「新キャンパスありき」
森之宮北地区 大阪市都計審が都市計画決定
再開発を見切り発車
大阪城公園の東、大阪市城東区の森之宮地域で新たな再開発計画が動き始めています。大阪府立大学と大阪市立大学を統合して来年4月に発足する「大阪公立大学」の新キャンパスを中心に、商業施設や宿泊施設などを順次整備するというもの。8月の大阪市都市計画審議会で、再開発にかかわる森之宮北地区の都市計画決定を可決しましたが、開発が本当に必要なのか、地元住民の理解や合意が得られているのか――問題は山積したままです。
住民合意など問題山積
新しい学舎は25年度に開設
森之宮北地区(約12・3㌶)はJR大阪環状線の大阪城公園駅の東側で、第二寝屋川に面した地域。廃止された大阪市のごみ焼却場(森之宮工場)の跡地や、同工場を建て替える予定だった用地、中浜下水処理場などが含まれ、UR森之宮第2団地が南に隣接しています。
計画ではA、B、C、Dの4地区に分け、新キャンパスと商業施設などを整備するA地区(約2・7㌶)を先行的に開発します。
「二重行政の解消」の名で大学統合を強行してきた府市と新大学の法人は、昨年1月に「新大学基本構想」を策定しました。「基本構想」は、25年度に森之宮に新キャンパスを整備するとしましたが、事業費は1千億円ともいわれています。
うたい文句を掲げているが
府と大阪市は維新の松井府政、橋下市政時代の2012年に、大阪市域を中心とした「成長戦略」の青写真となる「グランドデザイン・大阪」を策定し、大阪城とその周辺地域では「森之宮地域の活性化」などを明記。府市は16年から再開発について検討を始め、昨年8月に基本方針となる「大阪城東部地区のまちづくりの方向性」を決めました。
基本方針では「新大学を先導役にして、観光集客・医療健康・人材育成・居住機能等の集積により、多世代・多様な人が集い、交流する国際色あるまち」をうたい文句にしていますが、A地区以外は土地利用の中身が、現段階では漠然としたままです。
大阪市都市計画審議会
コロナ以前の計画立ち止まるべきだ
共産・山中議員が反対
8月25日開かれた大阪市都市計画審議会は、この地区計画を賛成多数で可決。審議会の委員は学識経験者15人、大阪市議14人ですが、質問して反対したのは日本共産党の山中智子議員だけでした。
山中氏は「大学統合の議論の中で、森之宮に巨費をかけてキャンパスを整備する話が唐突に出された」と指摘。コロナ禍で財政状況が大きく変わる中で、コロナ以前の「成長戦略」や新キャンパス建設も立ち止まり、今ある学舎を活用して魅力ある大学をつくるという発想はないのかと主張しました。
新キャンパスには約7千人の学生・教職員が通いますが、駐輪場は20台しか計画されていません。山中氏は、大学側の説明会(7月)で住民から驚きや周辺地域などへの違法駐輪を心配する声も出たとし、「『開かれた大学』と言いながら、周辺地域の方々も自転車で行けないということだ」と批判。コロナ禍の中で住民説明会にも限られた人しか参加できず、住民の声を十分に聞いていないと述べました。
山中氏は「街づくりは本来、もっと時間をかけて、地域の皆さんと一緒に全体像を描きながら進めるべき」「全体像が見えない中、A地区だけ急いで決めることは、都市計画としておかしい」と断じました。
9月22日の大阪市議会都市経済委員会では、府立大学と大阪市立大学の統合に当たって、定款変更や中期目標を変更する議案を審議。山中議員は、よりよい大学を目指すのではなく、「二重行政の無駄」と決め付けて統合議論を強硬に進められてきたと指摘しました。
新キャンパスは「学生のことを深く考えず、公立大学でありながら、地域貢献どころか地域の街づくりへの配慮もなく、地域にかける迷惑も考えていない。この状況でよりよい大学になるとは到底思えない」と述べ、議案に反対しました。
(大阪民主新報、2021年10月3日号より)