府が独自にコロナ対策を
「広域一元化」 狙いは大型開発
大阪府議会本会議 内海府議が追及
日本共産党の内海公仁府議は5日の府議会本会議で一般質問に立ち、吉村洋文知事に対し「コロナ禍において、保健・医療や検査の拡充、中小業者支援、教育課題も、府は国の施策に従うばかりだ」と批判し、府独自の抜本対策を求めました。
対象を拡大し検査の強化を
新型コロナウイルス感染拡大で、府内では昨年11月から今年にかけて病床使用率の逼迫や自宅待機者を多く残した問題、高齢者施設などでの集団感染など、深刻な状況が生まれました。
府内ではクラスター発生の68%が高齢者施設や医療機関で、全国の43%と比べて特に高くなっています(左の円グラフ)。
府は2月4日の厚労省通知を受けて高齢者・障害者施設の従事者対象の無症状者を含む検査に踏み出しました。施設関係者や日本共産党が繰り返し求めていたものです。
しかし府は対象者を入所施設の職員と新規入所者に限定し、ウイルスを外部から持ち込む可能性がある通所施設は対象外としました。また検査は3月末までに2回と限定しています。
内海氏は検査を通所施設も対象にすること、また4月以降も必要としている施設に対し検査を続けること、病院などの医療従事者も同様の対応をするなど、抜本的に充実するよう求めました。
吉村知事は4月以降の検査については「感染の拡大状況などを踏まえて判断する」と応じましたが、対象の拡大については「全員を一斉・定期的に検査することは困難」と、従来の答弁を繰り返しました。
内海氏は「新規感染者数が落ち着いてきているいまこそ、検査を強化すべきだ」と指摘しました。
中小業者支援の独自拡充を
売り上げ減少に苦しむ中小業者への支援制度創設を内海氏は求めました。
府は時短要請に応じた飲食店へ「協力金」を支給していますが、コロナ禍での売り上げ減少は飲食店にとどまりません。
大商連が1月にまとめたアンケート調査では、府内の飲食店以外の業種でも66・5%が前年度から売り上げが2割以上減っていると回答しています(下の円グラフ)。「営業時間が夕方までなので『協力金』の対象外だが、緊急事態宣言で客は来ない。コロナは夜だけではない」「納品している業者も厳しい状況」などの声が寄せられています。
内海氏は、時短要請対象外の事業所への国の支援は「小規模で限定的、救われない」と指摘し、独自の支援金制度を求めました。また時短要請の対象でも、「協力金」の範囲ではとても営業を維持できない事業所に、上乗せの支援が必要と指摘しました。
吉村知事は「現時点では独自の支援策は想定していない」と述べました。
国保料の減免は不可欠
自営業者や年金生活者などが加入する国民健康保険(国保)料は今年度、国がコロナで減収となった加入者への減免を行いました。府内でも4万5千世帯以上が減免対象となっています。内海氏は来年度も減免を継続するよう国に求め、実施されない場合でも府が独自の減免を実施するよう求めました。
吉村知事は「制度の継続は不可欠」として国へ要望すると述べました。
15道県が少人数学級を拡大
昨年は児童・生徒の自殺が前年から約4割増えています(2月15日、文科省発表 左下の棒グラフ)。内海氏は「2カ月に及ぶ休校の後、再開された学校生活はこれまでと同じ狭い教室に40人がひしめき合い、しかも授業は詰め込み。夏休みも学校行事も次々と減らされた。子どもたちは心休まる間もない」と訴え、少人数学級の拡大を求めました。
国は来年度から35人以下学級を拡大しますが、毎年1学年ずつの拡大で、中学校は置き去りです。全国15道県が国に先行し独自に少人数学級を拡大しようとしています。
内海氏は「文科省の方針転換を率先して府内全ての子どもたちに行き届かせるために、国に先行して府として小学校全学年で35人学級を実施するべきだ」と主張し、府独自の施策を求めました。
しかし吉村知事は「市町村が考え実施していくべきもの」との姿勢を崩しませんでした。
条例つくる根拠存在しない
府市広域一元化条例案について内海氏は、「狙いは大型開発の推進のみということは明らかだ。すでに大阪市以外の42自治体のまちづくりは後景に追いやられている。これがさらに加速する」と告発しました。
府の行動計画「グランドデザイン・大阪」は、新大阪・大阪、なんば天王寺・あべの、大阪城・周辺、夢洲・咲洲、御堂筋・周辺、中之島・周辺の6つのエリアでインフラ整備などを進めるとしています。全てが大阪の中心部開発です。
「住民投票の結果に従うべき法的拘束力がある」と内海氏がただしたのに対し吉村知事は「条例はむしろ住民投票の結果を尊重するもの」と強弁しました。「大阪市の都市計画決定権を侵す」との内海氏の指摘にも、吉村知事は「法的に問題はない」と応じました。
内海氏は「府と大阪市の限定的な利害が優先され、その他の自治体に押し付けられることになる。大阪市以外の自治体の意見は副首都推進本部の議論にどう担保されるのか」とただしました。吉村知事が「府政運営において市町村の意見を聞くのは当然」と答えたのに対し、内海氏は「そうであるならば条例の(必要性の根拠となる)立法事実が存在しないことになる」と厳しく指摘しました。
内海氏は「コロナ禍のいま、府が独自に役割を果たし、広域行政としての使命を発揮すべきだが、それを後回しにして、府市一体化という制度いじりに固執している」と、吉村知事の府政運営を厳しく批判しました。
(大阪民主新報、2021年3月14日号より)