シリーズ:崩壊「都」構想~ダブル選2年(1)
これでも基礎自治体?
庁舎バラバラ・サービスずたずた
橋下氏らの考え具現化したが…
ことし8月、大阪市を解体し特別区に再編するための制度設計案が公表されました。「大阪都」構想を目指す橋下徹大阪市長や松井一郎知事の「考えを具現化」したもので、現在の24区を5または7区の特別区に再編します。
案をまとめた大都市局(府職員・市職員計100人で構成)は、特別区は公選の区長と区議会の下で、「住民に身近な行政の実現」「総合的なサービスの提供」などのメリットが生まれ、「特別区の特徴を踏まえた自治の充実」が図れると説明します。
不思議なことに、特別区には新たな区庁舎・議会棟を建設せず、現在の24区の区役所など市有施設を〝活用〟するといいます。現在の北区と中央区を分離した上で7区に再編する区割り案では、北区を含む特別区は中之島にある現在の本庁舎が使えるものの、他の区では計約12万3千平方㍍分の執務スペースが不足するため、民間ビルの賃借で対応する方針。区議会も民間ビルが前提です。
不足スペースは民間ビル賃借で
同じ区割り案では、例えば城東・鶴見・旭・東成の4区を1つの特別区に再編。現在の区役所と保有庁舎の計6カ所を使用しても、小学校2校分の面積に相当する約2万1千平方㍍が不足。民間ビルを借りれば、庁舎機能が10カ所以上に分散する可能性もあります。
住民サービスを実施していく上で、要になるのが自治体の庁舎。地方自治法第4条は、「地方公共団体の事務所(=庁舎)」について「住民の利用に最も便利であるように、交通の事情、他の官公署との関係等について適当な考慮を払わなければならない」(第2項)と明記。住民の利便を第一に考えるからこそ、位置の変更は議会の出席議員の3分2の賛成が必要(第3項)と、高いハードルを設けています。
分散した庁舎にどう機能を振り分けるのか。住民はたらい回しにならないのか。実際に民間ビルは確保できるのか。大都市局は大阪府・大阪市特別区設置協議会(法定協)で「制度設計の熟度が高まった段階で作業していく」と説明するだけで、庁舎問題は白紙状態という無責任さです。
切実な声届かぬ特別区への分割
制度設計案では、国民健康保険(国保)や介護保険などの事業主体は各特別区でなく、一部事務組合が実施。その事務所は現在の本庁舎に置くとしています。仮に、特別区で簡単な手続きなどができたとしても、高い国保料・介護保険料の引き下げや減免制度の充実など住民の切実な声は行政にますます届かなくなってしまいます。
「特別区になれば住民サービスが良くなると言われてきたが、それは絵空事だ」「民間ビルの借り上げで自前の庁舎もない半人前の自治体だ」――9月の法定協で批判したのは日本共産党の山中智子大阪市議。新庁舎を建設しないのは特別区設置の初期コストを低くするためだと指摘し、「特別区への分割がいかに非現実的あるかが改めてはっきりした」と明快に語りました。
橋下・維新の会は2011年11月の知事・大阪市長の「ダブル選」で「だまされないでください!!」「大阪市はバラバラにしません」と大宣伝しました。それが市民をだます大うそだったことは、いまや明らか。9月の堺市長選で「堺はひとつ」を掲げた竹山修身市長が勝利し、「都構想ノー」の審判が一つ下りました。それでも来秋には特別区移行の是非を問う住民投票へと持ち込み、2015年4月の「大阪都」実現に固執しています。
ダブル選で橋下徹氏が大阪市長に当選してから2年。大きく揺らぎ始め、矛盾が噴き出している「大阪都」構想を中心に、橋下・維新の会が府民・市民になにをもたらしてきたのかを、シリーズで追います。
(2013年11月3日付「大阪民主新報」より)