市内は3967人と半数以上を占め、経済的に苦境に立つ中小業者の数も圧倒的だとし、「今なすべきは大阪市の解体では決してなく、大阪市の持つ力を100%発揮して、コロナ対策に全力を傾注することだ」と力説しました。
大阪市独自のコロナ対策が極めて不十分だとの声が広がる中、市が打ち出した、未就学児童(12万人)に1人5万円を給付する施策も、「政令市の財政力があるからだ」と指摘。PCR検査の拡充、休業や時間短縮の要請と一体の十分な補償、保健所など公衆衛生機能の強化などを挙げ、「国に支援を求めるとともに、大阪市としてできることはすべてやる構えで、コロナ対応に全力を尽くせ」と述べました。
過大見積もりで市民を欺く試算
山中氏は、副首都推進局が8月にまとめた「特別区」の財政シミュレーションの更新版に言及しました。学校給食無償化(77億円)以外はコロナ対策での市負担を加味せず、経済も税収もコロナ以前の収支概算が土台だと指摘。逆に収入面では地下鉄・バスの民営化などの「効果額」を積み増すことで、「『特別区』は赤字にならない」との結論を出すものだと批判しました。
大阪メトロからの配当金(計1047億円)を新たに積み増しているが、コロナ禍で経営が悪化している大阪メトロから配当金が得られるかどうかは、まったく不透明だと批判。「そんなものを新たに付け加えて『効果額』に積み増す。いったい、誰が責任を持つのか」と詰め寄りました。
これに松井氏はまともに答えず、「経済の下振れや地方税源の減少には、国が相応の財政措置をする」「財政シミュレーションは住民の判断の参考になる」と強弁しました。
山中氏は「過大な見積もりで市民を欺くようなことはするべきでない」と反論しました。
「特別区」設置で膨大な市民負担
山中氏は「特別区」の設置に必要なイニシャルコスト(初期費用)は「特別区」が204億円、府が38億円で計241億円、年間のランニングコスト(運用経費)は「特別区」が14億円、府が16億円で計30億円だと指摘。「必要最小限の庁舎建設を行うとした当初案から減額したとはいえ、膨大な費用を要する。市民にとってまったく無駄だ」と批判しました。
松井氏は「特別区」設置に「必要な投資」だと答弁。山中氏は90年代の巨大開発の失敗が生んだ借金が減少し、財政的に明るい兆しが見えているとし、「その力は市民施策の拡充や、何よりコロナ対策のために使うべき。このままでは現行の市民サービスさえ維持できる保証がない」としました。
山中氏は、東京23区では「特別区」を廃止して、せめて一般市になりたいとの要望を出し続けており、「大阪市廃止、『特別区』設置は時代錯誤。東京で廃止しようとしているものを、大阪でこれからつくるのはとんでもない」と強調しました。
コロナ禍の中で住民投票は暴挙
山中氏は、松井氏は「何が何でも住民投票」という構えだが、市民はコロナ禍の中で感染が怖くて投票に行かないなど、低投票率になる可能性もあるとし、「その住民投票に正当性があるのか」とただしました。
松井氏は、「最後は究極の民主主義、住民投票で判断いただく」と居直りました。山中氏は「究極の民主主義」なら、みんなが知り・考え・投票に行くということが、これほどまでに困難な環境で住民投票をやってはいけないと力説。「市民が十分理解できない間に(住民投票を)やってしまいたいとしか思えない暴挙だ」と述べました。
住民投票でいったん大阪市廃止が決まれば、元に戻す法律がない中、山中氏は「こんなやり方で、大阪市をなくすかどうかという、後戻りのできない住民投票を絶対にやるべきではない」と主張しました。
(大阪民主新報、2020年8月30日号より)