おおさかナウ

2015年01月26日

都構想「協定書」議決強行
市民に不幸もたらす

山中日本共産党大阪市議団幹事長に聞く

特別区設置「協定書」の議決に際し、意見表明する山中大阪市議=13日、府庁内

特別区設置「協定書」の議決に際し、意見表明する山中大阪市議=13日、府庁内

 大阪市を廃止・解体する「大阪都」構想をめぐり、13日の法定協議会(法定協)で維新の会、公明党の賛成多数で特別区設置「協定書」の議決を強行しました。橋下徹大阪市長(大阪維新の会代表)らは2月開会の大阪府議会・大阪市会で「協定書」を可決し、5月に「住民投票」を実施しようとしています。この間の事態をどう見るか、「協定書」の問題点について、日本共産党大阪市会議員団の山中智子幹事長(法定協委員)に聞きました。

——橋下氏は最近の街頭タウンミーティングで、「誰もがもう終わりだと思っていた『大阪都』構想が復活した」などと演説しています。

山中 それはもう、とんでもない話です。昨年10月に府市両議会で否決した「協定書」は維新の会が野党を一方的に排除して作成したもの。両議会で無効決議も上がっています。

特別区設置法に照らしても

 特別区設置法(第6条)では「協定書」を「住民投票」にかける前に、議会の承認が必要だとしています。議会で否決された「協定書」は、もはや存在していませんでした。それを橋下市長がほぼ無修正で再提案したことは、民主主義を踏みにじるだけでなく、特別区設置法に照らしても暴挙です。

闇取引で真相わからぬまま

 昨年末、公明党が「協定書には反対だが、住民投票には賛成する」と態度を急変させたことで、まさに闇取引、密室談合で「協定書」が“復活”したわけです。市民には何も真相がわからない、最悪の形で決まってしまったことは、あってはならないことです。

——橋下氏は街頭で「大阪都」構想の「メリット」を宣伝しながら、「都構想で住民サービスが悪くなるというのは大ウソ」と野党を攻撃しています。

収支不足でサービス守れず

山中 「協定書」の財政シミュレーションでは、「特別区」設置後の5年間で計1071億円もの収支不足が生じます。土地を売り払い、財政調整基金も取り崩し、府からの貸し付けまで受けて補わなければならないのに、どうして住民サービスを守れるでしょう。

 橋下氏は「特別区長を選挙で選べる。いまの大阪市よりまし」と言いますが、限られた財源の中で住民には、「高齢者施策か、子育て施策か」といった選択が迫られ、対立や分断が引き起こされます。市民にとってこれほどの不幸はありません。

次々と切り捨てた橋下市政

 そもそも橋下市長就任以来、「大阪都」構想を前提にした「市政改革プラン」で、「大阪市民はぜいたくだ」として敬老パス有料化、上下水道料金福祉減免措置の廃止など数々のサービス切り捨てが行われてきたのが実際です。

効果額の議論、橋下氏できず

「大阪都」構想の中身を伝え「市民に百害あって一利なし」と街頭宣伝する明るい会・よくする会の人たち=18日、大阪市中央区内

「大阪都」構想の中身を伝え「市民に百害あって一利なし」と街頭宣伝する明るい会・よくする会の人たち=18日、大阪市中央区内

山中 「二重行政解消で無駄遣いがなくなる」と「大阪都」構想に賛成だという方もおられます。しかし、橋下市長らは「都構想で4千億円浮く」と言っていたものの、実際には「効果額」はないに等しいことが明らかになり、追い詰められた橋下市長は「効果額の議論なんて意味がない」「住民サービスを良くするとかいうものじゃない」と言い放ちました。

 一方で、「特別区」の立ち上げには、新庁舎建設など600億円の初期コストがかかります。大阪市を解体しなければ不要のお金です。当初、コストを低く見せかけるため、現在の区役所を使うほか、民間ビルを借り上げる計画でした。ところが昨年7月、維新の会単独の法定協で新庁舎建設が「協定書」に盛り込まれたのです。どこに建設するのか、そんな土地があるのか、まったくめどが立っていません。

——橋下氏は「野党は、大阪市民の税金が府に奪われると言うがウソだ」と言っています。

財政明記せず

山中 それも大きなごまかしです。大阪市をなくせば「特別区」の間で財政格差が生じます。大阪市税の一部はいったん「都(府)」に集めて、「財政調整」で配分するといいますが、「都(府)」に行く税の割合は維新の会単独の「協定書」では明記されず、「住民投票」の後に知事と大阪市長が協議するとなっており、まさに白紙委任です。

維新の大うそ、改めて明確に

 「特別区」では介護保険や国民健康保険など100を超える事務を担う「一部事務組合」を設けるなど、財政的にも制度的にも自立した自治体とは到底いえません。

 維新の会は2011年秋のダブル選で、「大阪市は潰しません」「24区24色に輝く大阪市をつくります」と大宣伝しましたね。それが大ウソだったことが、あらためてはっきりしました。

 結局、大阪市はつぶしながら、「広域行政の一元化」で「一人のリーダー」がカジノ誘致やなにわ筋線などの無駄な巨大開発を進めようというのが「大阪都」構想の狙いです。

住民投票に値しない協定書

——2月議会の開会も迫っています。橋下市長は「住民投票こそ究極の民主主義」と繰り返していますが。

山中 議会が「協定書」を否決したのは、論戦で欠陥が次々と明らかになり、「こんな『協定書』は住民投票にかけるに値しない」ことがはっきりしたからです。公明党は「『協定書』には反対だが、住民投票には賛成」と維新の会に協力しましたが、あまりにも矛盾しています。きっぱり「協定書」に反対するのが筋です。

民主主義とは無縁のやり方

 特別区設置法に基づく「住民投票」で投票するのは大阪市民だけで、一定の投票率を超えなければ無効とする最低投票率の定めもありません。世論調査でも「大阪都」構想について「よく分からない」という声が多数。なのに、「住民投票」の結果によっては、二度と大阪市に戻れないような選択を市民に求めるのは、民主主義とは無縁のやり方です。

 議会内外で「大阪都」構想や「協定書」の中身を知らせ、いっせい地方選挙では日本共産党の躍進で「維新政治ノー」の審判を下す。「住民投票」が強行されるなら、「反対」が勝利することを目指して全力を挙げてたたかい抜く決意です。

(大阪民主新報、2015年1月25日付より)

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