カジノ計画きっぱり中止を
日本共産党 大阪と国会結び奮闘
カジノを核とする統合型リゾート(IR)を大阪湾の埋め立て地、夢洲(ゆめしま)に誘致するための「区域整備計画」を認めるかどうかが、開会中の府議会、大阪市議会の一大焦点になっています。吉村洋文知事(大阪維新の会代表)と松井一郎大阪市長(日本維新の会代表)は議決されれば、4月28日の期限までに計画を国に申請する構え。議会が山場を迎える中、日本共産党は大阪と国会を結んで、「カジノ計画やめよ」の論戦を行っています。
カジノ計画は「絵にかいた餅」
認定・審査手続きは中止を
参院予算委 大門みきし議員が追及
14日の参院予算委員会で日本共産党の大門みきし議員は、コロナ禍に加えてロシアのウクライナ侵略で世界と日本の経済悪化が予想されている、国も自治体も国民の暮らしと経済を守るために、財政もマンパワーを集中すべき時だと強調。民間賭博場であるカジノの建設などやっている場合ではないと批判し、認定・審査の手続きを中止するよう迫りました。
コロナ後の世界踏まえない計画
大門氏は、カジノ実施法が成立したのはコロナ禍の前の2018年7月で、当時の経済見通しは崩壊し、日本に参入予定の海外カジノ企業も相次いで撤退していると指摘。大阪、和歌山、長崎の3府県の「区域整備計画」の申請・審査の流れを止めて、計画全体を見直すべきと要求しました。
岸田文雄首相が「我が国が観光立国になるためにIRは必要」と答えたのに対し、大門氏は「その答弁がすべて崩れている」と反論。3府県の「区域整備計画」はコロナ後の世界を踏まえておらず、「非現実的で『絵にかいた餅』のような計画だ」と強調しました。
「ガラス細工」のような資金計画
初期投資は大阪で1兆8千億円などとなっているが、大門氏がヒアリングを行った大阪と和歌山では資金調達の根拠を示せず、各議会でも「根拠が不明」と疑問が出ているとし、「審査の際に、根拠となる証拠資料を確認するのか」とただしました。
斉藤鉄夫国交相は「重要な評価項目とされている」と答弁。大門氏は「資金調達の時点で、3地域の計画はすべてアウトではないか。地方議会で説明できない状況で、きちんと審査したらガラス細工のような資金計画だとすぐ分かる」と述べました。
大阪の計画では、夢洲での来場者を毎年2千万人、うち国内から1400万人としているが、根拠は不明で過大で、あまりに非現実的だと強調。大阪と和歌山は互いの需要予測も考慮しておらず、2カ所とも認定すれば「共食い状態」になると指摘しました。
自民党市議団の声も聞くべきだ
「荒唐無稽な計画に、大阪では自民党の皆さんも声を上げ始めた」と述べた大門氏は、自民党大阪市議団が出したビラの内容を紹介しました。ビラでは、IR誘致に対する予算はじめ関連議案すべてに賛成してきたが、「IRには公金が投入される」「IR誘致の条件が大きく変わった」「経済波及効果等があやしい」と3つの問題点が浮上しているとしています。大門氏は「このまま見切り発車をしていいのか。自民党総裁として大阪市議団の思いや意見を聞くべき」と迫りました。
岸田氏は「IR整備法に基づき必要な手続きを進める」と答弁。大門氏は「住民の思いもある。この計画をそのまま進めるわけにはいかない」と主張しました。
事業者言いなりの計画
国への申請やめるべき
大阪市議会都市経済委 山中智子議員が質問
カジノの標的は大阪周辺の市民
14日の大阪市議会都市経済委員会で日本共産党の山中智子議員は、「区域整備計画」ではカジノ来場者の7割を日本人と想定しており、「カジノの標的は日本人であり、大阪周辺の一般市民だ」と指摘。大阪のIRに年間2千万人が訪れ、そのうちインバウンド(訪日外国人観光客)を600万人と見込んでいるが、まったく保証はないとしました。
高橋徹副市長は「IRはポストコロナにインバウンドを拡大させ、観光立国を実現するために必要不可欠」と答弁。山中氏は、新型コロナによる未曽有の影響やロシアのウクライナ侵略による国際情勢の変化を無視していると批判。「結局、大阪の一般市民の懐からお金を巻き上げることに他ならない。大阪の経済は悪くなりこそすれ、良くなることはない」と断じました。
依存症を増やし損失は桁外れに
山中氏は、カジノ推進者の推計でも、カジノの設置でギャンブル依存症が1~2%増えると指摘。年間1千万人以上の日本人がカジノに来るという見込みなら、毎年10~20万人のギャンブル依存症患者が生まれ、社会的損失は桁外れに大きいと強調しました。
IR推進局は「誘致を契機に既存のギャンブルなどを含めた依存症対策に正面から取り組む」と答弁。山中氏は、同局が高校3年生に配布したリーフレットで、ギャンブルを「娯楽」と説明するなど、依存症の深刻さを隠してきたと批判。「いくら対策をしても、のめり込み、依存症に陥る人はなくせない。住民の安全・安心、福祉の向上に責任を負う地方自治体が、市民を不幸にするようなことをしてはならない」と述べました。
大阪市の財政が食われてしまう
山中氏は、IR用地の土壌対策で大阪市が約790億円を負担する問題を追及。事業者が対策工事を行い、その費用だけを市が負担するもので、「事業者の言いなりに払うことになり、市民の疑惑や不信を招く」と指摘しました。
IR推進局は「限度額(約790億円)内での執行となるよう適切に取り組む」と答弁。山中氏は執行額は補正予算で変えることができるとし、「大阪市の財政が食われてしまう不安がある」と警告しました。
山中氏は、府市が事業者と2月に結んだ「基本協定書」に言及。国が「区域整備計画」を認定してから30日の「判断基準日」までに、コロナ禍からの観光需要の回復が見込めない場合、事業者は基本協定を解除できると定めているが、回復の可能性が少しでもあるのかとただしました。
IR推進局は、「判断基準日」の期日は府市と事業者の合意で延長でき、観光需要も中・長期的には回復するなどと答弁。山中氏は「延長できると言うなら際限がない。願望で行政をしていいのか。こんな状態で『区域整備計画』への同意を求めること自体、ばくちのようなもの」と批判し、計画を申請しないよう求めました。
若者の人生狂わすな
府議会で石川・内海議員が質疑
日本共産党の石川たえ・内海公仁両府議はそれぞれが所属する府議会委員会で、カジノ誘致の中止を求めました。
石川氏は11日の健康福祉常任委員会で、カジノ誘致によりギャンブル依存症や社会的損失が生じるかの推計がまったくされていないと指摘しました。「治安対策と併せてギャンブル依存症の対策強化は欠かせない。ギャンブル依存症が犯行動機とされる刑法犯検挙数は、昨年だけで284件だ。この上にカジノが35年間営業すれば、本当に依存症対策はできるのか」と、府の姿勢をただしました。
内海氏は14日の教育常任委員会で、「計画中のカジノは、今の小中学生を絶好の客として呼び込もうと狙われている。子どもたちに、ギャンブル依存症が人生も家庭も破滅させる『病気』だということを正しく教育することが必要だ」と主張。「カジノで人生を狂わせてしまう若者をつくりださない最大の保障は、カジノをつくらないことだ」と述べました。
(大阪民主新報、2022年3月20日号より)