おおさかナウ

2022年02月19日

問題だらけ「カジノ区域整備計画」
市民団体が記者会見

土壌汚染対策で公費負担
採算見通しデータ示さず

 吉村洋文知事と松井一郎大阪市長は、カジノを核とする統合型リゾート(IR)を大阪湾の埋め立て地、夢洲(ゆめしま)に誘致するための区域整備計画を、2月から3月にかけて開かれる府議会、大阪市議会で議決し、4月末にも国に申請しようとしています。一方、夢洲の土壌対策で大阪市が790億円を負担するという大問題が浮上。大阪市議会が開会した10日、「カジノに反対する9団体懇談会」が記者会見し、公費投入や誘致計画、夢洲の問題点を明らかにしました。

カジノやめてコロナ対策を

 記者会見では、カジノ問題を考える大阪ネットワーク代表で阪南大学の桜田照雄教授、大阪を知り・考える市民の会代表で浪速産業社長の中野雅司氏、あかん!カジノ女性アピールの藤永延代氏がカジノ誘致や夢洲の問題点について詳述。カジノに反対する大阪連絡会の中山直和事務局次長が司会・進行しました。

土壌汚染対策費はさらに巨額に

記者会見する(右から)中山、桜田、中野、藤永の各氏=10日、大阪市役所内

 桜田氏は、大阪市がIR用地の土地所有者の責任として土壌汚染対策を負担することを認めたことに触れ、790億円のうち汚染対策費用は360億円だが、「それではとても済まず、巨額に上らざるを得ない」と切り出しました。
 埋め立て土砂の環境規制基準ができたのは2006年で、1980年代半ばに埋め立てが始まった夢洲には、規制されない土砂などが深さ数十㍍の規模で埋め立てられていると指摘。にもかかわらず、19年に夢洲の用途地域を工業地・準工業地から商業地に変更するなど、手続き上も重大な問題があると述べました。
 桜田氏は、IRの投資額や「経済効果」の正当性を検証するために、試算の元データを明らかにするよう求めても、府や大阪市は一貫して拒否し続けていると指摘。「投資や計画そのもの前提条件が満たされないまま、計画が進められてようとしている」と述べました。

ビジネスでは信じられない行為

 経営者の立場から発言した中野氏は、夢洲の土壌改良の費用が際限なく発生する危険性があり、それを全て大阪市が負担するという契約が、本当に有効なのかどうか疑念があると強調。IR内の展示場は当初の10万平方㍍から2万平方㍍に縮小されており、「これで本当に統合型リゾートと呼べるのか。看板に偽りありだ」と述べました。
 今後は、コロナの影響から既存の在阪企業が立ち直っていくための時期で、大阪経済を活性化させていくために、府や大阪市にも景気刺激策が求められると指摘。多くの予算を夢洲開発に使ってしまえば、行政としての役割を果たせるのかと問い掛けました。
 中野氏は「事業採算の見通しのデータが十分に開示されていない。収益が見込めるのか、大阪市がそれを本当に検証しているのかどうかも分からない。そんなわけの分からないことに青天井にお金を出すのか。ビジネスをやっている者からすれば、信じられない行為だ」と批判しました。

造成中の夢洲は軟弱・汚染土壌

 藤永氏は、夢洲は今も土地造成が行われているところで、登記上は「海」だと指摘。カジノ・IR用地に既に埋められている産業廃棄物には何が入っているかわからず、土壌汚染対策や沈下対策で阪市に求められる負担は、これからますます増えていくと警告しました。
 万博の開催予定地で、終了後はカジノ・IR用地にする「夢洲1区」には、ダイオキシンやPCBなど有害な化学物質を含む焼却灰が約1400㌧も埋め立てられている「立ち入り禁止」の区域だと指摘。廃棄物処理法の規則で水質や排ガス(メタンガス)の基準がクリアされておらず、埋め立て終了できない場所を強引に使おうとしていると語りました。
 藤永氏は、夢洲は軟弱土壌、汚染土壌であり、未竣工土壌だと力説。「こんなところで巨大開発は無理。これでは大阪経済は発展しない。今なら引き返せる。開発工事自体がばくちのようなものだ」と訴えました。

誘致撤回求め署名7万1千筆

カジノ誘致計画の中止・撤回を求める要請署名を提出する人たち=10日、大阪市北区内

 カジノに反対する大阪連絡会など9団体は10日、カジノ(賭博場)誘致計画の中止・撤回と、コロナ対策と防災・減殺対策の強化を吉村洋文知事と松井一郎大阪市長に求める要請署名7万1018筆(第1次分)を、府市共同設置のIR推進局に提出しました。
 大阪市役所東側での提出行動では、団体や地域などの代表からは「オミクロン株の感染拡大で、医療現場では市民の命と健康を守りたくても守れない状況。そんな時に私たちの税金を使ってカジノ誘致を進めることが、知事や市長のやるべきことなのか」などの訴えが続きました。
 署名提出行動に先立ち、大阪市対策連絡会議(市対連)が大阪市役所南側で、市議会開会日行動に取り組みました。大阪市をよくする会、府民要求連絡会、新婦人府本部、大阪労連大阪市地区協議会、歯科保険医協会などの代表がリレートークで、「カジノよりコロナ対策を」などと訴え。日本共産党大阪市議団の山中智子団長が連帯あいさつしました。

(大阪民主新報、2022年2月20日号より)

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