有機フッ素化合物
大阪・摂津両市で高濃度汚染
発がん性 国際条約で規制対象
発がん性など健康への被害が指摘されている有機フッ素化合物による高濃度の汚染が、大阪市や摂津市の地下水や土壌で起きていることが、国などの調査で明らかになっています。排出源は摂津市にある空調大手のダイキン工業淀川製作所。住民の不安が広がる中、日本共産党は国会と大阪の地方議会を結んで、抜本的な対策を求める論戦と活動を進めています。
排出源は空調大手のダイキン
厚労省が昨年に「目標値」を制定
有機フッ素化合物は、「焦げ付かないフライパン」はじめ生活用品に幅広く使われている物質。自然界で分解されるのに数千年かかるとされることから、「フォーエバーケミカル(永遠の化学物質)」とも呼ばれます。中でもペルフォロオクタン酸(PFOA、ピーフォア)と、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS、ピーフォス)は微量でも、がんや低体重児出産などの重大な健康被害を引き起こすとされています。
世界的には09年に「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」の規制対象にPFOSが追加され、同条約の締約国である日本国内では原則として製造・輸入が禁止に。19年にはPFOAも同条約の対象物質となり、製造・使用が禁止されました。
日本で「目標値」が制定されたのは昨年。有機フッ素化合物は米軍の泡消火剤に含まれ、沖縄県の米軍基地周辺では放出された泡消火剤による飲料水汚染が深刻化し、玉城デニー知事は19年、基準値をつくるよう国に要望しました。厚労省は昨年4月、水道水の「目標値」をPFOAとPFOSの合算で1リットル当たり50ナノグラム(ナノは10億分の1)、環境省は同年5月に同じ値を河川・地下水の「暫定目標値」としました。
目標値の110倍・37倍の超高濃度
環境省は暫定目標値の制定と合わせて、全国の河川と地下水の実態調査(19年度)の結果を公表しました。全国で最も汚染が深刻だったのは摂津市の地下水で、1リットル当たり1855・6ナノグラムと、暫定目標値の約37倍。ことし6月公表の20年度の調査結果では、神崎川をはさんで淀川製作所に隣接する大阪市東淀川区の地下水から暫定目標値の110倍、1リットル当たり5500ナノグラムという高濃度を検出しています。
この問題で専門家は早くから調査を続け、警鐘を鳴らしてきました。京都大学の小泉昭夫名誉教授らの研究グループが03年に行った全国調査では、ダイキン工業淀川製作所の排水を処理している安威川流域下水処理場の排水溝付近から、1リットル当たり6万7千ナノグラムという極めて高い濃度の汚染が確認されました。
地下水や土壌にPFOAが残留
07年にはマスコミが報道し社会問題に。府議会では07年11月の決算特別委員会で日本共産党の堀田文一議員(当時)が質問。こうした中で、ダイキンは排出削減に向けた一定の対応を迫られることになりました。
ダイキンは15年にはPFOAの製造・使用は中止しましたが、地下水や土壌にはPFOAは残留しています。環境省の調査結果(19年度)を報道で知った摂津市の住民の要望で、小泉教授らが昨年新たに調査したところ、地下水をかんがいに使った畑の土壌が汚染され、そこで作った農作物を食べた人の血液中のPFOA濃度が高いことが判明しました。
府の調査(昨年12月)では淀川製作所東側の井戸から1リットル当たり1300~2万2千ナノグラム、西側の水路から1リットル当たり5300ナノグラムの高濃度の汚染が確認されています。
大企業の社会的責任を問い 行政に調査と対策を求めて
日本共産党
日本共産党は企業・団体献金を受け取らない党としての真価を発揮して、排出元であるダイキン工業の社会的責任を正面から問い、政府や自治体に対し住民の健康を守るための徹底した調査や対策を求めて抜本的な対策を求めています。
土壌の調査をすべき
国会
山下芳生参院議員・党副委員長は6月8日の参院環境委員会で、小泉氏らの昨年の調査結果や、地元の小学生の保護者の不安を紹介し、土壌調査や住民の血液検査などの健康調査が不可欠だと強調しました。
小泉進次郎環境相が「土壌中のPFOAの分析方法が確立されていない」などの答弁に終始。山下氏は、「手をこまねいていれば、水俣やアスベストのような不作為が生まれる。検査方法がないなら、確立してでも調べるのが行政のあるべき姿だ」と求めました。
自治体の役割発揮を
摂津市議会
摂津市議会では他党が有機フッ素化合物問題を追及しない中、安藤かおる議員が07年12月に初めて取り上げ、議会論戦の他にも、地元住民や小泉氏ら専門家からの聞き取りを行ってきました。
6月25日の本会議で増永わき議員は、淀川製作所のすぐ東にある味生(あじふ)小学校の保護者から土壌調査を求める要望書が出ているとし、市独自の調査を要求。市側はこれに背を向け、国や府に調査を要望する考えもないと答えたのに対し、「市民や子どもの命より、企業の利益を優先するのか」と批判し、自治体としての役割を発揮するよう求めました。
汚染への責任果たせ
大阪市議会
大阪市議会では、長岡ゆりこ議員が7月28日の環境対策特別委員会で昨年に続き質問。ダイキン工業は地下水をくみ上げて処理し、下水に排出しているが、排水中のPFOAの濃度管理値は暫定目標値の10倍、1リットル当たり500ナノグラムであり、「地下水汚染に対する責任を取っているとは言い難い」と指摘しました。
有機フッ素化合物はダイオキシン類などと同等の危険物質だという共通認識に立って対応すべきと力説。市民の不安に応え、健康と安全な暮らしを守るために土壌や農作物、血中濃度についても徹底的な調査を市の責任で行うよう求めました。
(大阪民主新報、2021年9月5日号より)