「広域一元化条例」
維新・公明などの賛成で可決
大阪市民の決断踏みにじる暴挙
2度にわたる住民投票は何だったのか
大阪市が持つ都市計画などの事業の権限・財源を府が奪う「大阪市及び大阪府における一体的な行政運営の推進に関する条例(広域一元化条例)」案は3月24日の府議会に続き、同月26日の大阪市議会で、維新と公明の賛成多数で強行可決されました。条例の施行は4月1日。日本共産党も参加する明るい民主大阪府政をつくる会(明るい会)と大阪市をよくする会(よくする会)は、2015年と20年の2度にわたる住民投票で市民が示した「大阪市存続」の民意に背き、民主主義を踏みにじる暴挙だとして厳しく抗議するとともに、条例の廃止・撤回を求める運動に踏み出しています。
市民の権利損なうもの
大阪市議会 山中共産党市議団団長が反対討論
市民の声が届く市政築いてこそ
3月26日の大阪市議会本会議で反対討論に立った日本共産党の山中智子市議団長は、住民投票の結果を受けて求められるのは、賛成・反対のどちらに投票した人にも共通の「大阪を良くしたい」との願いに応え、大阪の成長・発展のために府との連携に努めつつ、市民の声が届き、市民を大切にする大阪市を築くことに総力を挙げることだと述べました。
条例案は「制度いじりに固執し、市民の間に対立をつくり続けるもの。住民投票の結果を無視、歪曲(わいきょく)すると同時に、市民の街づくりの権限を奪うという、二重にも三重にも民主主義を蹂躙するもの。断じて認められない」と主張しました。
大阪市の権限を自ら放棄の条例
松井一郎市長が条例制定の理由に「二重行政の解消」を挙げていることについて、「解消すべき二重行政」があれば、政令指定都市が担えるものは政令指定都市に移譲することで一元化するのが地方分権の大きな流れだと力説。条例案は、府から大阪市への移譲が進んだ交通基盤整備はじめ都市計画の権限を、自ら放棄するもので、「地方分権という時代の流れに逆行し、市民の権利、権限を損なうものだ」と断じました。
大阪市廃止・分割の法的根拠である「大都市地域特別区設置法(大都市法)」で、政令指定都市を廃止して「特別区」を設置する際、住民投票が義務付けられたのは、市民に不利益があるからだと指摘。市民は悩み抜いた末に、自らの権限と財源で街づくりを担う政令指定都市・大阪市の存続を選び取ったとし、「『究極の民主主義』だとコロナ禍の中で強行した住民投票の結果を、議会の多数のみで、一片の条例で覆すのは、憲法にも地方自治法にも、大都市法にも背くもの」と批判しました。
市民の懐を温め内需の拡大図れ
山中氏は「広域行政の一元化」で推進しようとしているのは、カジノやなにわ筋線など不要不急のインフラ整備で、すべてインバウンド(訪日外国人旅行客)頼みだと強調。「これがいかにもろいものかは、はっきりした。市民の懐を温めて、内需拡大を図ることこそ肝要。そのためにも政令指定都市としての大阪市の役割発揮が強く求められている」と述べました。
発動と具体化許さず廃止・撤回を目指す
共産党が声明
「広域一元化条例」案の可決を受けて日本共産党府委員会維新対策本部は3月26日、声明を発表(2面に全文を掲載)。条例案は政令指定都市が持つ主要な権限を骨抜きにするもので、地方自治の根本精神を踏みにじり、「都道府県から市町村への権限移譲」の流れに逆行するとし、「大阪における地方自治の流れに汚点を残した」と厳しく批判しています。
条例が強行されたとはいえ、カジノ誘致戦略の破綻にみられるように、維新流「成長戦略」の前途には大きな困難と障害が待ち受けていると指摘。コロナ禍が浮き彫りにしたように、命と健康、福祉と医療、暮らしを守るために公的責任を果たす府政・市政への根本転換こそ必要だと述べています。
日本共産党は、明るい会やよくする会、住民投票勝利を共に担った広範な人々と手を携え、条例の具体化・発動を許さないために力を尽くし、条例の廃止・撤回を目指すと表明。そのためにも知事、大阪市長を変え、府議会・市議会の力関係を変えるたたかいに本格的に挑むとしています。
明るい会・よくする会が抗議宣伝
明るい会の荒田功、よくする会の福井朗両事務局長は3月26日、条例案の強行可決に抗議する声明を発表したのに続き、両会の呼び掛けで同月29日、大阪市北区の大阪市役所前で「広域一元化条例」の強行に抗議し、撤回を求めて街頭宣伝を行い、55人が参加しました。
大阪商工団体連合会の浅野純一副会長、大阪自治労連の丹羽野和夫書記長、新婦人府本部の秋元真由美事務局長、大阪労連の菅義人議長、日本共産党大阪市議団の山中智子団長が、住民投票の結果に背く条例の中身や制度いじりを繰り返す維新、公明党を批判。コロナ対策の強化と市民の命と暮らしを守る大阪市をつくろうと呼び掛けました。
(大阪民主新報、2021年4月4日号より)