おおさかナウ

2015年02月15日

3,市民の足はいま(下)
シリーズ大阪壊し 橋下流——維新政治を問う

「高齢者に我慢」の行き着く先

3,市民の足はいま(下)—敬老パス有料化

公約投げ捨てて 自己負担を導入

 前回のシリーズで赤バス廃止問題を取り上げました。実情を聞かせてもらった生野区の高齢女性の皆さんからは、赤バスだけでなく、敬老パス(敬老優待乗車証)について意見も相次ぎました。

 大阪市民は70歳になれば敬老パスを使えば、地下鉄・市バスを無料で乗ることができました。ところが橋下市長はダブル選(11年)で掲げた「敬老パスは維持」(「選挙公報」)という公約を投げ捨て、13年度からは年間3千円の自己負担を導入しました。

 昨年8月からは、1回乗車するごとに50円の利用料を一律に徴収。1千円単位で駅の券売機で敬老パスのカードにチャージ(入金)しなければなりません。

 地下鉄とバス、バスとバスの乗り継ぎは50円でできますが、バスや地下鉄を3回乗り継ぐと新たに50円が必要になります。

 生野区では、「無料の時は有難かった。3千円の負担は辛抱したが、1回50円になるというので、敬老パスはやめた。もうバスに乗らないようにしている」「チャージというのが、よく分からない」などの声が寄せられました。

交付率が減少し 外出すら諦めて

 「かなりの方が(敬老パスを)持つことを諦めた。同時にそのことで外出することも諦めた方がいる。これで『維持』と言えるのか」——昨年11月の大阪市会決算委員会で、日本共産党の山中智子議員が橋下市長に詰め寄りました。

 山中氏は、敬老パスは「高齢者に敬老の意を表し、社会参加を促す目的で始まった制度だ」と強調。「50円負担」の導入で、70歳以上の人口に占める敬老パスの交付率が54・8%と、「3千円負担」の導入時点から20ポイント低下していることを示しました。

 「所得に関係なく乗るごとに50円徴収することが、利用者減につながっている」として山中氏は負担の撤廃を要求。実態調査を行い、所得に応じたものに変えるなど制度設計すべきだと提案しました。

 ところが橋下氏は、「少子高齢化時代で制度を維持しようと思えば、自己負担を求めるしかない」と答弁し、さらに「批判を受けても、やるべきことをやる市長になりたい」などと言い募りました。

利用しているが 複雑な気持ちに

記事中の山内さんが使っている敬老パス

記事中の山内さんが使っている敬老パス

 現在、敬老パスを利用している人はどうでしょうか。

 大阪市中央区に住む山内紘子さん(70)は、約5年前に藤井寺市から転居。「70歳になれば、地下鉄やバスが無料になるのを楽しみに」していたところ、間もなく橋下市長が就任しました。

 新婦人の活動や買い物などで週の半分は地下鉄やバスを利用。以前は自宅最寄りの谷町六丁目駅から天満橋駅までの2駅分は自転車で行き来していましたが、「運転するのがだんだん怖くなってきた」ので、いまでは地下鉄に乗るといいます。

 山内さんは「料金を全額支払わなくてもいいのは、それはそれでうれしいですが、敬老パスをやめた方たちや、他市から地下鉄で大阪市に出掛けて来る同年代の友人の負担を思うと、複雑な気持ちです」と話します。

 橋下氏が、「大阪市民はぜいたく」「子どもでも半額払っている」などと主張してきたことについて、「府民・市民の所得の差や暮らしぶりの違いにつけ込んで、対立や分断を持ち込んで負担を押し付ける、ひどいやり方だ」と言います。

負担を押し付け みんなを不幸に

 山内さんはダブル選当時、空堀商店街で橋下氏が練り歩き宣伝したときのことを、はっきりと覚えています。

 誰かが「敬老パスはどうなりますか?」と直接不安をぶつけたのに対し、橋下氏は「大丈夫ですよ」と言い切ったのだといいます。

 「高齢者にはちょっと我慢してもらって、現役世代に重点投資してきた」と、街頭タウンミーティングなどで「実績」を宣伝する橋下氏。平松前市政当時に67億円だった教育予算を370億円に増やしたと言いますが、中身は「塾代助成」など自らが始めた項目を取り出しただけで、市の歳出総額に占める「子ども・教育予算」の割合は15%前後と、横ばいか、減少しています。

 山内さんは言います。「『子や孫に迷惑をかけられない』と負担増に賛成する高齢者は、少なくありません。でも実際には若い世代には使われていない。結局、みんなを不幸にしていくのが、維新の政治ではありませんか」

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(大阪民主新報、2015年2月15日付より)

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